ヴァンパイア・アネクトード | ナノ

【カオス台詞吐かせたー】
ハイになった聖職者が司書に「お前が私を追い詰めたのだ。今更他の道を選び直す気は無い」と、両の頬をその手で包む。



深夜の閉架書庫、隅に追いやられて壁に押し付けられた時には心臓が破裂するのではないか、と錯覚するほどに早鐘を打っていました。真っ赤なお顔に玉の汗を滲ませ、于禁さんが荒くなった息遣いをどうにか抑え込もうと、時折息を深く吐き出す。


「あやつの、差し金、と言った……ところか……っ」
「う、于禁さん……?」
「栄養剤など……っ迂闊であった」


今から数時間前、私は于禁さんに栄養剤を勧めました、最近もまた疲れているようだったので、自分の血と一緒に。申し訳なさそうに受け取ってくださった于禁さんが突然この閉架書庫にやって来たのが数分前。いつもと様子が違った于禁さんに驚く間もなく、ものすごい力で拘束され、事の重大さをようやく理解したのです。

渡した栄養剤は、以前お会いした于禁さんの「古い友人」の方とたまたま再開した時に頂いたもの、これできっと憂いが少しは晴れる、そう言われて渡されたもの。それが催淫剤あるいは媚薬の類だったなんて……。


「憂いが晴れる、など、戯言を……このように、なまえを、傷付けるだけの、結果しか、残、らぬ……」
「あの人、きっと于禁さんが元気になるだろうと言っていたので、あの、私……」
「いい、気負うことは……ない、おまえに、罪は、ないの、だ」


あの人は于禁さんをとても心配している様子だったので、すっかり気を許してしまったあの時の自分に喝を入れてやりたい、やはりよく知らない人から物をもらってはいけない、身に染みました。それに誰からもらったのか先にきちんと伝えればよかったのですね。


「あれは、謀ることを、得意と、する、ようだ……仕方あるま、い」


憎々しげに吐き出し、苦しげに呻く。わ、私は一体どうしたらいいのでしょう!


「すまぬ、しばし、耐えよ」
「う、于禁さ……!」


骨が軋むほど抱き締められ、荒っぽく首筋に歯を突き立てられる。その荒々しさとは裏腹に、緩く啜られた血に身体の力が程よく抜けた、縋るように于禁さんの服を掴むと、彼は首筋から顔を上げ、私の頬を両手で包み込みました。


「お前が、私を……追い、詰めたのだ……こうなる……以前から……今更、他の道を、選び直す気は、無い」


自制の効かなくなってしまった于禁さんの目は爛々としていて、口元に付いた赤が妙に色っぽく、ふと眩暈のような錯覚を覚えたのです。追い詰めるなんて、した覚えがありません!たぶん……たぶん!

20140315
20160218修正
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