ヴァンパイア・アネクトード | ナノ

■私のものにしたい、でも、出来ない。

いつのまにか習慣となってしまったこの行為に罪悪感が後から後から溢れんばかりに押し寄せる、首筋に埋めた顔を上げ、自分の腕の中で気を失って間もないなまえを覗き込むように見つめる。いくらか血を吸い過ぎてしまったようだ、僅かに青白くなってしまった血色に、焦る。目を覚ましたらすぐに何か口にさせねば、あらかじめ用意しておいた紅茶と栄養価の高いビスケットを一瞥する。

聖職者ともあろうものが、手籠めにしてしまいたいなどと考えるのは罪以外の何物でもない、手放さねばならぬ、しかしそれも出来ぬ。


■一目見たときから私の世界は君だけだった

ミッション系の大学といえど、校舎は至って普通の大学と大差ない。だが学内にあるチャペルに一本足を踏み入れればそこはまるで欧州のような別世界、そんなふうに例えたのがなまえだった。(ステンドグラスにはだいぶつぎ込んだと学長が零していた)授業のためチャペルを空けており、戻ってきた時にチャペルの隅で静かに目を閉じている女性を見た、生徒だろうか。敬虔な者だと感心した矢先に彼女が垂れていた頭を上げ目を開けた、私の存在に気が付き「こんにちは」会釈しつつ心地よいソプラノが耳に届く。

視線が絡んだ瞬間、無意識のうちにこくりと喉仏が上下するのを感じた、悪い部分が顔を覗かせせっつくのだ、いい香りがする。一見してごく普通の出会いのようだが、私にしてみたらこれは運命であり必然でもあったわけだ。


■私が壊れそう

たった二日、なまえと離れ、顔を合わせられぬことがこのように辛くなるとは思わなんだ、ここ最近鬱屈とした週末を送り続けている。触れていたい、見つめていたい、贅沢ばかりの思考回路に嫌気が差す。休日も一目だけで良いのだ、仕事がないにも関わらずチャペルに意味もなく駐留する、淡い期待を寄せ続けた。「あ、于禁さんこんにちは、休日なのにお仕事ですか?大変ですね」ついに幻覚まで。

「于禁さん?」
「あ、ああ、いい日和だな、今日は」
「そうですね、恵みの雨というくらいですから」
(……しまった)
「チャペルのお庭の薔薇はきっと喜んでいるでしょうね!」

幻覚などではなかった、なまえが休日にチャペルへと訪れてきたことに歓喜、それと同時に己の失言に心中恥じ入る。幸せが過ぎていつか罰が下るのではなかろうか。不安がよぎる。


ちょこっと短め、頂いたメーカーお題。ジェルブレ好きなんです胚芽ビスケット美味しいつらい。
20140218
20160218修正(アップした日と修正日が被る奇跡)
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