諸行無常、百鬼夜行 | ナノ

平成狸ぽんぽこ、なんて懐かしいタイトルだと思わない?え?知らないの?それはそれは失礼しました。
ただ言ってみたかっただけなんだけど、あれに出てくる狸ってみんなしゃべるし人間くさいところがあるよね、私はハンバーガーをがっつくシーンが好き、みんな美味しそうに食べるんだもん。
なんかハンバーガー食べたくなってきちゃったなあ。


「私は胸が焼けるから苦手だなあ」
「ああ、そうですか恐らくそれは年のせいかと思います」
「言うね、食べるならやっぱり大福かどら焼きがいいかな」
「いらない情報をどうも、言うだけはタダですので好きなだけどうぞ」
「随分と辛辣、というか素っ気ないね」
「そうですか?」
「そうだよ、何百年ぶりに山を下りてみたら人間の住むところは随分と様変わりしてるし、私達が見える人間まさかこのご時世にいるなんてねえ」
「まるで昔はみんな誰でも見えた、みたいな口ぶりですね」
「見えたんだよ、昔はね」


懐かしいなあ、と呟くのは隠神刑部の元就さん、狸の妖怪でいわゆる化け狸、狐とはやはり仲があまりよろしくないのかと聞けばそうでもないよと返された。ふうん。聞いてみたものの深い意味はない。


「このこたつはいいね、囲炉裏もよかったけどこれは一度味わうともう二度と忘れられないよ」
「みかんありますけどどうです?」
「いただこう」


ぽややんとした雰囲気を纏った元就さんにみかんを手渡すと、こつんと指同士が当たる。すみませ、と途中まで言いかけたところでみかんごと手を握られる。


「なんです?」
「たぶん……たぶんだけど」


みかん潰れる。手元を一瞥してから元就さんと視線を絡ませると、意図を読ませない不思議な目の色が何やらとてもものを言いたげだった。ただ事ではないような、そんな雰囲気を醸し出している。


「他の妖怪にも言われたかもわからないけれど、私は君を自分の山に連れて帰りたいな」
「……は?」
「この現代に私たちのような種族とこうしてまったりできる人間は恐らくもういないだろうし、歴史書を書くのにも参考になると思うんだ」


たっぷり10秒、間をあけて疑問符を浮かべた。連れて帰りたい?山へ?私を?そんなこと誰にも言われたことありませんが。


「えっ、じゃあ私が最初かな?むしろ好都合じゃないか」
「いや、ちょ、」


両手をぎゅう、と握られ中のみかんが悲鳴を上げている。元就さんといえばそれはそれは嬉しそうににっこり笑って、どうだろうかと答えを待っている。これって聞きようによってはプロポーズに近いのでは……。


「この場合、現代ではお嫁においでって言ったらいいのかな?」
「がっつりプロポーズですか」
「ぷろぽーず?現代ではそう言うのかい?」
「や、あの、ほら私人間ですし種族が違うと結婚とかって……その、まずいんじゃ……」
「うん?平気だよ、眷属になるだけで私たちの種族もだいぶ数が減ってとやかく言う煩いのもいないから」
「そ、そういう問題です?」
「うん」
「うん!?」


軽い、軽すぎる。
ひとまず丁重にお断りをしたら、もっと親密になればいいんだね?と見当違いな反応を頂きました。困っています、手の中のみかんは完全に潰れてしまいました。


隠居暮らしのたぬたぬにプロポーズされた件について

20160126
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