諸行無常、百鬼夜行 | ナノ

神社の境内を適当に掃除してた時のこと、神社警備員の最中は巫女さんスタイルの袴姿がデフォルト、動きにくい、ひたすら動きにくい。滅多に人が訪れないっていうのに掃除なんか……と、ぶちぶち文句を零し、誰もいないのをいいことに、持っていた竹箒に跨り、巫女の宅急便なんてぴょんこぴょんこ遊んでたんだ。

多分バチが当たった、とその時は一瞬思ったけれど、すぐに違うと認識した。


「いったー……」


竹箒に跨り数回飛び跳ねたところで何かに躓いたのである、躓いたというか、ジャンプした瞬間その足元に何かが突然姿を現した。そして驚いてそこに着地をし損ねて顔からいった、砂利が口に入ったしとても痛い。
この竹箒でフルスイングショットかますぞ、とキレたいくらい痛かった。顔を押さえながらよろよろ立ち上がって、竹箒を杖代わりに少し寄り掛かる。とんだ災難だ、ふと足元に違和感を感じて下を見ればなんかいる。
え、なに?なんかいる!
足元にまとわりつくそれ、ちょ、ちょちょちょ!しゃがみ込んですりすりしてる、すっごいすりすりしてる……私の脛!


「あのー……」
「居心地が、いい」
「はあ」
「私は関興」
「はあ、どうも関興さん、聞くまでもないとは思いますけど、あなた妖怪ですよね」
「そう、すねこすり」


うわあ……存在意義のよくわかんないのきちゃった、しかも名前が行動そのまんま、脛フェチ妖怪なの?
ぽわんとした表情に、茶色の毛、今は何故か青年の姿だ。耳元には獣耳、例えるならスコティッシュフォールドの耳によく似てる。ネコ科の妖怪なのだろうか。


「私は……畜生の類いに分類するなら猫ではなく犬、あなたの足元はひどく心地がいい」
「いや、あの、ちょ……ばっ!袴の中に潜ろうとするのやめて!白昼堂々そういうのやめて!」
「名前を、教えてくれるだろうか」
「なまえ!なまえですなまえ!」
「そうか、なまえ……」


すねこすりの関興は袴に潜ろうとするのをやめ、私を見上げている。正直脛に張り付くのもやめてくれないかな。っていうかさっきナチュラルに私の心の声を読んだ?もうほんとそういうの心臓に悪いからやめて欲しい。


「ひとつ頼みがある」
「……頼み?」
「袴に入りたい」


私は迷わず竹箒を大きく振りかぶって勢いのままにフルスイングをぶちかました。
避けられた。

すねこすりのアイデンティティ

20140828
20151124修正

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