諸行無常、百鬼夜行 | ナノ

うつらうつらと社務所のこたつでで至福の居眠り、本日はお日柄もよく最高に和やかな刻を過ごせそうです。あっちへこてり、こっちへこてり、ふらつく頭は最終的に真後ろに。

「っとと……」

倒れる途中で目が覚め慌てて起き上がろうとしたけれど、両脇から伸びてきた腕が起き上がらせまいと絡みついて引っぱられる。結局起き上がること叶わず後ろへと倒れ込んで、背中に温もりがあたる。

「ほわーい!?」

なんだろうデジャヴ、前にもうつらうつらしていた時に心臓に悪いことが起きたっけ(サトリのあの妖怪のことだ)今度はなんだ、もう驚くことなどないだろうと思っていたのにこのざまである。目は覚めた。

「お疲れかい?」
「す、すみませ……」

首だけ振り向いて見上げれば白にも近い銀色のような髪色、癖毛らしくところどころくるくると跳ねている。思わず謝ってしまったけれど、私が謝る必要は果たしてあったのだろうか。

「ああ、いいよ気にしないでそのまま」
「あ、あの、あの!」
「うん?」

うん?ではない。相変わらず状況が読めず、ふんわり笑った後ろの彼は隠神刑部の毛利元就。グレーがかった目は虹彩が光を反射するたびに筋が虹色にも見える、不思議な色だ。年齢は全然読めないけれど、雰囲気的には随分と長い間時間を過ごしているふうに見受けられた。

笑顔を崩さずじっと見つめられるとなんとなく居心地が悪くなる、なにもかも見透かされているような感じ。視線をずらせば昨日空にしたはずのごみ箱になにかが捨ててある。

「あ!」
「うん?」

いや、だからうん?じゃなくて!化け狸のボスクラス的存在の彼は気がつくとそこにいて、気がつくと私のおやつをむしゃむしゃしているのでおやつのストックをどこに隠そうかと頭を悩ませる今日この頃。

あれはこの前近所のおばあちゃんにもらった塩豆大福の包み紙だ、ちょっとお高いやつである。戸棚に入れるだけではダメだと思ってわざわざ逆さにしてしまってあるティーカップの中に隠しておいたのに。

なんで見つかったんだ塩豆大福。

「そういえば、たまには西洋文化に触れてみるのもいいかと思って紅茶とやらを飲もうと思ったんだ、そしたらカップの中に塩豆大福を見つけてね、いやあ運がよかったよ」
「……幸運過ぎますよね」
「今度共に買いに行こう、小判は木の葉でどうにでもなるよ」
「それ普通に詐欺になるのでやめてください」

バレたら捕まります、そもそもこの時代に小判は使えません。

20180212
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