諸行無常、百鬼夜行 | ナノ

暇だなあ……。
今日も今日とて相変わらずひと気のない神社警備、社務所でぼんやり外を見る。いつもと変わらない全く同じ風景。常緑高木や常緑針葉樹がほとんどのこの神社では風情が皆無、紅葉何それおいしいの?状態だ。

まあ若干葉っぱの密集具合がちょっと少ないかなーとは思うけれど、大した差はない。


「あーあ、社務所にもテレビ欲しいなあ」


話は変わるが、この三國神社、立派な社務所のわりに現代っ子の私には随分と優しくない仕様である。テレビがないのだ、とと様が「あるとテレビばっか見るから」って置かせてくれないのだ、けち。
一応寝泊まりができるように簡易ベッドやシャワールーム、冷蔵庫やガス水道も完備してコタツもありながら、テレビはないのだ。ラジオはある、正直ラジオはいらない。

ちなみに寝泊まりできると言っても、自宅はすぐそこなので滅多にここで寝泊まりはしないんだけどね。


「テレビ見たいんだけどなー」


ちぇっちぇっちぇー、とわざとらしい舌打ちをしながら必然的に使用頻度の多くなるスマフォを充電器に差した。やることがなくなるとついついスマフォをいじってしまう現代っ子の悪い癖。

さて、こうも暇だと本気で暇に殺される。こういう日に限って陳宮さんはいない、どこ行ったんだろう。全く用事の足らない猫又め、と毒づいても状況は好転しない。
ちょこっと小腹が空いたような気がするから、何かつまもうかな。確か冷蔵庫にミルクプリンがあったはずだ。

普通のカスタードのプリンよりもミルクプリンは低カロリーだから安心して食べられる!要は食べ過ぎなければいいってことよー!

そう、ふと思い出して急激にミルクプリンが恋しくなってきた、頭はミルクプリンでいっぱい、単純な私はいそいそと冷蔵庫に向かい勢いのままオープンザドア!


「ミルクプリーン!」
「……邪魔をするぞ」
「ギャアア!」


ミルクプリンを取り出して、冷蔵庫を閉めたらブワァッ!と于禁さんが現れた。閉めた途端に姿を現してくださるもんですから危うくミルクプリンを放り投げるところだった。間一髪ギリセーフ。


「騒がしい」
「于禁さんが急に出てくるから!……で、どうかしました?」


ブワッサァと漆黒の羽根を羽ばたかせたかと思えば、それは一瞬にして背中に収納された。わお便利。


「……」
「え、無視?」


どうしたのかと尋ねたのに于禁さんは黙っている、無視したわけじゃないと思うけどついつい口からついて出た。


「と、」
「と?」


于禁さんがもごりと何か言った。とって何?


「と、とりっく、おあ、とりーと……」
「……」
「……」


えっ……。
なんだろう聞き間違い?今于禁さんトリックオアトリートって言ったよね、うん、言った。ハロウィンのあれだよね、そういえば今日ってハロウィンだった。


「えっと、とりあえず、はいどうぞ」
「……」


動揺しつつも、今の手持ちがミルクプリンしかない私はフタを開けてミルクプリンをスプーンにひとすくい。
それを于禁さんに差し出した、はいあーんの状態である。于禁さんは黙ってそれを口にしてくれたんだけど、いかんせんぎこちない。
自分で言っておいて若干不服そうなのはどういうことなの。

っていうか妖怪にもハロウィンって関係あるんですか。


「……うまい」
「はあ、それはようござんした」


もう一口いかがですかって聞いたら何故か照れてた、わけがわからないよ!

7thハロウィンフリリクのサルベージ
20141105
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