暗から明へ | ナノ


「いってきまーす」

同じことを繰り返す毎日、とくに面白いことも物珍しいこともない。エンドレスループ、朝起きて学校へ行って部活して帰る、その繰り返し。(大きな行事があったりしてもわたしには大したことない)

そう感じるようになったのも全て張遼さんと出会って、突然のお別れを体験してからの話、それまでは当然普通の単なる女子高生で毎日それなりに充実していたと思う。

普通が一番で平凡が最高に幸せだと。

それが突然非凡なことが起きて自分の人生どうなっちゃうの!?なんてことになったからには普通の生活が物足りなくなるのは仕方がない。

「おはよ」
「おはよーなまえ、最近暗くない?体調悪いの?」
「え、全然普通だけど」
「絶対暗いよ、覇気がないもん」
「気のせいだよ、気のせい」

友人にも暗いだの目が死んでるだの散々言われて、正直うんざりしてる。毎日が心底楽しいとは思えない、どうしようもないことが何度も頭の中でぐるぐるぐるぐる回ってひどい有様。

どうにかして気持ちを切り替えたくても、あの時もっと張遼さんとしゃべればよかった、突撃回数増やせばよかった、好きをたくさん伝えておけばよかった、そんな後悔が後から後から噴き出してくる。

寂しい。

そればかりだ。

それ、ばっかり。

「……わたしも、張遼さんとこ行きたいよ、ちくしょう」

ずっと何度も頭の中でぐるぐる回っていた言葉、今日も何をしてたのか、ぼやけた一日を過ごして気が付けば家路についてた。

通り慣れた通学路、さっきまで雨が降っていたらしい、全然気が付かなかった、あちこちに水溜りができていて、歪んだ自分の顔が見える。

じっと見つめて情けない表情に呆れた、これ以上どうしたらいいの、どうしようもないんだから嫌になる。

情けない表情を見たくなくて水溜りをわざと踏む、揺れた水面が波立って映していたものを掻き消した。

「まるで小学生だ」

ふと、懐かしい声。

まさかそれはありえない、ここで張遼さんの声がするなんて、わたしの耳がいよいよやばくなったんだろうか。幻聴までするように?

「無反応とは如何なものかと」

幻覚まで見えてるし。

「しばらくぶりだ、本当に」


幻聴に幻覚に、幻……感触?
肩に手が置かれて頬っぺたに無骨な指先が触れている、視線を上げたら見慣れた顔、ずっと見たくてずっと焦がれてた人。あんな変な髭の形、張遼さんしか居ない。

わっ、と涙腺が崩壊した。

20120112
20131215修正

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