暗から明へ | ナノ


「おーいなまえ、ぼさっとしてないで早く行けー」
「はーい」

ストップウォッチとクリップボード片手に計測係りをしてる部活仲間もある友人に注意された。ああ今度はわたしの番か、走ってタイムを聞けば、以前より自己ベストのタイムが格段に上がってて自分でも驚いた。

多分張遼さんのところで目一杯しごかれたお陰じゃないかと思ってる、あっちこっち走り回ってたし。(後は司馬懿さんとの鬼ごっこも功を奏してる)

スタミナも付いたんじゃないかな。

「あっれーまた自己ベスト更新?なまえ最近絶好調じゃん、元気はなさそうなくせに」
「それって嫌味?」
「半々、なんかあったの?」
「うーん……まあ」
「あーわかった、恋でしょ当ったりー!」
「ええー勝手に決めないでよ」
「じゃあ何、違うの?」
「違うっていうか……その、遠くはないっていうか」
「何でもいいけど素直に恋患いって言いなよ」

はっきり物申す友人、うじうじ悩むタイプのわたしと相性はいい方、ズバッとぶった切るようなアドバイスは無遠慮だけど的確。思いきって言ってみる?さすがに時代を超越したんだよ!とは言えないかから少しぼかして。

「そういうことにしとく」
「それで相手は?」
「多分、年上」
「どんな人?」
「髭がね特徴的で見た目も中身も怖くてちょっと冷たいんだけど、礼儀正しくて強くて、でもいい人」
「普通に考えて"多分"はいらない、それ絶対におっさんでしょ」
「そう?」
「うん、そう思う、いくつなのか聞かなかったの?」
「聞かなかった、ちょっと一緒に居ただけだから」
「出会いはいつ?、どこで?」
「結構最近、えーと」

場所は昔の中国で魏っていうんだけどそんなの絶対に言えない、うん、知り合いのところで日雇いバイトしてたってことにしよう!

知り合いの知り合いの知り合いの上司が働いてる企業の提携先の、臨時の現場監督に来てた人!

「随分めんどうな繋がりだね」
「う、うんまあね!」
「きっかけは?」
「(えええきっかけ!?)なんていうか、全然笑わないし見た目も怖いし、わたしの仕事の報告は全部その人にするようにって言われててすっごい苦手だったんだけど」
「おお、ヤマ場」
「茶化すのやめ」
「ごめんごめん、それで?」
「仕事してて、臨時監督(張遼)さんの部下みたいな人(馬だけど)にちょっと嫌がらせされて(噛み付かれたりね!)それを助けてもらって」
「うーわ!まるで映画」
「ほんと映画みたいだったよ……」

ジャンルはコメディだがな!むしろバラエティだよ。ただ、きっかけを厳密に言えば馬に噛まれてるところを助けてもらって手当てをしてもらったのが正解、いやあ、あれも痛かった。

「それから進展は?」
「少しは仲良くなれたんだけど、急遽遠くに行かなきゃならなくなって(わたしが)連絡も取れなくて」
「あーわかるわー転勤ね、海外でしょ」
「そう、だね(わたしがね!)」

友人に話しをしていたら恋しくて仕方がない、あーあ寂しいんですけど、ものっすごーく逢いたいんですけど!逢えないと無性に逢いたい、絶対無理だとわかってるから余計に厳しい、こんなに辛くなるなら最初から何もない方がよかったかもしれない。

でも忘れることは絶対できない。

「そんなに元気なくなるくらい想えてるんならきっとどこかでまた逢えたりするんじゃない?」
「えーありえないでしょ」

いやいや張遼さんもう死んでるし、歴史上の人物だから。

「人生何が起きるかわからないから、ほら、草むしりしてたら暑気にやられて池に落ちた人もいるくらいだし」
「もうそのネタ引っ張るのやめようか」

いやでもほんとに「想い」って大事よー? 立ち直れなくても立ち直っても気持ちは大切にした方がいいと思うんだ。そう言われて改めて思い直す、張遼さんのことが本当に好き。

この世に居ない人が、本当に。

20121217
20131215修正

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