暗から明へ | ナノ


散々な目に遭った。

急に態度が豹変した張遼さんに連れられたかと思えば、部屋で手当をしてもらったんだけど。そりゃあもう、うろたえる以外に出来ることなんかあるわけがない、果てしなくつんけんしてた張遼さんが。

ツンデレのデレが皆無のあの張遼さんが。

手の平を反したかのような勢いとはまさにこのことだと思うのはわたしだけですか、優しいと言えないこともないような……そうでないような。まあ優しい優しくないはひとまず置いといて、手当ての話。

決して丁寧とは言えないやり方だけど、せっせと手当てをしてくれる様は、何て言うか……うんやっぱり優しかったんじゃないかなあ。

でも、薬が目に垂れてしみるって言ってんのに、すごく楽しそうにしてるのは頂けないと思います。

(張遼さんどこ行ったのかな)

あれから、別にいらないって言ってんのに頑なとして譲らない張遼さんは、とりあえずわたしの頭に包帯をひと巻き。

大した傷じゃあないのに。

何度も大丈夫だからいいです、ほんとに平気ですって言ってみたけどあまりに張遼さんの顔が必死だったように見受けられたから、しばらくしてわたしは口を閉じた。しみるしみない、わざとだのわざとじゃないだの、そんな言い合いはいくらか続いたけど。

それからしばし待たれよとか言い残し、張遼さんは一人部屋を出て行った。やってもらっておきながらこんなこと言うのもアレなんだけど、張遼さんて結構不器用。

包帯の巻き方も、性格的にも。

あ、これあくまで今までの個人的見解。

どうしてあんなに捩くれて捻くれた性格になっちゃったのか真意のほどは知らないし、別段知ろうとも思わないけど。

ただ損じゃないのかなあって思う、前にも考えたことがあるけれどわたしだったら独りじゃ寂しいだとか、どうせなら楽しく仕事をしたいとか。

張遼さんにとっては武が全てでそれが自分のアイデンティティ、存在意義っていうのかな。自分が一番強いのだ!って世に示したいということは、自分の存在をしらしめたいわけでここに居る、そう言いたいのと同じなのかなって。

そう捉えてもあながち間違いじゃないんだよね?結局男とはそういう生き物だって上手くまとめられたけど、わたしの捉え方だと男の人はみんなそうなっちゃうなあ……。

みんながみんな自己主張したいわけじゃないだろうし。そうやって一人悶々と考えてもわたしは張遼さんじゃないから、本人の胸中はわからない。

いろいろ考えてみたけど、要は一体彼が何をしたいのかっていうこと、あれだけ邪険にしてくださっていたのに、まさか今になってわたしの熱意が通じましたなんてことがあったりするのか!

いやいやまさかね。

「いてて」

自嘲気味に笑いながらぷるぷると首を振ると傷口と包帯が擦れて少しだけ痛かった。


20100819
20131212修正

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