閉鎖空間、猫屋敷 | ナノ


おじちゃんの所に遊びに言ってるのを近所の誰かがお母さんにばらしたらしい。
誰だかわからないその人に、毎日のようにお風呂の中でくそぉと念を送っていた。わたし、 別になんにも悪いことなんかしてないのに、おじちゃんだっていい人なのに。どうして遊びに行っちゃダメなんだろう。ただ猫ちゃんを見に行ってるだけ。たまにお世話もさせてもらうし、おじちゃんにご飯作ってもらうこともあるけど、本当にそれだけなんだよ?あんなに怒られる理由がある??
お母さんは「危ないから」しか言わない。
何が危ないの?本当に意味がわかんない!やっぱりおじちゃんのことを悪くいうお母さんはちょっとだけきらい。







おじちゃんの所に行けなくなって20日と5日がたった。あれからお母さんは、毎日私にひっつきもっつきだ。でも宿題は毎日見てくれるしご飯のお手伝いもさせてくれる。いつもは危ない危ないってやらせてくれなかったのに、どういうしんきょうの変化だろー。
今日も晩ご飯のお手伝いで、じゃがいもと人参の皮を剥いてる。カレーかな、それともシチューかな。どっちも好きだから、どっちでもいいんだけど。
一生懸命ピーラーで皮を剥いてると、玉ねぎを切っていたお母さんの手が止まった。

「花子、あのね」
「なーに」
「突然で悪いんだけど」
「ん??」
「引っ越しをね…しなきゃいけないの」
「え?」

私も手を止めて、お母さんを見る。

「引っ越し?」
「うん、お父さんが職場の近くに住みたいって」
「えー………遠く?」
「うん、遠いかな。花子も友達と離れるのは嫌かもしれないけど、もうお父さん決めちゃったから…」
「えーー………」

そんな、急だよ。
わたしずーっとこの家に住むんだって思ってたのに。えー。やだなぁ。でもお父さんのお仕事のことだから、私がここでわがままいってもどうにもならないだろうし…。

「大丈夫、花子なら上手くやれるから。3年生が終わったら、春休みの間に引っ越すからね」

私が浮かない顔するから、お母さんが頭を撫でてくれる。

でも私が浮かない顔するのは、友達と離れてしまう…っていうこともあるけど、それだけじゃなくてーーー………。











昨日お母さんと喧嘩した。
引っ越しするならおじちゃんに報告しに行きたい、っていったら「何度言えばわかるの?!」って腕をぎゅうって握られて、何処にも行っちゃダメって怒られた。腕は痛いし怒鳴られるしわけわからなくて、涙が出た。

なんでなの?おじちゃんだってわたしの友達だもん。

その日、私はお母さんの目を盗んで、久々にあの家へ向かった。