ファンタジー1 | ナノ
ファンタジーパラレル、人外、ヒロ円


円堂は独りだった。身内が重い病を患い金が必要になり、若い身ながら賞金稼ぎとして一人母国を離れたは良いが、それでも寂しさは募った。円堂の獲物は魔物の類である。母国でいう妖怪のようなものを想像していた円堂も、実際に魔物と対峙することでヒトとモンスターは相容れぬ存在であるということをまざまざと思い知らされた。
それでいて円堂は、まだ魔物の心を理解しようとすることを諦めてはいなかった。
「……風丸に会いたいなあ」
円堂は宿屋に借りた一室の部屋の隅、ベッドの上でぽつりと呟いた。風丸というのは円堂の母国である日本で、初めて友人となった人外の者だった。最寄りの、ちいさな神社に祀られた、それはそれは綺麗な神。風丸の青く流れるような髪を思い出す。ヒトでなくともいずれ必ず分かり合える日が来るはずだと、円堂は信じていた。
日本は八百万の神と言われるほどに多くの神がいた。金霊や座敷童子なんかの縁起の良い、所謂善とされる妖怪もいた。しかし、円堂が今いるこの国の魔物は全てが悪とされていた。噂には近隣の国で妖精と呼ばれる可愛らしい精霊も存在するらしいが、円堂は未だそれを目にしたことはない。

人を襲うドラゴンがいる、円堂がその情報を耳にしたのは三日前のことだった。
洞窟に住まうその竜は、決して外界に触れることはない。しかし、一歩でもその洞窟へと足を踏み入れればその竜はたちまち人を喰らってしまうのだという。
これはこの間知り合った情報屋のフィディオという少年から仕入れた噂だ。彼もまた、年若き身ながら立派に情報屋を務めているのだという、ここら一帯で有名な少年だった。
『マモルには特別に教えてあげる、できれば行かないでほしいけど、キミは今お金が必要みたいだから』
フィディオは眉を下げ心配げに円堂を見送った。円堂はフィディオを気遣わせてしまった後ろめたさを隠すように、絶対に大丈夫だと笑い彼に背を向けた。絶対に大丈夫、根拠はなかったけれど、そんな予感がした。
円堂はあの時のフィディオの表情を思い出しながら、背を丸め目を閉じた。明日、件の洞窟へ行ってみよう。ドラゴンはヒトより知能が高いから、もしかしたら、もしかしたら……。



続きます。