おちるはなし1 | ナノ
ライオコット島、イナズマジャパンのメンバーが寝泊まりする宿である宿福。雷門中に新たに建設された合宿所とは違い、そこは二人部屋であった。現在は、良いコンディションがそこそこ保てる程度には気の合うもの同士が同室となる部屋割となっている。
ヒロトは、今回の部屋割が決定した瞬間まるで心臓が爆発するかのような錯覚に陥った。


ヒロトはもとより円堂に恋をしていた。北海道で初めて会ったあの時から、円堂を追いかけ、見つめれば見つめるほど、彼の真っ直ぐな瞳を愛しいと思うようになっていた。
当初はそれを恋であるとは小指の甘皮ほども思っていなかったヒロトであるが、全てが終わり静かに暮らせる日々を過ごしている最中、なにか物足りなさを感じるようになった。
それは、視線だった。
円堂守の力強く真っ直ぐで純粋な瞳。あの瞳で、もう一度オレを射抜いてほしい。そんな欲求に駆られている、ということに気付いた。
その欲求は日に日に増して行き、胸を、頭を掻きむしりたくなるほど、むずむずと、ぞわぞわとした感覚を体中に広げさせていった。


月日は経ち、ある時突然雷門中に召集されたヒロトは、約3ヶ月ぶりに円堂と再開することとなった。
嬉しそうに自分を見つめる円堂の瞳。途端に体中をぞくぞくとしたなにかが駆け巡ったのを確かに感じた。早く脈打つ鼓動。「久しぶり、」と円堂に声をかけつつ、ヒロトは自分の初恋を自覚したのであった。




部屋割が決定したその晩。部屋へと荷物を移動し終え一旦落ち着いたヒロトは、先に片づけが終わっていたため手伝うと言ってヒロトの私物を広げている円堂の横顔をちらりと盗み見た。
丸い輪郭に大きなくりくりとした目は、年不相応で幼さを感じさせる。円堂の顔は別段整っているわけではなく、かといって崩れているわけでもない。男の子らしく活発にころころと変わる表情が愛らしい。
気が付けばまじまじと円堂の顔を注視してしまい、円堂とばしりと目が合った。
ぞくり。
背筋を走り抜けたのは紛れも無い快感。自分の股間に熱が集まりかけていることに驚愕したヒロトは、思わず円堂から視線を逸らした。
「どうかしたのか?」
「なんでもないよ、それより早く荷物片付けちゃおう」
声をかけられ少し肩が揺れたヒロトは、すぐに冷静さを取り戻し、円堂と共に私有スペースを片付け出した。

一通りの作業が終わった二人は、すぐに就寝することにした。時計を見ればもう11時だ。ただでさえ長時間の移動で疲労していた体を荷物の片付けのためさらに動かしたため、二人はくたくただった。
おやすみ、と声を掛け合い自分の布団に潜り込んだヒロトであったが、興奮で寝付くことができない。部屋が暗いためはっきりと様子は伺えないが、隣のベッドからは円堂の寝息が聞こえはじめていた。疲れがたまっているためか、少しいびきが混じっている。
そんな些細なことにも、ヒロトはさらに胸が高鳴った。
(円堂くんと同室、円堂くんの寝息、円堂とふたりきり、円堂くん、円堂くん…)
そんなことをぐるぐると考えつつ、時計を見れば、もう深夜1時を回っていた。
明日も朝から練習がある。早く寝なければ。そうは思っても、寝ようとすればするほど感覚が研ぎ澄まされ、円堂の寝息がより鮮明に耳に入ってくる。
ただ円堂と同室になった、その事実ひとつでヒロトの思考はごちゃまぜになる。結局その日寝付けたのは明け方で、目覚めてからは自己嫌悪に浸ってしまった。そしてそのまま、口を開けたまま寝ている円堂を優しく起こしたのだった。



ゲームやって勝手に二人部屋だと思い込んでます。実際どうなんでしょう。


2011/1/18修正