月が落ちる3 | ナノ

「すごいね円堂くん、きみ、こっちの才能あるよ!」
また勃ち上がり始めた俺の股間を見たアフロディが、嬉しそうな声を上げた。こんな愉快な神がいてたまるか。

アフロディは片手で俺の体を反転させうつ伏せにすると、腰だけを引き寄せ、大きく上げられた。こんな恥ずかしい恰好をさせられているのに抵抗すらできず、俺はベッドに上半身をべったりとつけた。
今更だが、いつの間にか噛まれた場所の血は止まっているようだ。大分血を抜かれて頭はくらくらするが、お察しの通り今はそれどころではない。多分、恐らく、人外である男相手に尻の穴を丸出しにしているのだ。
俺は枕を掴むと力の抜けた手で引き寄せ、それをぎゅうと抱きしめた。抵抗できないならせめて何かに縋りたい。こんな思いぐらいは許されてもいいだろう。

「うあぁう!っぐうう…、ひっ」
アフロディは先程俺が出した精液を俺の尻の穴に塗りたくると、一気に指を二本も突っ込んできた。俺は背筋をのけぞらせ、枕に縋るようにした。見た目の割に指は男らしいし、しかも二本なものだからあまりに異物感が大きい。しかし痛みはなく、指を動かされる度に尻穴がひくひくと動いてしまう。男同士ってここでするのか。生まれてこの方十四年、俺は新しい知識を得た。
「期待以上だなあ……。今日は味見だけって思ってたのに、最後までしたくなってしまったよ」
「ひい、うう…あ、あつい……」
「ちゃんとよくしてあげるからちょっとだけ我慢してね」
軽く振りかえると、アフロディの少し汗の滲んだ、興奮しきった表情が見て取れた。もじもじと内腿を擦り合せ、次の刺激を待つ。アフロディは一呼吸つくと、入っていた二本の指を軽く抜き、そしてまた入れた。
入口の方から、指の届く範囲全てが蕩けるように気持ちいい。俺は抵抗なんて忘れてひっきりなしに喘いだ。もともと未だ声変わりを迎えていなかったから、上擦った自分のその声がまるで女のようで不思議な気分になった。犯されているのは本当に俺なのか、もう何が何だかわからない。
「あひっ!あっあ、らめ、そこやだ、あ!」
ぐっと腹の方に折り曲げられた指がピンポイントに一番気持ちいいところに当たって全身が戦慄く。よだれが口端からだらだらと零れ、シーツを濡らした。
アフロディがもう一度強く同じ場所を刺激する。俺は背を反らしながら絶叫し、また射精してしまう。三度目の射精に息も絶え絶えなのだが、俺の下半身はまたすぐに硬さを取り戻し元気になってしまった。

「な、なんで俺……あっ、熱い、」
「だから、みんなこうなるのさ。血を吸われると気持ち良くて、セックスしたくてたまらなくなる。それにしても君はちょっと元気すぎるけどね……」

まあいいや、もう入れるね。アフロディは切羽詰まったように早口で呟くと、ごそごそと俺の後ろでズボンの前を寛げ始めた。
今のうちにと呼吸を整え、受け入れる態勢になる。そりゃ俺だって女みたいな男に犯されるのは情けないし怖いから逃げたい、けれども、どうにもおさまりそうにない熱がそれを許さない。
ぴたり、と尻に熱くて大きなものが押し当てられた。まだ心の準備ができていない。少し待ってもらおうと思い振り返った瞬間、俺は目を見開いて言葉を無くした。

「えっ……」
ビッグサイズ、だとか、そういった表現を通り越している。本当にこいつは人間じゃないんだ、バケモノだ。相変わらずの表情で腰を押し付けようとしてくるアフロディを押しのけようと腕を伸ばす。
「無理、むりだって、絶対無理」
「大丈夫さ、君なら」
伸ばした腕をやんわりと払われる。目測、30センチ。入るわけない、俺初めてなのに。
しかしアフロディは俺の悲痛な叫びを聞き入れるはずもない。俺の後頭部を掴んで顔を無理矢理前に向かせると、空いたほうの手で下がりつつあった腰を再び高く上げさせる。どくどくと心臓が脈打つ。無理だ、俺、死んじゃう。観念して目を閉じた瞬間、アフロディはその巨根を勢いよく俺の中へと突っ込んだ。