「俺は君が羨ましいよ。だって昔の円堂くんを知っているんだろう。俺は小さい頃の円堂くんだなんて知らないからね、彼の口からそんな話すら聞いたことないよ。君はいいよね、円堂くんと親しくて。嫉妬しちゃうなあ、だって俺は彼と親しくないもの。彼が俺に遠慮してるってわかっているからね。きっと俺と彼は本当の友達にはなれないんだよ。ああ、君が羨ましいなあ。君は彼のことを裏切ったくせにね。ああ、うらめしい」 息をつく暇もなくつらつらと言い述べたヒロトの言葉に俺は眉を寄せた。俺を羨ましいと言ったヒロトは、ただただにこやかに笑った。口角を上げて、目を細めて、にこにこと。何がそんなに楽しいのかが理解できなかった俺は、ヒロトから目を逸らした。 「気持ちが悪い」 あれからそれなりの日が経った。イナズマジャパンは見事イギリス代表ナイツオブクイーンを倒し、一歩、また一歩と決勝への道を確実に歩みつつある。 新しいマネージャーである久遠冬香の提案で、イナズマジャパンは休息の時間を一日だけ、与えられることとなった。 「円堂、一緒に島の散策でもしようぜ」 「お、いいな!」 円堂に真っ先に声をかけた俺は、他の誰にも円堂を取られたくなくて、そそくさと宿福を後にしようとした。なんて幼い独占欲。しかし俺はそれを隠すことも、恥じらうこともしなかった。誰が何と言おうが円堂は俺のものだ。誰にも渡さない。同性だからどうこう、という問題ではない。俺はただ古い付き合いのこの純真な馬鹿を一生守ってやりたいだけなのだ。 玄関扉を開け外に出ようとした瞬間、円堂が「あ」と何かを思い出したように声を上げた。振り返ると目につく赤い髪が通りすぎようとして、それを見つけた円堂が、 「ヒロト!よかったら俺たちと一緒に行かないか?」 円堂が。 円堂がそういう人間だとは知っていた。燦々と輝く太陽のもとに出た俺は無性に腹立たしくなった。円堂を挟んだ状態で、三人並んで歩く。赤い髪が目の端にちらついて苛々する。 「な、二人とも、アイス食べないか?」 俺たちがどことなく重苦しい雰囲気を醸し出していることに気付かない円堂は、笑顔だった。ヒロトは円堂の笑顔越しに俺を見つめた。暗い瞳だった。俺の太陽をこんな汚れた薄暗い闇に奪われるわけにはいかない。いや、晒すことすら許されないはずだ。俺はヒロトを睨み返すと、円堂の腕を掴んだ。 「ああ、食べよう。今日は俺が奢ってやるから」 お前いつも、がんばってるもんな。微笑みかければ円堂は一瞬不思議そうな顔をしたが、すぐに顔を綻ばせた。俺だけに対する笑顔。なんだか気持ちが良くなってヒロトを見たら、あいつは笑っていた。目を輝かせてアイスを選んでいる円堂を、楽しげに、幸せそうに。 一瞬の優越感が瞬時に打ちのめされる。俺だけ醜い争いをしているようで、頭を掻き乱したくなった。 アイスを落とし手が汚れた、と言って円堂は近場のトイレへと駆け込んだ。ヒロトと俺の、ふたりきり。ヒロトは円堂が入ったトイレの入り口を微笑みながら遠く遠く眺めていた。 「俺はお前が羨ましいよ」 ヒロトは目を丸くしてこちらを向いた。俺は無表情だった。ヒロトのように笑えやしない。 「俺はお前みたいに無条件に優しくしてもらえないからな。お前が羨ましいよ。俺だって円堂に優しくしてもらいたい。気遣ってもらいたい。足りないんだ。今のままじゃ全然足りない。お前に向く優しさの全部を俺に注いでほしい。俺に友達がいなければもっと円堂は俺に優しくしてくれるのか?お前が、お前が妬ましい」 いつしかヒロトが俺に向けた羨ましいという言葉、それは俺もヒロトに対して持つ感情だった。興奮してまくしたてたため、息が上がる。汗ばんだ額に前髪が張り付いて不快だった。 ふと、目を丸くしていたヒロトがにこりと笑う。さっきからずっと、ヒロトは俺を見ていない。 「風丸くん、君も充分に気持ち悪いね」 ゆっくりと振り返ると、俺のすぐ後ろにオレンジ色のバンダナが見えた。今日は、やけに暑い。 後味悪い話ですね!風丸さんの嫉妬話を円堂さんが聞いてたよENDです。円堂さんが誰かと結ばれるか、結ばれないかはご想像にお任せいたします(笑) なんか風→円←ヒロってすごくギャグの印象あるんですけど、私にギャグセンスないので…なんだかヒロトと風丸は醜い女の争い的なイメージがあります。素敵な野郎共ですね、私は大好きです! というわけで、リクエストありがとうございました!風円ヒロ、私がこの世で一番好きなカップリングです!それでは失礼しますー |