月が落ちる2 | ナノ


「いってぇ!」
俺はアフロディの頭を掴むと無理矢理に体を引き剥がした。あ、ちょっと、と少し怒ったような声が聞こえたが、俺は首元の痛みでそれどころではなかった。首元を抑えるとそこからはどくどくと血が溢れ出ている。神様じゃなくて吸血鬼?全然意味がわからない。
あまりに理解しがたい現状に、俺はいつの間にか立ち上がっていたアフロディを見上げた。
「僕に抵抗するだなんて。もう知らないからね」
「へ、…あ、うっ……?」
気のせいかアフロディの瞳が先程よりも発色の良い赤味を帯びている気がする。それに気付いた瞬間、何故だかその瞳から目を離せなくなった。瞳を見つめているとだんだん体中の力がぬけてへろへろになる。血のついた手がぱたりと床へ落ちた。

アフロディは力の抜け切った俺の体を顔つきに似合わず逞しい腕で軽々と持ち上げる。そのまま横抱きでベッドへと移動すると、ゆっくりとシーツの上へと俺の体を下ろした。抵抗しようにも力が出ない。首から流れる血が白いシーツを汚した。
「おま、え、なに、……」
上手く舌が回らず言いたいことが言えないもどかしさに顔を歪める。アフロディは相変わらず微笑んでいるが、先程とは違い目が笑っていなかった。初対面の人間(?)にわけのわからないことをされて、俺はどうすればいいのかがわからない。
「円堂くんは僕に身を任せてくれるだけでいいんだよ」
にこにことしたアフロディが俺に馬乗りになる。金の髪が俺の頬に触れてくすぐったい。
ああ、勿体ない。アフロディは一人ごちながら、また俺の首筋へと顔を埋めた。

「や……あ、……」
首筋でぶちりと音が聞こえた。さっきよりも深々と傷口を抉られ、首元を熱さが襲う。上手く動かない腕を無理矢理に持ちあげ、アフロディの指通りの良い髪を掴む。指は髪を滑って背へと落ち、俺はそのままアフロディの服を掴んだ。
首元の熱がじわりと体全体に広がり、口元から熱い息が漏れる。アフロディが首元を吸い上げ、じゅるじゅると血を啜る音が聞こえるたびに背筋にびりびりとした電流が走った。
気持ちいい、身体が熱くて仕方がない。こんなわけのわからない状態で快楽を感じとっている自分に混乱した。アフロディの唇が肩口に触れ、温かい吐息が首筋を掠めるたびに頭の中がばちばちと弾ける。
「んっ…く、あっ、も…やめ、ろ、いっ…」
「はぁ、んん…美味しいよ、円堂くん」
想像以上だ、と恍惚とした表情で呟いたアフロディはべろりと首筋を舐め上げた。瞬間、ぎくりと俺の身体全体が強張り、下半身に痺れが走った。じわりと下着に濡れた感触が走る。そんなばかな、ありえない。ショックで涙腺が緩くなり視界がぼんやりと歪んだ。

黙って荒く息をついたままぼんやりと宙を眺める俺を見たアフロディは「まさか」という顔をして、急いで下着ごとズボンを下ろした。
「わあ、凄いね円堂くん!血を吸われてイっちゃった人なんて初めてだよ!」
ぐしょぐしょになった下着を見せつけるようにしながら上機嫌で俺に報告する姿を見て泣きたくなった。
イってしまったのにまだ体が火照って仕方がない。助けを求めるようにアフロディを見上げるも、嬉しそうな笑顔で俺の股を眺めているだけだ。あまりに恥ずかしくて力の入らない状態ながら足を閉じようとした。しかしアフロディが俺の膝をガッと掴み左右に開いた。

「は、離せよぉ!」
「大丈夫だよ円堂くん、血を吸われたら皆こうなっちゃうから!それよりもっと気持ちよくなりたいと思わない?」
「へ……うああ!?」

勢いよく俺のちんこを掴まれて腰が跳ねる。そのまま上下に擦られると腰からじわじわと快感が走った。いつも自分でするのよりも、何倍も気持ちがいい。一度イったせいでただでさえ敏感になっているのにずるりと皮を剥かれて、空気に触れると痛いぐらいになる。
ふふ、円堂くんは可愛いなぁ、なんて言われても俺は男だから嬉しくない。アフロディはそのままぱくりと俺のそれを咥えこみずるずると音を立てて吸い上げた。
「ひ、ぎゃっ、らめっ!いぎっ…〜〜あ!」
あまりの痛みと快楽に、脳が弾ける。股の間でアフロディの驚いたような声がした。だんだんと意識がはっきりする。…また、イっちゃった…?
呼吸を荒げてアフロディを見ると、アフロディは口から精液を手に出しながら髪を耳にかけていて、俺を気遣う様子すら見られない。すでにもう2回もイったのにまだ腰というか、腹の奥がむずむずして仕方なかった。