愛だよ10-4 | ナノ
小スカ



視線が定まらず、口端からぼたぼたと涎が零れる。ぐわんぐわんと頭や腹の中で重く鐘が鳴り響いているようだ。ずるりと尿道に差し込まれた触手が抜け、その感覚にまた軽い絶頂に至る。出し切れなかった精液がそれに合わせて垂れ流された。触手は俺が精液を出す度それに群がっている。
「はー…はー…ぁ……あ、うっ…」
尿道が開放されたためかはわからないが、膀胱が疼き尿意が襲ってきた。下半身に力を込め必死に尿意に耐えようとすると後ろを締め付けてしまい、ぐちょぐちょと音を立てて動く触手の存在をまざまざと感じてしまう。
触手がぐっと深く抉るように奥まで入り込み、その快感に絶叫する。反動で膀胱が縮み、太腿に温かい感触が伝った。
「うあ…ぁ…、…やだ、やだよぉ……」
必死に尿道を締めようとしても、一度堰が決壊してしまったものはもう抑えることができない。ちょろちょろと脚を伝い床に落ちる尿に羞恥心が全身を駆け回る。しかし反面、尿道を通る感覚や解放感にゾクゾクとしたものが背筋を通る。きもちいい、止めたくない。
空気に触れた尿が独特のアンモニア臭を放ち、それが何故だかいやらしい性を俺に感じさせた。

「は、あう……ぐっ!?」
ずるりと後ろから触手が抜けたと思ったら、宙に浮かされていた身体が勢いよく床に叩きつけられた。丁度先程俺が出したものの上に落ちてしまい、びちゃりという水音を立てながら僅かに黄色味を含んだ、透明な液体が飛び散る。背を強く叩きつけられた衝撃に蹲りながらうう、と呻く。顔や髪が濡れるのを気にすることすらできなかった。
しかし痛みに喘ぎながらもまるで後ろにぽっかりと穴が開いてしまったようで、物足りなさを感じていた。身体の中を激しい疼きが苛む。痛みに閉じられていた瞳をこじ開け薄眼を開くと、切なさにたまらずうぞうぞと動く太く長い触手を見つめた。
「はやく、はやくぅ…」
入れてほしい。太くて、大きいものを、奥まで入れてかきまわしてほしい。

少しの間動きを止めていた触手が再び俺の身体を撫でるように這い始めた。蹲っていた俺の身体を仰向けにし脚を大きく開かされると、腕を頭上に上げるようにした状態で手首を絡め取られた。束縛され自由が利かなくなる。たったそれだけのことで興奮してしまう自分に、情けなさと一種の快感を覚えた。
「…ぎっ、ああ゙!?うあぁああぁっ!」
不意に先程よりも数回りは大きい触手がずにゅりと後ろに入り込んだ。待ち望んでいた挿入。ごりごりと前立腺を擦られる感覚と拡張されるようなその太さに、腰を大きく浮かせて身悶える。
「はぁ、あふっ、う、きもち、いいっ!あ、きもちいよぉ!」
全身から汗が噴き出して、身体についた尿と混ざりわけがわからなくなる。脳が潰れるような快感に目を見開く。顔は涙と汗と唾液に鼻水、そして今し方まみれた自分の尿でぐちゃぐちゃになっていた。自分が今何を言っているのかすらわからないまま、ただただ快楽に身を委ねた。

「がはっ、ごほっ!…ぁ……も、でない、よぉ……」
腹がぱんぱんに膨れるような苦しさに舌を突き出し咳きこんだ。上手く息ができずに苦しいのに、俺はまた達してしまう。もう、軽く十は数えるほどにイっているはずだ。精液も随分薄まり、もうほとんど量もない。気持ち良すぎて苦しいだなんて、風丸に快楽を教え込まれてからも初めてのことだった。まるで拷問のようだ。
涙声で悲痛な叫びを上げても人外のそれには言葉が通じるはずもない。触手は構わず突き上げるように動き、前立腺を抉る。その瞬間、全身の筋肉が引き攣り大きく背筋が反った。
「あ゙……ぁあ……あ、」
頭の芯が焼き切れるような快感。射精していないのに確かに絶頂を感じた。しかも、今まで感じたことのないような、大きな絶頂。強く引き絞られた触手が動きを止めた。

硬直した筋肉が弛緩し、体重を床に預ける。早鐘のように心臓が鳴っている。射精を伴う絶頂とは全く違う、頭のてっぺんからつま先までに広がるような快感だった。わけがわからない、何も考えられない。自分に起きた異変を、誰でもいいから説明してほしかった。
じわじわと全身を包む甘い悦楽の余韻に浸る。ひくひくと全身が戦慄き、意識は薄く白んだまま戻ってこない。身体中の筋肉が弛緩しているのに、後ろに入ったままの太い触手をきゅうきゅうと締め付けてしまう。
「あ……ひ、ぃ…?」
どぷり。
腸内に温かいものが迸り、腹が一層苦しくなった。突然の感覚に一瞬驚くが、それが何なのかを理解した瞬間に呼吸が浅くなった。
(おれ、俺…、ばけものに中出しされちゃったんだ…)

ぐぢぐぢと音を立てて再開された律動に、絶望が塗りつぶされる。もう、俺の意識は快楽に染まるばかりだった。