「……はぁー」 我ながら大きなため息だ。ごろりとベッドに寝転び天井を見上げた。消耗した蛍光灯は薄暗く室内を照らす。 俺の恋は全て終わった。瞑目してぐるぐると思惟する。初恋だった。円堂くんは俺の人生で唯一愛した人間だった。父さんに対するものとは違う、恋慕。 俺はずっと胸に秘めていた。彼らのすれ違いも、俺の届かない想いも。 まずは緑川が俺の部屋に訪ねてくるようになった。緑川の恋心に気付かないままに俺は円堂くんへの想いを緑川にぶちまけた。気付かぬままだったとはいえ、無神経だっただろう。日に日に機嫌の悪くなる緑川に、ついに気付いてしまった。 いつ緑川が円堂くんを好きになったのかなんてわからない。円堂くんが人を惹きつける力があることは理解していたけれど、まさか緑川までもが。 驚愕に心を奪われる暇もなく、またしても俺は悟ってしまった。自分の勘の良さをこれほどまでに呪ったことはなかった。 「緑川のこと頼んだぞ」 苦悩する緑川を見かねた円堂くんが俺に緑川のことを頼んだ時のその表情は。思い返したくもないようなものだった。切なさと嫉妬の入り混じった円堂くんの顔を見た俺は恐怖した。なんで緑川なんだ。俺の方がずっと想っていたのに。 ある日を境に、今度は円堂くんが俺の部屋に入り浸るようになった。他愛もない話をして過ごすだけだったが、円堂くんは俺が天体望遠鏡をのぞいている時、決まってこちらを見つめていた。期待などしなかった。何せ彼は緑川が好きなのだから。 円堂くんも緑川もとんだ見当違いで俺に嫉妬をぶつけている。悲しくて仕方がなかった。こんなことで円堂くんに憎まれたくはなかった。でも素直に真実を教えてあげるのは悔しいから、しない。 せっかく緑川の背を押してあげようとしたのだけれど、もうここには来ないとだけ残して出て行ってしまった。あいつもさぞ俺が憎いことだろう。 諦めよう。俺はベッドから降りると天体望遠鏡に手を伸ばした。そっと望遠鏡を撫で、レンズをのぞきこむ。この広い宇宙、円堂くんだけなんてことはない。きっとこれから素晴らしい出会いが待っているはずだ。 「俺のことだけは信じて」だなんて、大それたことを言ってしまったけれど。きっと二人はもう俺の部屋へは来ない。二人が真に向かい合える日が来るのなら、それでいい。 辛いけれど、悲しいけれど、もう後戻りはできなかった。俺も醜く嫉妬したけれど、それでも俺は、円堂くんが幸せならそれでいい。円堂くんの幸せが俺の幸せなんだ。 「……馬鹿みたいだなぁ、俺」 知っている。俺は全てを知っている。 (恋を飲み込んだ) 緑→←円←ヒロドロドロということでしたが、このような形になりました。つまらないものですがどうぞお受け取りくださいませ…! 小説というかただの独白で申し訳ないです…!時系列的には緑川→円堂→ヒロト独白です。 落ちてない感があるのも申し訳ないです!言い訳的な後書きは苦手なのでこれにて失礼します、リクエストありがとうございました! |