謬錯で幸福2 | ナノ


ん、と鼻にかかる声を出しながらキスをする。舌を絡めながら円堂を抱きしめ、片手を後頭部にかけるとするりとバンダナを外した。
ぬるぬると円堂の舌を舐め上げては吸う。
いままでにディープキスは数え切れないほどした。身体を交えることができない代わりに互いの器官を絡ませる。物足りなさは拭いきれなくとも、俺はそれだけでも十分なほどに幸福感に浸ることができた。
半刻ほど前に円堂が飲んでいたオレンジジュースの味が口内に広がる。
「ん……ん、はぁ」
どちらからともなく唇を離す。唾液で濡れた唇を親指で拭ってやり、円堂の前髪をかきあげると額にキスを落とした。
先程まで涙目だった円堂だが、今は嬉しそうな顔をして俺にぎゅうぎゅうと抱きついてくる。
「かわいい」
円堂の様子に俺まで嬉しくなって強く円堂を抱きしめた。子供のようにすり寄ってくる円堂が何よりも愛おしい。

しばらくそのままでいたが、俺ははっと気付いた。このままでは今までと何も変わらないじゃないか。円堂の肩に手を置き、瞳を見つめる。
「円堂、男同士でもセックスはちゃんとできるんだ。だから、しよう」
「う、ん…、出来るなら俺もしたい」
戸惑っている様子はあったが、決断はなんとも男らしい。
しかし円堂は何かを思い出したように目を瞬かせた。そして、あ、と間の抜けた声を出してから言った。
「やっぱり今日は母ちゃんいるから駄目」



出鼻をくじかれた気分ではあるが、致すのはまた日を変えて、ということになった。俺が先走るだけでは円堂にも温子さんにも迷惑がかかる。そもそも温子さんに俺と円堂の関係がバレるなんてことだけは防ぎたかった。

あの日から五日経った金曜日、俺と円堂は人気の少ない住宅街で手を繋ぎながら帰った。秋口の夕日がコンクリートで舗装された地面に数メートルの長い影をつくる。そのシルエットはしっかりと二人の人間の手と手が繋がっていて、気恥ずかしくなった。

丁度いいタイミングで「有休をとって旅行する」といった両親の言葉を聞いた俺は、円堂を家に泊めるとだけ言って親を見送った。これ以上のチャンスはない。ほどよく放任主義な両親は俺を心配しつつも留守番よろしく、とだけ言い残して昨日に家を出た。
俺は円堂を家に招き入れる。当然のことながら家には誰もおらず、電気の消えた薄暗い玄関が俺たちを出迎えた。
「おじゃましまーす……」
円堂が緊張した面持ちで靴を脱ぎ家に上がる。歩くたびにギシギシと鳴る廊下の床が一層緊張感を高ぶらせて、しっとりと手のひらが汗ばんでゆくのがわかった。
二階にある俺の私室に到着するまで俺も円堂も言葉を発することはなかった。円堂を招き入れると極力音を立てないように扉を閉めた。この家には俺と円堂のたった二人しかいないのに、もしも誰かいたらだとかもしも誰かに見つかったらという杞憂が脳内を駆け巡った。

「…じゃ、するか」
「よ、よろしくお願いします…?」
なんとも軽いノリではあるが、俺は極限まで緊張している。円堂も同様であろうことが表情でわかった。
中学生であるとはいえ男二人では狭いシングルベッドに乗り、円堂を優しく押し倒す。
「…どきどきする」
赤い顔で円堂が呟いた。まともに俺の顔が見れないらしく視線は俺から外れていたが、そんな様子に俺の鼓動はさらに高鳴った。数度啄ばむようにキスをして、円堂の服に手をかける。円堂は一瞬身を強張らせたがすぐに力を抜いて俺の服に手を伸ばした。
ワイシャツのボタンをひとつひとつ丁寧に外してゆくと円堂の腹筋が露わになる。あれだけ励んでいる特訓の成果はそれなりにあるらしいが、やはりまだどこか幼さの残る体型だ。筋肉の上に薄く脂肪がついたような、むちむちとした肉体にそそられる。
ベルトを抜き取って下着ごと学生ズボンを脱がす。円堂も同じようにしようとしてくれたが苦戦していたため、自分で下着とズボンを脱いだ。

「ひぇっ」
まだ勃起していない性器に触れると、円堂はびくりと身体を揺らした。視線を泳がせあわあわとしている様子に思わず吹き出す。笑うなよぉ、と情けない声を出す円堂に笑いが堪えられなかった。
しかしここで笑いこけてしまえばムードも何もない。ぐっと堪えて円堂の頬に唇を押し付けると、円堂の性器を掴んだ。上下に擦ると円堂の腹筋がぴくぴくと痙攣する。
「えんどう、俺のもやって」
正直円堂のを扱いているだけで勃起してしまいそうなのだが、がっついているようで情けないと思い円堂にも扱かせることにした。
円堂がおずおずと手を伸ばし俺の性器を掴む。それだけでもじわりと快感が広がった。


完全に勃ちきった性器から先走りが溢れて擦るたびにぐちゅぐちゅと音が鳴る。俺も円堂も完全に興奮しきって必死に互いのものを手のひらで擦った。
「はぁ、あっ、俺、おれっ、むかし風丸のを、あ、触ったことわす、忘れられないんだ、」
喘ぎを織り交ぜながら円堂があの時のことを掘り返した。円堂にとって忘れたい過去なのではないかと思っていたが、案外そうでもないらしい。
「んっ…、俺も、だ…」
俺はあの時の記憶を今に至るまで何度もオカズにしてきた。まさか円堂と付き合えるだなんて思ってもみなかった頃から、ずっと。だからこそ今こうして再び円堂と扱きあえることが幸せだった。そして、その先に行けることも。

「はぁ、は、あ……え、」
達しそうになる前に、円堂の性器を扱く手を止める。円堂は突如止まった刺激に物足りなさげな表情で俺の顔を見つめた。自然と円堂の手も止まる。俺は汚れていない方の手で円堂の頭をぽんぽんと撫で、予め枕元に用意してあったローションとゴムに手を伸ばした。

円堂の腿に手をかけ、脚を大きく開かせる。すると今までされるがままだった円堂が抵抗を見せた。
「ちょ、え、とりあえず何するのか説明してくれよ」
「何って、だから、セックスだろう」
いや、それはわかるけど、と円堂が慌てている。何の説明を求められているのかがわからず俺は首を傾げた。円堂も同様に首を傾げていて、一体これはどういう状況なのだろうかと混乱した。
「え、俺、そういうの見たのって昔風丸と見たビデオぐらいしかないんだけどさ、」
「うん」
「あれって男にないところに突っ込んでんだろ?だから男同士でどうやってセ、」
円堂の口を手のひらで塞ぐ。汚れていた方の手で塞いでしまい、もごもごと手の下で文句を言う声が聞こえたが無視をした。




イチャラブっていうかギャグエロ…続きます