謬錯で幸福 | ナノ
7000キリリクの風円イチャラブエロです。エロは次ですすみません。


「円堂、セックスしたい」
「かっ、母ちゃんいるから駄目!」
俺は円堂の言葉を無視して円堂に乗り上げた。円堂は顔を真っ赤にしながら俺の腹を蹴り上げようとしてくる。それをひらりとかわして円堂の肩を押さえつけた。円堂は床にがちりと頭を打ち、バンダナがクッションになったとはいえ痛みに顔をしかめている。
「………」
「…………」
二人して黙りこむ。外ではヒグラシがかなかなと鳴いている。遮光カーテンの隙間から夕日が差し込んで電気のついていない薄暗い部屋の一部をオレンジ色に照らしていた。

円堂が何を考えているのかはわからなかったが、俺はいまとても困っていた。いや、悩んでいた、というのが正しいか。
俺と円堂は付き合って3ヶ月になる。この時点で手を出すのは相当に手が早いだろう。だって俺と円堂は中学生だ。それでも我慢ができないのには理由があった。


そう、それは小学4年生の時だ。あの日、俺の家で円堂と二人で納戸を漁っていた。掘り出し物がないかと期待に胸を膨らませていた俺たちが手に取ったのは一本のビデオテープだった。ラベルも何も張っておらず、中身はわからない。他に目ぼしいものがなかったため俺たちはそれだけを自室に持ち帰った。
俺の家はそれなりに裕福であったため、自室にも小型のブラウン管テレビとビデオデッキが設置されていた。テレビの電源をつけ、デッキにビデオを挿入する。中身が再生されたとたん、笑顔だった俺と円堂の表情は固まった。

今となれば大方予想のつくのだが、それは所謂AVというやつだった。しかも、無修正。
膨らんだ男性器が女の見たこともないようなところに入っていく。隣からごくりと唾を飲み込む音が聞こえた。円堂に視線を向ければ、円堂は頬を紅潮させ腿をしきりに擦り合せている。俺自身も興奮していて顔が熱かった。
ふと円堂の股間が大きくなっていることに気がついた。
「えんどう、どうしたんだそれ」
「へ……うええ!?」
あの時の円堂の顔は今でも忘れない。あんなに驚いた顔をした円堂はあれ以来、今に至るまで見たことがないからだ。

あれが俺と円堂の最初の過ちだった。さわりっこ、なんてものをしてしまって。当時は勃起も射精も知らなかった。AV男優の性器を見ても、「大人のちんこってあんなにでかいんだ」と二人で顔を見合わせた程度で、まさか自分のものが大きくなるとは思っていなかったのだ。
俺たちは興味と興奮に身を任せて快楽に流された。



恥ずかしすぎてあの時のことを掘り返したことは一度たりともないが、あんなことをしたのに今俺は円堂に身体を求めることを拒まれている。もう既に一度は互いの勃起した性器を扱いた仲なんだ、いまさらいいじゃないか。なんて軽い奴だと思われそうで円堂には口が裂けても言えないが。
「なあ、なんでそんなに俺とセックスするの嫌なんだ」
「べつに嫌ってわけじゃ…」
「じゃあ、なんでだよ」
「だって……」
だって、と円堂が口籠る。泣きそうな顔だった。俺は円堂の肩から手を離すとそっとその身体を抱き起してやった。
泣くなよ、と抱きしめながらぽんぽんと頭を撫でると、泣いてないと喚くように反論される。肩に円堂の額を押し付けさせるように頭を抱え込んで背中をさすると、円堂は大人しくなる。
普段は馬鹿なようで実は落ち着いていて、いつでも周りから頼られる。そんな円堂が俺に弱みを見せて甘えてくる瞬間が、何よりも幸せだった。

「俺、俺さ、女じゃないから、」
円堂は俺から身体を離すと顔を俯けたまま語り出した。円堂の言葉に俺はうん、と相槌を打つ。珍しく正座なんかをした円堂は、不安げに制服ズボンの腿のあたりをぎゅっと握りしめた。
「あの、えっと、女の、そっ、そういうのとか、ないから、」
うん、とまた頷く。なんだか嫌な予感がしてきた。きっと円堂はよくある勘違いをしている。そうに違いない。
「おれ、俺だって風丸としたいけど、俺、女じゃないから風丸とセックスできない」
「うーん……」
涙目で言ってくれたことは非常に嬉しかったが、漏れたのは苦笑だった。やはりというか、なんというか。円堂らしい、の一言に尽きる。

バンダナをずり下げ目元を隠すように影を作った円堂を再び抱きしめると、わっと驚いたような声が聞こえた。
円堂の首元に顔を埋め息を吸い込む。乳臭いような、男くさいような、そんな円堂の匂いが愛おしい。
円堂の耳に唇を押し付け、息を吹き込むように囁いた。
「そういうのは俺が全部教えてあげるからさ」
円堂は俺に身を任せてくれればいい。
俺の言葉を聞いた円堂は顔を赤くしながら、こちらを見上げる。見開かれた大きな瞳には涙の膜が張っていて、薄暗い部屋の中でもきらきらと光っていた。



続きます