愛だよ10-1 | ナノ
キーワード:触手、失禁、産卵
今回はエロ無し


10円堂視点


あの日から風丸は箍が外れたように俺を犯し続けた。風丸は気まぐれで、俺を優しい手つきで抱く日もあれば殴り手ひどく犯す日もあった。かと思えば、子供を可愛がるように接し、俺を抱きしめて眠るだけの日もあった。
きっと風丸は精神が不安定なんだ。寂しいのだろうか、何かに苛立ちを感じているのだろうか。俺といることで風丸の心の荒波は鎮まるのだろうか。だったら、俺が風丸の傍にいてあげなくちゃいけないんだ。そう思うことで俺は自分の心の安定を図った。
風丸にされる行為が苦しいばかりではないことに薄々気付き始めていて、そのことが心苦しい。舌を絡めて唾液を流しこまれることも、乳首を弄られることも、尻の穴に風丸のものを突っ込まれることも。…その上尿道に長い綿棒を突っ込まれることも、全部、痛いぐらいに気持ちがいいだなんて、認めたくはなかった。
肉体が快感と感じとっていても精神は与えられるその感覚を苦痛としてしか感じているのだから、俺は悦んでいるだけじゃないと自分に言い聞かせる。そう、たとえ相手が気の置けない親友である風丸であっても。


トレーに乗せた朝食が部屋の中央にある小ぶりで背の低い丸テーブルの上にぽつりと置いてあるのが見えた。ここに来てから食欲はそそられない。体力を消耗していても常に吐き気を催していて、とてもじゃないが腹いっぱいに飯を食べるなんてことはできなかった。
気を紛らわせるために、室内でサッカーボールを転がす。それだけでも心は晴れたし、少なからず幸せを感じることができた。やはり10人のチームメイトの背を見守り、勢いよく飛んできたボールをキャッチしたいということは夢に出るほどに願っているが、ボールに触れるだけでも少しその願いに近付けているような気がした。
今、この部屋に風丸はいない。風丸は毎朝目を覚ますころにはすでに姿を消している。何か用事があるらしく、帰ってくるのは夕方過ぎのことだった。目を覚ませば俺の隣にはぽっかりと空間が空いているだけで、白いシーツは冷たいばかりだ。机の上では白米や味噌汁が冷たくなっている。
寒くて、寂しくて。この部屋の無機質さが俺の心を弱らせてゆく。
風丸は帰ってきても、俺を犯して一緒に風呂に入り眠るだけだ。風丸の心は荒んでしまっているのだろうと思うと、可哀想で仕方がない。犯されている最中は必死で何も考えられないけれど、心の奥底ではまるで風丸を慈しむかのような感情が潜んでいた。もうこんな生活は嫌だったけれど、俺が荒んでしまってもどうしようもないのだ。

カチカチとアナログ時計が秒刻みに音を鳴らすのが俺の耳に届く。この部屋が地下であり部屋の壁も厚いことから、部屋の外の音は一切聞こえない。寂寥感が胸を侵食した。
風丸が乱雑に破って行く日めくりカレンダーとこのアナログ時計だけが時を教えてくれた。俺がここに連れてこられてから丁度三週間が経っていた。いつまでこんな生活が続くのかわからないが、一刻も早くここから出たいという気持ちだけはやはり変わることはなかった。

枕元にくしゃくしゃに置いてあったオレンジのバンダナをいつも通りに頭に装着すると、ベッドから降り、置いてある朝食に手を伸ばす。食欲が沸かなかったため、とりあえずコップに注いである水で喉を潤そうとして中身を一気に煽る。
「……っ!?」
水を飲み干した後に違和感に気付く。ただの水ではない、何か異質な、苦みを持った味が口内を満たしている。
ごほごほと思い切り咳きこんでみても完全に胃に入ってしまっていて出てこない。きっと風丸のことだから俺を殺すような薬は盛らないだろうけれども、一体なにを飲まされたのかがわからず不安が募った。

すぐに頭ががふわふわとするような感覚に陥り出して、ベッドにぼすんと腰を下ろした。上手く体が動かせない。異様な眠気に襲われて瞼が落ちる。
(睡眠薬……?)
脳は上手く働かなかったが、最後に何を盛られたのかに気付く。そしてそのままぶつりと意識が途切れた。



「ぅ……ん、」
硬い床が頬に当たる感覚がする。目覚めた俺はぼんやりとしたまま周囲を見渡した。
どうやら俺は四方のうち一方だけがガラス張りの広い部屋にいるらしい。三方はコンクリートではなく、まるで鋼鉄のような頑丈な素材でできてるように見えた。
実験器具のようなものがあるわけでもなく、家具があるわけでもない。何も置いていない部屋の真ん中に俺はぽつりと一人でいた。薬の影響かはわからないが、まだ上手く体が動かせなかった。
「どこだ、ここ…」
「目が覚めたか」
どうにか座る状態まで体を起こしてきょろきょろとしていると、どこからか声がかかる。振り向くと風丸が数人の研究員のような恰好をした人を引き連れて立っていた。風丸は戸惑っている俺を見ると鋭い瞳を細めて笑う。いつも以上に淀んだ瞳だった。
身構えて風丸を睨みあげる。風丸は機嫌を損ねるわけでもなくニヤニヤと笑ったままで、気味が悪かった。風丸が研究員に目配せをすると研究員はやけに頑丈そうな扉を開け部屋を出て行った。
風丸と二人きりになると、風丸は一歩一歩俺に近付いてきた。手には何かリモコンのようなものを持っているようだ。
「今日は今までで一番楽しいことをするんだぜ」
そう言った風丸は本当に楽しそうで、背筋がゾクリとした。それだけ言うと風丸は踵を返して扉へ向かおうとする。待てよ、と叫んでも風丸は足を止めることはなかった。

風丸がふと扉の前で立ち止まり、体ごとこちらに振り返る。相変わらず動けないままの俺を舐めるように見つめる、蛇のような視線が気持ち悪かった。
「な、なんだよ……」
立ち上がろうとして地面についた腕にぐっと力を入れてみる。崩れそうになる足に喝を入れフラフラと立ち上がった俺を見て風丸は嬉しそうに笑った。
「やっぱり円堂はそれぐらい元気じゃないとな」
リモコンのボタンを押す手元が見えた。すると扉と丁度向かい側に当たる壁がごおごおと地を響かせるような音を立てて上にあがる。どうやら壁ではなく巨大な扉だったらしい。扉が上がるにつれ、むっとするような臭気が漂い出す。

「な、んだ……?」
扉の奥からうぞうぞとした大きなものが近づいてくる気配がする。力の抜けそうな足で一歩後ずさる。振りかえると風丸の姿はすでに見えなくなっていた。いつの間にか扉から外へと出たらしい。

「ひっ……!」
その物体の姿の一部が見え始める。まるで植物の太い蔓のようなものがうねうねとこちらへと近づいてくる。言葉も出なかった。なんなんだ、これは。
風丸の性器を舐めている時を彷彿とさせるような濃い臭いが部屋に充満する。
俺の数倍、いや十数倍という大きさの巨大な植物のようなものが完全に部屋に入り込む。がたがたと震える足で扉へと走る。何度も足がもつれそうになったがそれどころではなかった。
殺される、こんな生物俺は知らない。風丸は俺をこの物体の餌にでもするつもりなのか。嫌だ、死にたくない、痛いのも苦しいのもいやだ、嫌だ。
呼吸が荒くなる。扉のノブに手をかけてがちゃがちゃと強く引くが、扉はびくともしなかった。
「出せ!出せよ!」
懸命に叫んでも扉は頑丈にロックされたままだ。

「落ちつけよ円堂、殺しはしない」
どこからか風丸の声が聞こえる。辺りを見回しても当然風丸の姿は見当たらなかったが、部屋の隅に複数のカメラやスピーカーが設置されていることが確認できた。
ここから出せと叫ぶ俺を気にもかけず、風丸は言葉を続けた。
「生殖機能を持った植物を開発したんだ、面白いだろう」
エイリア石の賜物だと笑う声が室内に響く。ぞっとした。あの石はこんな化け物まで生み出すのか。

呆然としていると、知らぬ間に俺の数メートル後ろまで近付いたその物体から一本のぬるぬるとした太い蔓が素早く伸び、俺の身体を掬うように捕まえた。胴に巻き付いたそれが俺の身体を引き上げ宙に浮かせる。
「いやだ、ひっ…はな、離せぇえ!」
我を失って叫ぶ。蔓を引き剥がそうと爪を立てても、ぬるぬると滑るだけでどうにもできなかった。恐怖と嫌悪感でぼろぼろと涙が零れ落ちる。
泣き叫んでいると、風丸の笑い声が室内に響いた。
「これからその触手がお前のこといっぱい犯して、いっぱい孕ませてやるからな」





イナズマで触手(笑)