愛だよ8-2 | ナノ



俺を見下ろすように立った風丸に腕を掴まれ、体を引き上げられた。うわぁ、と間の抜けた声が出てしまった。全身が緊張してしまって上手く動かせない。
「お前のこと見てると興奮するんだ」
掴まれていた腕をさらに引き寄せられ、風丸の股間に手が触れた。
「う……」
風丸の性器が硬くなっていることがわかってしまう。必死に手を振りほどこうとしたけれど、今の俺では風丸の力に勝つことはできなかった。
どうにもできずあたふたしていると、顔に影が落ちる。顔を上げると、風丸の顔がぶつかりそうなほど近くにあって、反射的にぎゅっと目を閉じた。

「ん……む、」
唇に柔らかいものが触れた。目を開けずともそれがキスであることがわかってしまう。その感触は犯されたことよりも妙に現実味を帯びている。
唇をぺろりと舐められて、濡れた感触に驚いて口を開いてしまう。その隙を狙ったかのように、風丸の舌が歯列をわって滑りこんできた。
「んん…、んぅ……」
舌を舐め上げられたり、吸われたりすると腰のあたりがぞくぞくして力が抜けてしまう。口内を風丸の舌がぬるぬると這って、気持ち悪いはずなのによくわからない気持ちになった。舌と舌が擦り合わさって、互いの唾液が絡まる。
風丸が口を離した頃にはすっかり息が上がってしまっていた。俺のファーストキスを風丸に奪われてしまい、途方に暮れるような気分だ。


「今日は入れないから、俺のを舐めてくれないか」
「い、」
「ああ、円堂は他のやつらがどうなってもいいんだな」
いやだ、と言おうとした俺を遮るように風丸が嘲笑する。そう言えば俺が従うとわかりきっているかのような口ぶりだった。もちろんそれは事実だった。風丸はダークエンペラーズのキャプテンなのだ。今捕まっているであろう俺のチームメイトたちをどうこうする権利は確実に持っているはずだった。
俺がぐっと唇を噛んでいると、風丸は俺の手を引いてベッドに腰掛けた。軽く開いた股の間に跪かされ、俺は風丸を見上げた。
「豪炎寺たちは無事なのか?」
「……あぁ」
その少しの間に違和感を覚えたが、風丸が頷いたのを見て安心した。あいつらが無事でいてくれるのなら、それでいい。こんな目に合うのも俺だけでいいんだ。

風丸が腰を少し浮かせ、下着ごとパンツを下ろし性器を露出させる。風丸のそれはすでに硬くなり、ゆるく上を向いていた。
「ど、どうすればいいんだ?」
「お前がされたら気持ちいいと思うようにしてくれればいい」
前髪を掴まれ、ぐっと性器に顔を近づけさせられた。少し濡れた亀頭が頬に当たってつるりとした感触が走る。
早く、と急かされ、恐る恐る口を開く。むっとした臭いが鼻について気持ちが悪かった。
「ん…、ぅ…」
風丸のそれを手で支え、裏筋に舌を這わせる。初めて味わう、独特の味がした。下から上に辿るように舐め上げ、亀頭に達する。くわえて、と興奮したような声で言われ、俺は言われるままに亀頭をくわえこんだ。
尿道口からしょっぱい液体があふれ出して、舌ですくうようにすると口内のものがびくりと震えた。
風丸が俺の頭に手を置いて、ぽんぽんと髪を撫でてくる。優しくされると心の中のもやもやが大きくなる。優しく頭を撫でてくれる手は気持ちがいいし、そうされると嬉しい。だけど無理やりさせられているという事実が変わることはない。さらに風丸に対する感情がわからなくなるばかりだった。
「んむ…ん、ん…」
「はぁ、気持ちいいよ、円堂…」
風丸が荒い息をもらしながら褒めてくれるが、口からはくぐもった声ばかりが出てきてしまう。自分がこうされたら気持ちいいだろうな、と思いながら、亀頭を吸いながら竿の部分を手でしごいたり、袋に舌を這わせたりした。こうされたら、と考えると何故だか少し興奮してしまい、顔が熱くなる。
唾液をどう飲み込めばいいのかわからなくて、風丸の先走りと混ざった唾液が口の端からだらだらと零れ落ちて俺の口元を汚した。
口いっぱいにしょっぱさが広がる。口の中の風丸のそれがガチガチに硬く大きくなってきて、口も大分疲れてきた。
早く終わらせたくて強く風丸のを吸い上げると、風丸が頭上で呻き声を上げた。上目で風丸の顔を見ようとしたら、頭を撫でていた手が髪を強く掴み、思い切り引き寄せられた。
「んぐ!?ん゛っ、んん!」
喉の奥に風丸の性器が当たって、吐きそうになる。顔を引こうとしても風丸に押さえつけられたままで動くことができなかった。
「んっ…」
風丸が声を出したと思ったら、喉の奥に熱い液体が降り注いだ。風丸の手がゆるんだ隙に口を離して咳きこもうとしたら、手で口を塞がれた。
「全部飲めよ、」
はあはあと息をしながら、すこし潤んだ目でこちらを見つめている。口元は笑っているのに目元は鋭いままで、恐ろしかった。
自分は吐きだしたくせに、と恨めしく思いながらも、少しずつ口内のそれを飲み下す。ねばねばとした感触のせいで喉にひっかかり、しょっぱさや苦さのせいで喉がひりひりと痛んだ。

「……ごほっ」
全て飲み干すのを見届けた風丸が手を離してくれ、俺はすぐさま咳きこんだ。喉を圧迫される感覚や精液の味がまだ残っていて、気持ち悪かった。
風丸の股から体を離した俺を、風丸が舐めるように見つめている。その目線が気持ち悪くて、どうかしたのかと尋ねた。すると風丸はニヤニヤと笑って、いや、と言葉を濁す。今度は目も笑っていたけど、なんだかやはり気持ちが悪かった。
「…円堂、お前何をそんなに興奮してるんだ?」
風丸は笑いながら、しゃがんでいた俺の股間を足で思い切り踏み潰した。

「ぎっ………!」
痛みで声すら出ない。もがこうとして後ろに倒れこんでしまい、床に頭を強かに打ちつけてしまった。
衝撃と痛みで息ができない。ギリギリと踏み潰す力が増すにつれて目の前が真っ赤になる。
悶えていると風丸の足が離れていき、ゆるゆると全身の力を抜いた。殴られたときよりもなによりも、今までで一番強い痛みを感じた。未だに痛みの波が全身に広がってゆくようだった。
倒れこんだ俺の脇に風丸が立つ。涙目になって見上げると、風丸は俺の胸倉あたりを掴んで持ち上げ、ベッドに放り投げた。力が入らずされるがままだったが、再び壁に頭を強く打って一瞬意識が飛びかけた。
「う…ぐ……」