怒涛の一日だった。 円堂の曾孫を名乗る少年は、フィディオを含めた五人を過去に転送させてほしいと、そう懇願した。 信じられるはずもない話ではあったが、その少年の心や眼差しはまるでフィディオの想うその人のものであった。 オーガ学園との試合が終わり、フィディオはカノンたちと別れると携帯電話を取り出した。 FFIが終了してから程無く経つ。フィディオは円堂に対する想いを打ち明けることなくイタリアへ帰国した。 フィディオの想いは変わらず強いままであったが、やはり円堂との友情を尊重したかったため、その気持ちは大切に心にしまいこんだままであった。 フィディオは右手で軽やかに携帯を開くと、電話帳を表示した。 慣れた手つきで円堂のメールアドレスを選択すると、件名は空欄のまま本文を打ち込み始める。数十秒で短く打った文章を送信し、ぱたりと音を立てて携帯を閉じた。 イタリア、現在の時間は二十時。今頃円堂は夢の中だろう。フィディオは自分が円堂の夢に現れることを願って、帰路についた。 件名: 本文: マモルはとてもいい匂いがするんだね!まるで太陽のようだったよ! 「フィディオ、かあ」 円堂はベッドの中で今日あった全ての出来事を思い返していた。 軽く息を漏らしながら思い出すのは、初対面である少年にされたその行為。 イタリア代表、フィディオと名乗った少年は大きな瞳で円堂を見据えていた。爽やかで力強い瞳だった。円堂はそう感じた。 少年は円堂を抱き込んで数度背中を叩くと、マモル、と嬉しそうに、そして苦しそうに名前を呼んだ。 気軽に下の名前を呼ばれた円堂は、未来の自分を想像した。きっと自分はこの少年と近い将来再び出会うのだろう。 「かっこよかったなあ」 円堂はこれからの人生への期待を胸に、ひとつあくびをしたのであった。 オーガが襲来した世界の守はFFIで会う前からフィディオに惚れちゃうかもね的なアレです… メールは超次元言語です |