全身がびくびくと痙攣して頭がふわふわする。荒く息をつきながら風丸の名前を呼ぶと、風丸が俺の膝を左右に押して足を開かせた。 それでも抵抗することはできない。一度風丸に言われた時に学習すればよかったものの、あの後何度か抵抗してしまった。そのことがひどく心を押し潰した。そして、風丸に俺のを扱かれて、射精してしまった。その事実に対する罪悪感と虚無感が心を支配した。 「動くなよ」 そう念を押した風丸がベッドから降り、部屋の隅にある木製の棚の引き出しを開いた。がちゃがちゃと中を漁っているようだが、目をやっても何をしているのかがいまいちわからずぼんやりと風丸の後ろ姿を見ているだけだった。 風丸は相変わらず細い。ほどいている髪や細長くなった瞳孔のせいでがらりと印象が変わってしまっているが、声も匂いも変わらず風丸のままだ。 俺は風丸が大好きだ。昔からずっと一緒にいて、俺を助けてくれて。サッカー部に入部してくれたこともそうだ。どれほど精神面で風丸に救われたことか、思い返しても数え切れないほどだ。風丸は大切な唯一無二の親友で、幼馴染だった。 そんな風丸にこんなことをされるのは寂しくて悔しくて、悲しい。もちろん怒りもあるが、それでもその一言で片づけるにはもやもやとした何かがのこった。 息も落ち着いた頃になり、手に十五センチほどの大きさのチューブの容器を持った風丸が戻ってきた。 「なんだ、それ?」 きょとんとして風丸を見上げると、風丸はベッドに乗り上げ動かず開いたままだった足の間に再び膝立ちで座った。 「ローションだよ」 ローション。と、言われてもよくわからない。首をかしげていると、風丸がふんと鼻を鳴らした。どうやら呆れているようだ。 チューブのキャップを外した風丸が、その中身を手の平に出す。中身は粘性のある透明な液体のようだった。 チューブを足元に放り、空いた手が俺の腿に触れる。ゆるく撫でられるとくすぐったさが広がって足がぴくぴくと震えた。 腿を撫でていた手に力が入りさらに足を大きく開かれたと思ったら、ローションを垂らした指が俺の尻の穴にずぶりと入りこんだ。 「ひっい!?なにし、なにしてるんだよ!」 ローションが絡んで滑る一本の指がぬぷぬぷと中をかき混ぜる。気持ちが悪い。喉が痙攣して上手く言葉が出てこなかった。風丸は指を動かしながら息を荒くしている。 「男同士のセックスはここを使うんだぜ」 風丸は随分と興奮した様子だった。嫌だ。こんなの知らない。 指を抜き挿しされたり中で折り曲げられたりすると、くちゅくちゅと音が立って顔に血が上るのを感じた。 「いやだ、ぅ……く、恥ずかしい…」 あまりの羞恥に両腕で顔を隠す。風丸は特に咎めることもなく、俺の後ろを弄ることに没頭していた。額のバンダナが汗を吸って濡れているのを感じた。 少ししかそうしていないのに、突然指を増やされた。中が拡張されて引き攣るような痛みが走る。俺が低く呻くと、風丸は一度溜息をついてから指を抜いてくれた。大きく息を吸って、長く息を吐く。俺はこれからさらなる痛みに耐えなければならない。そう思うとぞっとした。 尻に何か冷たくて硬いものがぐりぐりと押し込まれる。驚いて顔を隠していた腕をどけて下を見ると、風丸がチューブを俺の中に突っ込んでいた。 「これ全部入れれば、痛くないだろ」 「ひぎっ!?うああ!」 ぶちゅりと音がたって、俺の中に液体が入りこむ感覚がした。液体は冷たいのに、何故だかとても熱く感じた。風丸はチューブをギリギリと握りしめて中身を絞り出す。気持ちが悪い。ひどい吐き気がした。 中身が少なくなったらしく、風丸がチューブを抜いた。後ろから少しとろとろとしたものが流れ落ちる感覚がした。 風丸は俺の腰を片手で押さえると、一気に三本の指を挿入してきた。 「う…ぐっ…ううう……」 滑りがよくなって、痛みは少なかった。しかし風丸が指を広げたりかき回したりすると、ひどい違和感と圧迫感があった。ベッドのシーツを握りしめ、それに耐える。 風丸の手の動きが、荒々しいものから何かを探るようなものに変わった。腹の方に向けて指を折り曲げ、少し浅めの部分を強く押し上げられる。 風丸の指がある一点に触れると、びりびりとしたよくわからない感覚が走った。 「ふ…んあ……あ、う」 呻きではなく、鼻から抜けるような声が自然と出てしまう。無意識に腰が動いてしまった。 風丸がそれに気付き、同じ部分を刺激する。そこを抉るようにされたり、優しく撫ぜるように弄られたりすると、息が上がってしまう。 「円堂、気持ちいいか?」 「あっ、んん…わ、わかんない…ぁ」 息を荒くしながら風丸が聞いてきたが、この感覚がどういったものなのか、自分では全く理解できなかった。 眉間に力が入ってしまい、眉を寄せる。だんだんとびりびりした感覚がぞくぞくとしたものに変化してきて、身体が熱くなる。吐息と一緒に勝手に声が漏れてしまい、堪えることができなくなってきた。うしろから聞こえるにちゃにちゃという音が羞恥心と興奮を煽る。 いきなり風丸が指を引き抜いた。物足りなさを感じて、あっと声が出てしまった。 風丸は俺から身体を離すと、穿いていたパンツの前を寛げ、下着を下げると硬くなった一物を取り出した。 俺はそれをまじまじと見つめてしまう。俺のを小さいと罵っただけはあって、それなりの大きさと太さを持っていた。俺のとは違って皮も剥けていて、羨ましい、などと考えてしまった。 風丸がぐいと腰を掴んで引き上げた。腰を高い位置に固定され、俺は唾をごくりと飲み込んだ。緊張で身体が固まる。 ついに俺は犯されてしまうのだ、親友の風丸に。喉がつまり、涙がこみ上げてきそうになったが、ぐっと我慢した。 自分の風丸に対する感情がわからない。ただの怒りや悲しみだけではないのは確かだったが、上手く言い表せないやり場のない感情をぶつける矛先すら見当たらないことが、たまらなくもどかしかった。 風丸の性器が俺の尻に触れた。心臓がどくどくと脈打って、呼吸が早くなる。軽く眩暈すらして、俺は強く目を瞑った。 風丸、止めてあげられなくて、ごめん。 |