「じゃあ、入れるね」 円堂が小さく頷いたのをしっかりと見届けると、ヒロトは先ほど扱いてもらい勃起した性器を円堂のアナルに押し付けた。 ローションでぐちゃぐちゃに濡れたそこをぐいぐいと押し広げ、円堂の中へと入る。 「うっぐあ……ひい、うわああ!」 ヒロトの亀頭のあたりが入ったところで、円堂が痛みに叫び出した。ヒロトの肩や胸をぐいぐいと押して苦悶の表情を浮かべる円堂を見たヒロトは、一度性器を抜いて円堂の額を撫でた。 「だ、大丈夫?」 「いってええ…」 涙を浮かべて色気のないことを言う円堂を見て、ヒロトは難渋する。ここで、やめるべきか。しかしそれでは男が廃るというものではないだろうか。しかし、今続けても円堂の身に負担をかけるだけ。 しかし、しかしと思い悩んでいると、呼吸を整えた円堂がこちらを見つめていることに気がつく。 「俺だって覚悟は決めてるんだ」 続けてくれないか、とはっきりとした口調で言う円堂に、ヒロトは自らも覚悟を決めなければならないことに気付いた。 円堂と繋がりたい。その気持ちばかりが膨らみ、円堂自身への気づかいに欠けていたのだ。 ヒロトは目を瞑り深呼吸をする。円堂への愛情。円堂からの愛情。頭の中でそれをもう一度確実に確認し、ヒロトは目を開いた。 「ごめんね、円堂くん。痛くても我慢してね」 ヒロトの不安に聡く気付いた円堂は、笑顔でもちろんだ、と答えた。 仕切り直して、ヒロトは円堂の中へと分け入る。 「ひ…、んぐ…!」 円堂は歯を食いしばって痛みに堪える。ヒロトの肩をぎりぎりと掴み、その指先は白くなっていた。 一方ヒロトも中の締め付けによるものと肩への痛みに呻いていた。 「くっ……はぁ、」 ローションのすべりを借りようやく全てを中に収める。どちらも痛みを感じながらも、まだ萎えてはおらず、息を荒げて動きを止めていた。 中が慣れるのを待つ間、ヒロトは円堂の腰から手を離し円堂の陰茎を握った。ゆるゆるとそこを擦ると、円堂の表情が少し落ち着き始める。それに合わせて、腰を揺らした。 「あ……あ、いって…」 動かすと痛いようであるが、このままでは埒が明かない。円堂のペニスを扱きながら、ヒロトは緩やかに腰を打ちつけ始めた。 亀頭をぐりぐりと親指で刺激し、手の平で竿を擦る。後ろはできるだけ前立腺を刺激するよう、そこを目掛けて動かす。 「んあ!う、あっ、ひろ、ヒロトぉ!」 円堂の声からは随分と痛む様子は抜けているようだった。ヒロトは安堵して、腰の動きを速めた。ぱんぱんと乾いた音が室内に響く。 二人の荒い息と体温のせいで、室内の温度が高く感じられた。 円堂の口からは言葉にならない喘ぎ声ばかりが漏れ出す。ヒロトは円堂の手を掴むと、その手の平に唇を落とした。 「円堂くん、えんどう、くん」 そのまま手の平に舌を伸ばす。手首から指先まで舐め上げると、円堂の汗の味がした。ヒロトは夢中になって腰を振りながら手の平を舐める。いつもゴールを守り、チームを守るこの手が、今は自分だけのものであるという幸福感と優越感にヒロトはたまらない気持ちになった。 「は、あぐ、あっ、ああ、あ」 円堂は尻の痛みを感じつつも、ごりごりと前立腺を抉られる快感と手の平を舐められる感覚に何も言えなくなっていた。痛みは感じてこそいるものの、それすら快楽になりつつある気がする。 与えられる感覚すべてにぞくぞくとして全身が震える。汗が身体を伝う感覚すらも気持ちがよかった。 ヒロト、ヒロトと途切れ途切れに名前を呼ばれ、ヒロトは腰の動きをさらに速める。ゴム越しであっても円堂の中との摩擦が自身のペニスを刺激して気持ちがよかった。 にちゃにちゃという音を立てるローション、円堂の喘ぎ声、円堂のてのひらと汗の味、円堂のにおい、その全てがヒロトを興奮させた。 ヒロトに限界が近づく。ヒロトは円堂の手から舌を離すと、円堂の唇を塞いだ。 「んぅ、はぁ…んんん……」 舌を絡ませながら、円堂のペニスへと手を伸ばす。裏筋を指でなぞってやると、アナルがぎゅうと締まってさらに刺激が強くなった。がつがつと腰を押し当ては引き、円堂のペニスを擦る。円堂はその刺激に耐えられず、がくがくと痙攣した。 「いっ…ぎ、あう、や、あっ、うあああ!」 「く……あ…」 円堂のペニスから噴き出た精液が、二人の腹を濡らす。円堂が達するとアナルが収縮し搾り取るような動きになり、ヒロトも堪えきれずに達した。 しばらく抱き合ったまま動かず、息を落ちつける。呼吸がある程度落ちついたところで、ぬるりと性器を抜いた。 ぬるりと抜けていく感覚に円堂が呻く。しかし二人の心は穏やかだった。例え薄膜越しであっても繋がることができた。その事実だけで二人は幸せだった。 シャワーを浴び終え、服を着る。明日も休日であるため、ヒロトは急遽円堂の家へ泊まることとなった。園へ連絡し、特別に外泊許可をもらったのだ。 通話を終えたヒロトが部屋に戻ると、円堂がベッドに腰掛けて待っていた。 ヒロトも円堂の隣へ同じように腰掛け、身体の横に置かれた円堂の手を握った。そしてふと疑問に思ったことを尋ねた。 「ねえ円堂くん、そもそもなんでそんなに悩んでいたんだい?」 円堂ひとりが性について深く考える。ヒロトはそのことに違和感を覚えていたのだ。 円堂はヒロトの問い掛けに、んー、ああ、などと曖昧な返事をした。ヒロトが円堂の顔を見つめていると、円堂は困ったような顔をして口を開いた。 「昔、風丸にさ、一時の愛に流されちゃいけないからよく考えろって言われたんだ」 「ああ……」 ヒロトは納得したように、気の抜けた声を出した。風丸一郎太。彼の言葉なら仕方がない。今も、そしてきっと昔も、彼は円堂の親友であり、世話係のような人間なのだから。 (風丸くんは昔から難しいことを考えているんだね…) ヒロトはそう思うと、「そっか、そうだよね」と笑いながら言ったのであった。 終わりです。 温子さんはお出かけしていて不在です。 |