「んっ…く…」 物音で目が覚める。窓の外はまだ暗く、夜は明けていないようだ。ヒロトは何故だか動いてはいけない気がして、目覚めたままの、円堂に背を向けた姿勢で静止していた。 隣のベッドからごそごそと布団の動く音がする。それと……。 「う…、あっ!」 喘ぎ声、だ。ヒロトは狼狽してびくりとする。どうやら円堂は自慰をしているようだった。ヒロトが目覚めたことには気付かず、自らを慰めることに夢中になっている。 ヒロトの耳に、荒い息と微かな喘ぐような呻くような声、にちゃにちゃという粘着質な音が届く。 「ふ……あっ!あっ…ぐ、」 抑えてはいるが大きめの声が聞こえたと思ったら、荒い息が部屋に響いた。恐らく、達したのだろう。 暫くすると円堂がティッシュを取る音が聞こえ、するりとベッドから抜け出した。円堂が自分のベッドを横切る際、気付かれないかと全身を緊張させたヒロトであったが、円堂はそのまま部屋を出て、静かにドアを閉じた。 「トイレ、かな」 ヒロトは一人になった部屋でぽつりと呟いた。最初からトイレですればよかったのに、と思いながらごろりと転がって円堂のベッドへと体を向けた。 「円堂くんが、オナニーを…」 ヒロトは先ほどの声を思い出して顔を赤らめた。 ヒロトにとって円堂は神や聖人のような存在であった。穢れなき高尚な存在であるにも関わらず、自分たちのような過ちを犯した人間を自ら導いてくれる。そして、隣を歩んでくれる。 そんな円堂が、自慰をしていた。そのことにヒロトはひどく興奮した。 部屋には栗の花のような臭いが漂っている。円堂の精液の臭いだ。恋愛対象として見ている人間のそういった臭いなど普通嗅ぐことはできないだろう。ヒロトは自分がいかがわしい気分になっていることを自覚した。股間が膨れて下着がきつくなっていることに気付いていた。 がちゃりと扉の開く音がして、ヒロトは反射的に軽く体を起してそちらを見てしまった。 「悪い、起こしたか?」 円堂は申し訳なさそうな顔をしている。ヒロトは慎重に言葉を選ぶ。 「ううん、大丈夫。起きたら円堂くんいなくて」 笑顔で言えば、円堂はどこかほっとしたような顔をしているように見えた。 「そっか。トイレ行ってたんだ」 そう、じゃあ、おやすみ、と声をかけ、ヒロトは再び横になる。円堂もベッドにもぐり、眠たげな声でおやすみ、と呟いた。 円堂はすぐに寝息を立てはじめる。どうやら寝付きは相当に早いようであった。健康的で何よりだ。ヒロトは円堂の寝顔をまじまじと見つめる。 「円堂くん、かわいいなぁ」 それからヒロトは一人悶々としてしまい、昨晩と変わらず寝不足に陥ってしまうのであった。 風円長編が忙しすぎて書けなくなってしまったものです…しかし考えていた流れを忘れてしまいまして(笑) ・円堂のオナニーと眼球舐め円堂は庇護欲から2のころからずっとヒロトが好き。 ・数日かけて穴をならしてセクロスして堕ちる、はなし。 というメモが残っているだけでした(笑) |