「ミストレ君に手を握られちゃったの」
「ミストレがハグしてくれたの」
「ミストレ様が落ちた消しゴムを拾ってくれたの」
先ほどから親衛隊とやらの「ミストレにしてもらったこと自慢」を教室の端で延々を聞いている。
正直言って、不愉快だ。何が楽しくて自分の恋人が他人に施したことを聞かなければならないのだ。
不愉快である理由はそれだけではない。
ミストレが手を握ってくれた?俺は一度もないけどな。
ミストレからハグされた?そんなの論外だ。
・・・消しゴムくらいは拾ってくれるだろうけど。
何故かは分からないが、ミストレは俺に触れたがらない。
仮にも恋人なのに、まったくと言っていいほど触らない。

「・・・エスカバ?」
不満そうなミストレが俺の顔を覗き込む。
そうだ、今はミストレの部屋だった。
あの時の不愉快な気持ちをずるずると引きずったままミストレの部屋まで来てしまった。
「何なの、その顔。この俺の部屋にいるってだけで誇りに思うなのに何考えてるのさ」
「・・・ごめん」
「分かればいいんだよ、分かれば。・・・で、何考えてたのさ」
ミストレがあくまで俺の手に「触れない」距離で俺の横に座る。
「別に」
「そんなわけないでしょ」
ずい、と顔を近づける。
ミストレの吐息が、長い睫毛が、俺の視覚を、嗅覚を聴覚をジャックする。
「・・・じゃあ言うけど」
「なに」
「ミストレは俺に触れたくないの、か」
ああ言ってしまった。なんて恥ずかしいことを言ってしまったんだ。
顔の中心に熱が集まるのを感じながらミストレの方に目をやると、意外な反応をしたミストレがそこにいた。
「・・・な、なんなの・・・手を出してもよかったの・・・」
頭を抱えぶつぶつと独り言を言うミストレ。
「お、おいミスト」
ミストレ、と言い掛けた口を柔らかい何かが塞いでくる。
それを唇だと理解するのには時間がかかった。
「・・・エスカバから誘ってきたんだからね?・・・今日は覚悟しなよ」
にやりと笑ったミストレは今まで見たどんな笑顔よりもいきいきとしていた。

:)

ツイッターでお世話になっているにいのちゃんに捧げます!
普段エスミスしか書かないのでミスエスは新鮮でした(*'v`*)
実はミスエスも大好きです、ミスエス可愛い・・・。
何はともあれ!遅れてごめんねにいのちゃん!お誕生日おめでとうー!!!!
これからもよろしくお願いします!

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