「あっつい、なんなのこれ信じられない」
「学園内のクーラーが全部壊れたんだとよ」
「うわー、信じられないこの俺が汗だくとか」
ミストレが手袋をはずしぱたぱたと顔を扇ぐ。
白い首筋に汗が伝い髪の毛の先から汗の雫が滴り落ちている。
二人しかいないこの部屋も有り得ないくらいに暑い。
人口密度の高い食堂から逃げてきたらしいミストレは未だにぶつぶつと文句を言っている。
「そんなに暑いなら自分の部屋に戻れよ」
「・・・」
「おい、聞いてんのか?」
急に黙りこくってしまったミストレの顔を覗き込む。
「・・・だって」
「だって?」
「バダップがひっついてくるんだもん・・・もっと暑くなるじゃん」
惚気かよ、と顔をそらすと違うもんとミストレは体育座りで足の間に顔を埋めた。
「じゃあなんで俺の部屋に来るわけ」
俺だってお前にひっつきたいんだけど、と付け足そうとするとミストレが口を開いた。
「エスカバは俺にひっつかないでしょ?それに一人はやだ」
はっきりと言い切られた。
何を言うか、俺だってミストレにひっつきたくて仕方がないというのに。
しかしそれを口に出してしまえばミストレが俺の部屋へ来ることは今後一切なくなるだろう。
「・・・あ、ごめん電話」
ミストレがチカチカと光る携帯端末を手に取り耳にあてた。
少し嬉しそうなミストレの声に俺は「ああ、電話の相手はバダップなのだ」と悟る。
携帯端末を切るとミストレは俺の方を振り向き「邪魔して悪かったね、これで失礼するよ」とドアを開けた。
行くなと止められずに宙を彷徨ったこの腕はどうすればよかったのだろうか。

:)

抱きしめると壊れてしまう友情に俺は。
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テーマ「人外ファンタジー」
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