「えしゅかばー、おはよー」
「う…うぅー…あと…30分…30分で起きるから…」
「えしゅかばー、おきてー!あさだよー!!あーたーらしーいーあーさがきたっ♪きーぼーおのーあーさーだっ♪」
「ちょッ晩遅かったんだって…」
「おきてよぉ!!!」
「ひでぶっ」

大国首都某所のボロアパート二階。朝は大体…こんな感じ。


【何でもない一日の思い出】


「はい、万歳しろ。ばんざーい」
「ばんざーい!!」
手を高く上げさせ、寝間着を脱がせる。今日の服はこいつお気に入りの青セーラー。前に海軍パレードに連れていった時、猛烈に欲しがったから買ってやった(結構いい値段した)。
ほぼ毎日着たがるからモトは取れてるんだろうが、こいつの着る服はどうしてこう…やたら高いのばっかなんだ?
申し遅れた、俺の名前はエスカ・バメル。訳あってこのガキ…ミストレーネ・カルスの面倒を見ている大学生だ。ちなみに公務員志望。
こいつを育てるに至った経緯を話し始めたら長い。日が暮れるどころか朝が来る。作者も書くのめんどくさいし。言っとくが俺の子供じゃない。天に誓ってこれは言える。何を隠そう、俺は彼女いない歴=年齢でな…………あ、ミストレとの関係?とてつもなく遠い遠ーい親戚…………らしい。

「いただきまぁす!!」
「へい、おあがり」

ある日パチンコで借金作って蒸発した兄貴がいきなり俺の下宿先に現れて、ミストレとありえない額が書いてある通帳を置いてまたどこかへ去っていった。通帳の付箋に書かれた『どうかミストレをよろしくお願いします』という寂しい字を信じて、黒い金ではないことを祈りつつこいつの養育費にしながら自分の生活費と学費にも充てている。
兄貴が作った多額の借金のせいで苦学生へと転落した俺は、授業そっちのけのバイト三昧だった。小さいガキの面倒を見ないといけないからバイトは全部やめたが、それでも友達のサンダユウにミストレを預けて、単発のバイトに入ったりはする。

「いちごにゅーにゅー!!」
「ごはんと味噌汁の後にイチゴ牛乳…」

こいつは毎日何かしら、イチゴ味のものを食べないと気がすまない。とにかくイチゴ。朝がパンならイチゴジャム必須。ハー●ンのアイスも絶対イチゴ。

『今日も気温は30度を越え、蒸し暑い日になるでしょう。熱中症には…』
「きょうもあついの?」
「あんま外には出たくねーよな」
「せっかくこのふくきてるのに…」

今年の夏も暑ィがお気に入りの服は季節関係なく外に出て、他人に見せびらかしたくなるってもんだよな。まあ、近くのコンビニにアイス買いに行くぐらいならいいだろう。
皿洗いを済ませたら家計簿をつけて洗濯して…後はその時考えようか。
ミストレは朝から昼にかけてテレビやってる教育番組にご執心だ。流れてくる歌に合わせて歌まで歌ってやがる。

「えしゅかば、ポケットをたたいたらビスケットが出てくるなんてしゅごいね!ほしいね!!」
「ああ、食費が浮くな。欲しい」



「えしゅかば、えほんよんで」
「俺今勉強中だ。邪魔すんな」
「じゃあおえかきしゅる!クレヨン!!」

公務員試験の勉強をしていたらヒマを持て余したミストレが遊んでくれとせがむのはいつものこと。クレヨンをおもちゃ箱からひっぱりだして絵を描き始めた。ヒマそうで意外と挙動は忙しいのがこいつだ。

「えしゅかば、たいようってなにいろだとおもう?」
「…………赤かな」

そして子供の言動はたまに深い。



「…寝やがって」

気がつけば俺の足を膝枕に寝息を立てている。おやつのアイスを買いにいこうと思えば今度はこれか。布団へと運んだ身体は、うちに来た時よりもずっと重くなっていた。クーラーを弱くして、財布をポケットに突っ込む。今日のアイスと晩の買い出しに出掛けようと思った矢先、さっきミストレが描いていた絵が目についた。
たどたどしくてきたねえ字で「えすかば」と書かれ、俺の顔らしきものが描かれている。

「よく描けてンじゃねーの…」

…たまに、ほんのたまにだけれど…いつかミストレと別れる時が来るってことを考える。
わかってる。ずっと一緒にはいれない。いつか、いつか離れてしまう。もしかしたらそれが明日なのかもしれないのだし。
コイツは子供だから、誰かの保護なしには生きていられない。そして俺も…ミストレに精神的に依存しているのだろう。

「俺が守ってやらねーと、な」

手をきつく握りしめて、玄関へと歩き出そうとした――――その時だ。

「えしゅかば…どこいくの」
「アイス買いに行く」
「つれてってよぉ」
「じゃ準備しろ」
「わーい!!」

起きた。随分と短い昼寝だ。今日のアイスは何を食べようか、新しいアイスはあるだろうか…そんなことを考えながら、暑い夏の昼下りは過ぎていく。戻らない、戻ることのできない思い出になっていってしまう。

「えしゅかばだいしゅき!!」

この日常が、幸せだ。


:)

ツイッターでお世話になってます、とーえんさんからいただきましたエスみしゅ文ですー!!
お誕生日にいただきました!ウホホーイ!!!
私のうちのみしゅとれとは比べ物にならないくらい可愛いみしゅとれをいただいてしまいました、嬉しい(´ω`*)
とーえんさん本当にありがとうございました!

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -