むさ男改め脳無し    [ 6/64 ]

「更紗さん!?」



男達に謝ろうとしていた花太とむさい男との間に立つ。


むさい男達のせいで、花太の癒し効果が薄れたらどうするつもりだ!
テメェらの命じゃ償い切れねぇほどの損害だぞ!
全世界の人間に謝れ。
そして俺に土下座しろ。



「あぁっ?何だテメェは!」


当然男たちはいきなりの乱入者(つまり俺)に怒りを向けてきた。
こんな奴らの殺気なんて無いに等しいんだけど。

ていうかそのむさい顔俺に近付けないでくれる?
可愛くない顔見続けてたら吐き気がするんだけれど。



「何ってこの子の友達に決まってんだろ。この状況を見てそんな事も分かんないわけ?お前ら馬鹿?」


ちなみに不機嫌な時の俺は、毒舌が三割増になるらしい。
俺としてはそんなことはないと思うのだが。
とある筋からの情報だ。



「何だとっ?!」

「まあまあ、落ち着けって」

「そうだぜ。アイツの友達ならどうせ…」


俺の毒舌に激昂したむさ男(むさい男の略)一をむさ男二・三がにやにや笑いながら宥めた。
むさ男三が言わんとしていることがわかったらしく、むさ男一も顔にうっとうしい笑みを浮かべた。

(むさ男一とか二とか言い辛いな、全く…)


むさい男が三人揃ってにやにやと、鬱陶しいってことが分かんねぇのかな。
馬鹿だもんな。
ていうか、男はさっさと終わらして昼飯が食べたいんですけど?
こちとら餓死と戦ってんだぞ。



「ああそうか。じゃあお前も四番隊なんだな?」

「そうだけど。それがどうかした?」



どうせ言われることはわかっているけど律儀に返す俺。偉い。
顔面を潰してやりたい気持ちを抑える俺。偉い。

そして、俺が予想していた通りのことを見事言ったなら馬鹿…
いや、考えてみれば馬と鹿に失礼だから、“脳無し”の称号をこいつらにはあげよう。



「ぷはっ!こりゃ傑作だ。四番隊が四番隊助けに来たってよ!」


……おめでとう、君達の称号は“むさ男”から“脳無し”に降格だ。

全く予想と違わない脳無し一の言葉に脳無し二と三だけじゃなく、周りにいた十一番隊っぽい奴らも一緒になって笑った。

笑い声もウザイ。キモイ。耳障り。
やっぱりこいつらの喉潰すか。




「更紗さん…!」


後ろから不安そうな声がしたので振り返れば、不安そうな表情でおどおどしている花太がいた。






・・・





可愛い。

ほんと、こんな脳無し見た後に花太を見ると、いつもの倍以上に癒される…

そうだよな。
こいつらの喉潰してやりたいけど、それすると花太が怖がりそうだから止めておくか。



「大丈夫だから、ちょっと待っててくれな?すぐ片付けるから。そしたら一緒にお昼食べような」


微笑みながらそう言って、花太の頭を撫でてやった。
困り顔のままだがこくりと頷く花太。

やっぱかわいいなこいつ。

と思って顔を上げたら、花太の周りにいた野次馬共の顔が赤くなっているのが目に入った。

…誰もお前らに向けてなんかいねぇんだよ。

あぁもう面倒臭いなぁ…。

と言うのも、自分で言うのも何だが、俺の顔はかなり整っている。
まあ綺麗系ってやつ?
普段は全く気にならないが(この顔を使って遊ぶこともあるけれど)、こういう反応された時にふと思い出す。
知り合い達には知らない奴の前で不用意に笑うなと言われていたのを忘れていた。

まあ…いっか。
これぐらい、あいつらにバレないだろう。

別に笑顔の安売りしてるわけじゃないし。




「おいテメェ!聞いてんのか?!」

「ああ?聞いてる。聞いてる」


脳無し達を放っておいてどうでもいいこと(ただし脳無し達よりどうでもよくないこと)を考えていたら、脳無し一が食って掛かってきた。
面倒臭いので、それに適当に返事を返す。




「テメェ、ふざけてんじゃねぇぞ!!」



と、どうやらその返し方は能無し共の気に召さなかったらしい。

脳無しのくせに面倒臭い奴だな。
返事を返してやっただけでも光栄に思え。

はぁと溜息を吐くと、とうとう我慢の限界だったのか相手がキレたのが分かった。




「テメェ!俺らがどこの隊かわかってんのか?!」

「はいはい。どこの隊なんですかー」

「泣いてビビるなよ!」

「俺らは十一番隊だぜ?」

「テメェらみてぇな、くそ弱ぇ四番隊が刃向かっていい相手じゃねぇんだよっ!!」


能無し共の口からは三流の使い古された陳腐な台詞しか出てこなかった。


うわぁ〜本気で馬鹿?

…おっと馬と鹿がかわいそうってだいぶ前にわかってたんだった。
あまりの馬鹿さ加減――訂正して、脳無し加減――に逆に怒りも冷めてくる。
いや、本当にこいつらの頭蓋骨の中に脳みそは詰まっていないと思う。


ちらりと後ろを見る。
さっきと変わらず花太は、おどおどしていた。


そろそろ、花太の精神衛生上に悪いから終わらせないとな。





…それに俺の胃袋も限界だ。




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