おまけ)お犬様    [ 63/64 ]

「長次郎さん!長次郎さん!
 犬だと思って抱きついたら人間でした!これどうしたらいいですか?」

「拾った場所へ返してきなさい」

「これ飼っちゃ駄目ですか?」

「残念ながら隊長なので飼えません」

「ええー…どうしても駄目ですか?」

「ふむ…。ノ字斎殿から許可を貰えれば可能でしょう」

「雀部殿…」

「長次郎…儂を巻き込むでない」

「すみませんでした。ノ字斎殿。狛村隊長」

「ええー。山じい、これ飼っちゃ駄目?」

「さすがに人は飼えぬからのぉ…。どうじゃ狛村?」

「どうじゃと言われましても…」

「狛村もこう言っておるし、諦めい」

「やだ」

「駄目じゃ」

「くそ爺。ああもう面倒くさいなあ!こうなれば実力行使で…」

「やめい!こないだそれで儂の隊首室を壊したじゃろ」

「だってー!もふもふしたいもん!」

「狛村殿、何か手を考えてもらえませんか?言い出したら聞かないんですよ、この駄々っ子」

「何かといわれても…」

「何でもいいんですよ。要は貴方がその毛皮をもふもふさせてあげれば良いのですから」

「…毛皮と呼ばないでいただきたい」

「おや、ついうっかり口が滑ってしまいました。申し訳ありません」

「お犬様!毛皮もふもふさせてください!」

「はぁ…友ならばよかろう」

「友…?」

「友か…それでもいいかも。じゃあ、友達兼飼い犬ってことですね」

「…雀部殿」

「恐らく両者にあまり違いはないのだと思います」

「…分かった。深くは考えぬようにしよう」

「賢明な判断だと思います」

「お犬様、お名前教えてもらっても良いですか!」

「狛村左陣と申す」

「藤城更紗です」



こうして幼い俺は左陣さんの友達の座を獲得したのである。



(左陣さん。その毛並み、櫛で梳いてもいいですか?)
(好きにしろ)
(わーい。もっふもふ毛皮ー。もっふもふ毛皮ー)
(…雀部殿)
(狛村隊長、この子と接する上で一番大切なことは、諦めですよ)
(・・・)





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