「長次郎さん!長次郎さん!
犬だと思って抱きついたら人間でした!これどうしたらいいですか?」
「拾った場所へ返してきなさい」
「これ飼っちゃ駄目ですか?」
「残念ながら隊長なので飼えません」
「ええー…どうしても駄目ですか?」
「ふむ…。ノ字斎殿から許可を貰えれば可能でしょう」
「雀部殿…」
「長次郎…儂を巻き込むでない」
「すみませんでした。ノ字斎殿。狛村隊長」
「ええー。山じい、これ飼っちゃ駄目?」
「さすがに人は飼えぬからのぉ…。どうじゃ狛村?」
「どうじゃと言われましても…」
「狛村もこう言っておるし、諦めい」
「やだ」
「駄目じゃ」
「くそ爺。ああもう面倒くさいなあ!こうなれば実力行使で…」
「やめい!こないだそれで儂の隊首室を壊したじゃろ」
「だってー!もふもふしたいもん!」
「狛村殿、何か手を考えてもらえませんか?言い出したら聞かないんですよ、この駄々っ子」
「何かといわれても…」
「何でもいいんですよ。要は貴方がその毛皮をもふもふさせてあげれば良いのですから」
「…毛皮と呼ばないでいただきたい」
「おや、ついうっかり口が滑ってしまいました。申し訳ありません」
「お犬様!毛皮もふもふさせてください!」
「はぁ…友ならばよかろう」
「友…?」
「友か…それでもいいかも。じゃあ、友達兼飼い犬ってことですね」
「…雀部殿」
「恐らく両者にあまり違いはないのだと思います」
「…分かった。深くは考えぬようにしよう」
「賢明な判断だと思います」
「お犬様、お名前教えてもらっても良いですか!」
「狛村左陣と申す」
「藤城更紗です」
こうして幼い俺は左陣さんの友達の座を獲得したのである。
(左陣さん。その毛並み、櫛で梳いてもいいですか?)
(好きにしろ)
(わーい。もっふもふ毛皮ー。もっふもふ毛皮ー)
(…雀部殿)
(狛村隊長、この子と接する上で一番大切なことは、諦めですよ)
(・・・)
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