持つべきものは    [ 62/64 ]

「ただいまー」

「あ、更紗さん。おかえりなさい」


四番隊に帰ると、いつものように花太が出迎えてくれた。
その姿に癒される。

ああもうっやっぱ花太可愛い!花太可愛い!



「花太ー!!ただいまー!!お土産あるよー!!」


まず先に抱きついて養分を補給してから、長次郎さんから貰った菓子の包みを花太へと渡す。
俺が抱きついていて花太は身動きが取れないので、腕の中に花太を閉じ込めた状態で包みを開いて見せてあげた。


「じゃじゃーん!花太が前美味しいって言ってた、西洋のお菓子でーす!」

「わっ、嬉しいです!ありがとうございます」


周りに花を飛ばしながら笑う花太に、癒された。

今日ぶっ飛ばしたやつらも、これくらいの可愛さを身につけろってんだい。

まあ身につけたところで、花太の可愛さの足元にも及ばないがな!!

まだしばらく花太を補給していたかったが、俺のためにお茶を淹れてくれると言うので解放した。

お茶会した後でお茶を飲むのかって?
そりゃあもう、花太の淹れてくれるお茶ならいつでも受付中だ!



「更紗さん、お帰りなさーい」

「なあ俺らにお土産はねえの?」

「ある訳ねえだろバーカ。てか、なんでお前らは当たり前かのように、ここに居座ってんだよ。帰れ」


花太を待つために、部屋の奥へと入っていくと、当たり前のように座ってこちらに手を伸ばしてくる、ちかと角之助がいた。
なんかもはやこいつらの定位置が出来ているあたりが余計に腹立たしい。
腹立たしかったので、角之助の頭を叩いておいた。


「だって、僕たち十一番隊隊員の監視役ですもーん」

「好きでいるわけじゃねーよ。ていうか、あいつらいつまでここで働かせるつもりなんだ?」


しばらくの間ってどれくらいだよ、と言う角之助に、そういえばそんなことも言ったなと思い出す。
というかそういえば十一番隊のやつらとか居たなあ。
数が減って目立たなくなったから忘れてた。



「俺の気の済むまで?」

「…って、いつだよ!!!」

「気の済むまでつったら気の済むまでだろうが」


なんでそんな当たり前のことを聞きやがるんだこいつは。

俺があの面倒臭い戦いで勝ち得た権利だろうが。
そもそも期間を指定しなかった更木が悪い。
そうだ。全ては更木が悪い。

まあ、確かに仕事は出来ないし暑苦しいし鬱陶しいけど――



「だって下僕いた方が楽だし。八つ当たりできるし」

「おーい。本音がだだ漏れだぞー」

「俺はいつだって本音に正直だよ」

「まあ、僕はこうやってそれを口実に、毎日更紗さんの顔が見れて幸せだけどね」

「弓親…お前も大概本音に正直だよな…」

「角之助は俺の顔を見るだけじゃ不満、なのか?」

「えー、一角のくせに贅沢ぅー。スケベぇー」

「違ぇよ!!!馬鹿か!!」


冗談で盛り上がる俺とちかに、青筋を立てて唾を飛ばして怒鳴る角之助。

いやー本当にこいつは、からかい甲斐がある。
その点でも、なかなか今の状態は気に入っている。
こいつらは俺の害にも花太の害にも四番隊の害にもならないし。


でも、唾が飛んできたことにはムカついたので、床に沈めておいた。



「おーい。一角、生きてるー?」

「…ったく毎回人のこと殴りやがって」

「殴られる方が悪いんだろう」

「そうだよ。一角が悪いよ」

「俺のせいかっ!?」

「更紗さんのせいな訳ないだろ!?」

「煩いぞお前ら。ていうか下僕については俺の一存じゃ決めれねえよ。この隊舎に入った時から全てはれっちゃんのものだ」


なんせこの四番隊は彼女の縄張りのようなものだ。
彼女が是といえば是だし、否といえば否だ。

意見を求めるようにれっちゃんの方を見ると、いつもの様ににこりと微笑んでいた。



「そうですね…。さして使えないうえに場所も取るので、お引取りいただいて構いませんよ」

「だ、そうだ」


表情を崩すことなくそう言ってのけたれっちゃんに、俺もそうだと頷く。

れっちゃんがいらないと言えば、いらないのだ。



「今、卯ノ花隊長、使えないって言わなかったか…?」

「まっさかー…卯ノ花隊長がそんなこというわけ…」


だが二人はまだれっちゃんの恐ろしさを知らなかったのか、現実を受け止めきれないでいるようだった。

馬鹿だなー。早く言うこと聞かないと危ないぞー。

食事と医療を握っている人間に逆らってはいけないのは世の理だ。



「お引取りしていただけますね?」


案の定、そんな二人にれっちゃんは更なる圧をかけていた。
相変わらずの笑顔だが、凄みが増している。

ようやく本当にまずいと感じたのか、二人が固まったのが見えた。

そしてすくりと角之助は立ち上がった。


「お前ら撤収だ!!」

「えー、僕もうちょっとここにいたいのにー」

「じゃあ、お前だけ残ってろよ!」

「いやだよ!見捨てないでよ!」


ちかも続いて、その後に隊舎に残っていた他の十一番隊の隊員も続いて出て行った。

体積がデカいやつらが出ていったせいで、一気に広くなった部屋を見渡す。
お茶を淹れて戻ってきた花太が不思議そうに首を傾げていた。
癒された。可愛い。

お茶を受け取って、れっちゃんと二人、隊首室に入る。





「いいの?あいつら返しちゃって」

「ええ。だって、部外者がいたらせっかく増えた予算で楽しめないじゃないですか」

「儲けのほどは?」

「珍しく貴方を心から褒め称えたいほどでしたね」



滅多にないれっちゃんの台詞に口笛を吹く。
確かに予想以上の参加者数だったもんな。
いやー俺の人気も捨てたもんじゃないな。

ご機嫌な様子のれっちゃんに、今なら自分の希望が通るのではないかと打算した。



「え、じゃあさ、じゃあさ、花太と現世に行きたいです!」

「あら、貴方が外に行きたいだなんて、珍しい」

「次のお茶会のために長次郎さんと左陣さんのお土産買いたいしー、花太に洋菓子買ってあげたいしー。最近動き回って疲れたから、怠けたい」

「最後のが本音ですね。ところで、私へのお土産はないのですか?」

「れっちゃんには最新の美容グッズをお届けいたします!」

「よろしい。そうですね…確か現世の虚討伐任務が出てたようですし、それでいかがです?」


やっぱりタダでは行かしてくれないか。
俺、怠けたいって言ったばっかなんだけどなー。



「鬱憤晴らしには調度良いでしょう?」

「…了解。ちなみに、とーしろーも拉致していい?」


でも褒美として行くのに任務をさせられるのは割に合わないので、更なる条件を提示しておいた。




「手を回しておきましょう」

「やったー!れっちゃん大好き!」


にっこりと笑ったれっちゃんに、俺もにっこりと笑みを返した。

持つべきものは、癒しとお金とれっちゃんだな!





こうして四番隊は予算を、俺は癒しと自由を手に入れた。




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