瀞霊廷通信よりA    [ 59/64 ]

引き続き瀞霊廷通信記者の野乃がお送りいたします。
私は今、七番隊隊首室前にいます。

そこで私はすごいものを見てしまいました。




「長次郎さんっ!!」



更紗さんが満面の笑みで駆け寄り、抱きついた相手は、




なんと一番隊の雀部副隊長だったのです!!




部屋の中を確認すると、そこには七番隊の狛村隊長と一番隊の雀部副隊長の姿が!
なんということでしょう。
先程確認した結果、狛村隊長や雀部副隊長に賭けた人数は十人程度のようです。

なんという大穴…!!
俺も賭けておけば良かった…!!


抱きつく更紗さんを動じることもなく受け止めた雀部副隊長。
そしてお互いの頬に口付けし合って―――


って、えええええええ!!!?



「お、お前ら何して…!!?」


目を丸くして驚いている日番谷隊長に同意するように頷く。

そうです!!日番谷隊長もっと言ってやってください!!



「キスとハグは西洋の挨拶ですよ?」

「そうだよー?」

「日番谷隊長もご一緒だったのですね」

「道案内して貰いました」

((敬語!?))


こちらの動揺など気にも留めずほのぼのと会話をする二人。

僭越ながら、今、俺と日番谷隊長の心の声は一緒だったと思います。

あの藤城更紗が敬語を使っている!?

各隊長にも、山本総隊長にもタメ口と噂の更紗さんが、敬語を使っている。
もはやこれは誰ですか。


え、雀部副隊長って何者!?
ぶっちゃけ俺よくこの人のこと知らないんすけど!!?
だって地m…いや、物静かな感じな人だし…
噂とかあんま挙がってこないし…

ああでも確かに西洋文化好きっていうデータはあったような…



ああもうっ我慢出来ませんっ!!




「あ、あの!!!」


我慢できず言葉を発した瞬間、全員の視線が私に集中しました。

あれ?俺一応、隠れてたつもりだったんですけど…


「貴方は…」

「あ、尾行が下手などっかの誰か」

「確かに。姿丸見えだったな」

「霊力が微弱すぎて、すぐに背景と同化して気にならなくなったけど」


さっきまで見ていた姿が幻だったんじゃないかと思うほど、言葉の刃がぐさぐさと胸に刺さっていく。

こ、これで、めげる訳にはいきません…!!
頑張れ野乃!!お前なら出来るはずだ!!


「あ、あの!」

「だから何?」

「雀部副隊長と更紗さんはどういうご関係なのでしょうかっっ!!?」


言ったよ!!俺、聞いちゃったよ!!


答え辛い質問かと思ったが、すんなりと答えが返ってきました。




「父親ですかね?」

「そのようなものだろうな」


顎に手を当てて考えながら答える雀部副隊長に、同意する狛村隊長。
いやいやいや、そんな爆弾発言をサラリと言わないでくださいよ!!


「父親というのは…」


固まっている俺の代わりに、日番谷隊長が思っていたことを質問してくれました。

いけない。いけない。
気をしっかり持たねば、記者失格ですね。

しっかりと取材を―――



「父親代わりと言うべきでしょうかね。この子がまだ小さかった頃の話ですが、色々とありまして、暫く私の元で引き取っていたのですよ」

「猛獣を手懐けるようなものだったな」

「猛獣の方がまだ大人しげがありましたよ」

「もうっ二人とも酷いですよ〜。今はこんなに丸くなったじゃないですか」

「確かに」

「そうだな」



え、いや、丸くって、え?
これで!?え!?


「丸いのか…?」


ですよね日番谷隊長!?ですよね!?
これより酷い状態ってどんなものなんだって思いますよね!!?



あ、いえいえ。つい不意をつかれてしまいました。


今度こそしっかりと取材を―――



「ということは、更紗さんは元一番隊ということですか!?」

「そうだけど、何か悪い?」


急に不機嫌な声で返されて、たじろぐ。

だからこれのどこが丸いんですか!!?



取材を―――



「あ、いえ。狛村隊長との関係が謎でして…。狛村隊長も父親代わりということですか?」

「いや、ワシは…」

「左陣さんは友達兼飼い犬」

「え…」

「飼い犬という響きはどうもよろしくありません。ペットと言ってさしあげなさい」

「分かりました。友達兼ペットです」


いきなりディープな関係きたー!!!?

雀部副隊長に訂正されて言いなおす更紗さん。
ですが、言い直したところで印象は変わりませんよ!!?

ちょっとまって、狛村隊長がペットなの!?
あの籠の下にどんな秘密が!!?

ペットにするなら普通もっと可愛い子とか、それこそ更紗さんの方がペット向きだと…

更紗さんがペット…?
何かそれいいなぁ…!

いや、でも、どちらかというと、飼い主の方がいいかも…
ああどっちも捨て難い!!







「お前考えてることがすぐ顔に出てるぞ」

「とーしろーの言う通り、それ以上不純な妄想してたら潰すぞ」

「すんませんしたっっ!!!」


更紗さんの目が笑ってなかったため、全力で謝りました。

潰すって…?潰すって、何を…?

色々な想像をしていたら体の震えが止まらなくなりました。
これ以上ここにいたら本当に潰される気がします。



「気にせず普通に友という関係だと思ってくれ」

「そうですよね!!」



そうですよ。
雀部副隊長は父親代わりで、狛村隊長は友達。
それでいいじゃないですか。
もう十分ですよ。

さあ帰りましょう!
さっさと帰りましょう!!

これにて取材は終わりです!



「それでは私はこれで失礼――」

「なあ」



一礼して立ち去ろうとした瞬間、更紗さんに呼び止められました。
嫌な予感しかしません。





「はい?」

「盗撮した写真」

「!!」

「とーしろーの時のも今のも、売り上げ俺にも寄こせよ」

「…………はい」




言葉だけ聞いたら頼んでいるようにも聞こえますが、その語尾に疑問符はありませんでした。

やっぱりこの人怖い…!!


以上!九番隊の野乃でした!!俺が生きてたらまた会いましょう!




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