引き続き瀞霊廷通信記者の野乃がお送りいたします。
私は今、七番隊隊首室前にいます。
そこで私はすごいものを見てしまいました。
「長次郎さんっ!!」
更紗さんが満面の笑みで駆け寄り、抱きついた相手は、
なんと一番隊の雀部副隊長だったのです!!
部屋の中を確認すると、そこには七番隊の狛村隊長と一番隊の雀部副隊長の姿が!
なんということでしょう。
先程確認した結果、狛村隊長や雀部副隊長に賭けた人数は十人程度のようです。
なんという大穴…!!
俺も賭けておけば良かった…!!
抱きつく更紗さんを動じることもなく受け止めた雀部副隊長。
そしてお互いの頬に口付けし合って―――
って、えええええええ!!!?
「お、お前ら何して…!!?」
目を丸くして驚いている日番谷隊長に同意するように頷く。
そうです!!日番谷隊長もっと言ってやってください!!
「キスとハグは西洋の挨拶ですよ?」
「そうだよー?」
「日番谷隊長もご一緒だったのですね」
「道案内して貰いました」
((敬語!?))
こちらの動揺など気にも留めずほのぼのと会話をする二人。
僭越ながら、今、俺と日番谷隊長の心の声は一緒だったと思います。
あの藤城更紗が敬語を使っている!?
各隊長にも、山本総隊長にもタメ口と噂の更紗さんが、敬語を使っている。
もはやこれは誰ですか。
え、雀部副隊長って何者!?
ぶっちゃけ俺よくこの人のこと知らないんすけど!!?
だって地m…いや、物静かな感じな人だし…
噂とかあんま挙がってこないし…
ああでも確かに西洋文化好きっていうデータはあったような…
ああもうっ我慢出来ませんっ!!
「あ、あの!!!」
我慢できず言葉を発した瞬間、全員の視線が私に集中しました。
あれ?俺一応、隠れてたつもりだったんですけど…
「貴方は…」
「あ、尾行が下手などっかの誰か」
「確かに。姿丸見えだったな」
「霊力が微弱すぎて、すぐに背景と同化して気にならなくなったけど」
さっきまで見ていた姿が幻だったんじゃないかと思うほど、言葉の刃がぐさぐさと胸に刺さっていく。
こ、これで、めげる訳にはいきません…!!
頑張れ野乃!!お前なら出来るはずだ!!
「あ、あの!」
「だから何?」
「雀部副隊長と更紗さんはどういうご関係なのでしょうかっっ!!?」
言ったよ!!俺、聞いちゃったよ!!
答え辛い質問かと思ったが、すんなりと答えが返ってきました。
「父親ですかね?」
「そのようなものだろうな」
顎に手を当てて考えながら答える雀部副隊長に、同意する狛村隊長。
いやいやいや、そんな爆弾発言をサラリと言わないでくださいよ!!
「父親というのは…」
固まっている俺の代わりに、日番谷隊長が思っていたことを質問してくれました。
いけない。いけない。
気をしっかり持たねば、記者失格ですね。
しっかりと取材を―――
「父親代わりと言うべきでしょうかね。この子がまだ小さかった頃の話ですが、色々とありまして、暫く私の元で引き取っていたのですよ」
「猛獣を手懐けるようなものだったな」
「猛獣の方がまだ大人しげがありましたよ」
「もうっ二人とも酷いですよ〜。今はこんなに丸くなったじゃないですか」
「確かに」
「そうだな」
え、いや、丸くって、え?
これで!?え!?
「丸いのか…?」
ですよね日番谷隊長!?ですよね!?
これより酷い状態ってどんなものなんだって思いますよね!!?
あ、いえいえ。つい不意をつかれてしまいました。
今度こそしっかりと取材を―――
「ということは、更紗さんは元一番隊ということですか!?」
「そうだけど、何か悪い?」
急に不機嫌な声で返されて、たじろぐ。
だからこれのどこが丸いんですか!!?
取材を―――
「あ、いえ。狛村隊長との関係が謎でして…。狛村隊長も父親代わりということですか?」
「いや、ワシは…」
「左陣さんは友達兼飼い犬」
「え…」
「飼い犬という響きはどうもよろしくありません。ペットと言ってさしあげなさい」
「分かりました。友達兼ペットです」
いきなりディープな関係きたー!!!?
雀部副隊長に訂正されて言いなおす更紗さん。
ですが、言い直したところで印象は変わりませんよ!!?
ちょっとまって、狛村隊長がペットなの!?
あの籠の下にどんな秘密が!!?
ペットにするなら普通もっと可愛い子とか、それこそ更紗さんの方がペット向きだと…
更紗さんがペット…?
何かそれいいなぁ…!
いや、でも、どちらかというと、飼い主の方がいいかも…
ああどっちも捨て難い!!
「お前考えてることがすぐ顔に出てるぞ」
「とーしろーの言う通り、それ以上不純な妄想してたら潰すぞ」
「すんませんしたっっ!!!」
更紗さんの目が笑ってなかったため、全力で謝りました。
潰すって…?潰すって、何を…?
色々な想像をしていたら体の震えが止まらなくなりました。
これ以上ここにいたら本当に潰される気がします。
「気にせず普通に友という関係だと思ってくれ」
「そうですよね!!」
そうですよ。
雀部副隊長は父親代わりで、狛村隊長は友達。
それでいいじゃないですか。
もう十分ですよ。
さあ帰りましょう!
さっさと帰りましょう!!
これにて取材は終わりです!
「それでは私はこれで失礼――」
「なあ」
一礼して立ち去ろうとした瞬間、更紗さんに呼び止められました。
嫌な予感しかしません。
「はい?」
「盗撮した写真」
「!!」
「とーしろーの時のも今のも、売り上げ俺にも寄こせよ」
「…………はい」
言葉だけ聞いたら頼んでいるようにも聞こえますが、その語尾に疑問符はありませんでした。
やっぱりこの人怖い…!!
以上!九番隊の野乃でした!!俺が生きてたらまた会いましょう!
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