みなさま始めまして。瀞霊廷通信記者・九番隊の野乃でございます。
私は今、噂のあの人の尾行をしております。
誰かお分かりですか?
女性死神が選ぶこの顔が好き 第一位。
男性死神が選ぶこの顔が好き 第一位。
男性死神が選ぶ抱きたい男 第一位。
男性死神が選ぶ怒られたい人 (男性部門)第一位。
男性死神が選ぶ踏まれたい人 (男性部門)第一位。
存在が認知されるや否や、これらの賞を総なめにした四番隊美人隊員。
もちろん私も投票いたしました。
ここまで言えばもうお分かりでしょう。
そうです。
今日は、藤城更紗隊員の噂のお茶会の日であります。
今回の賭けではなんと、全隊員の八割近い方が参加しており、注目が集まっております。
私も今とても注目されております。緊張します。
緊張しますが、私は皆様の代表として、藤城更紗隊員の好きな人は誰なのか、しっかりと見届けたいと思います!
ちなみに私は大穴を狙って、2番隊の砕蜂隊長に賭けました。
当たれ!マジで頼むから!!
今月金欠なんだよっ!!!
「おい野乃、更紗さん先進んでっぞー」
「しっかりやれよー」
「今月の生活費かかってんだからな!!」
「健闘を祈っていてくれ!」
「「「生きて帰ってこいよー」」」
あいつら他人事だと思って…!!ぶっちゃけ普通に怖ぇんだよ!!
こないだ十一番隊で失踪者が出たんだぞ!!?
…っと失礼しました。つい私情が。
藤城更紗隊員は四番隊を出発し、六番隊の横を通り過ぎ、現在は十番隊の方向に向かっております。
この時点で、卯ノ花隊長と、三番人気の朽木隊長と、少数ではありましたが票を獲得していた阿散井副隊長の線はなくなった模様です。
更紗さんが六番隊の横を通り過ぎた瞬間、周りで様子をうかがっていた隊員が崩れ落ちるところを目撃しました。
調査が足りないなー。
更紗さんは朽木隊長のことを弟だと言って可愛がっている場面は何度も目撃されているのだから、違うことくらい調べればすぐ分かったのに。
私は、更紗さんとの仲がまだ公にはなってない人だと予想しています。
砕蜂隊長とか砕蜂隊長とか砕蜂隊長とか…!!
すいません。ついつい熱くなってしまいました。引き続き更紗さんの追跡調査に戻りたいと思います。
更紗さんは現在、十番隊隊舎前を上機嫌で移動中です。
上機嫌さを表すかのように、束ねられた艶やかな髪の毛がそれぞれ揺れております。
そうです。本日の更紗さんの髪の毛はなんと、ツインテール!!
現世の言い方じゃ分からない方のために注釈しておきますと、頭の高い位置で結い上げたふたつ括りのことです。
その髪型が似合う男が、果たしてこの瀞霊廷内に何人いるかと問いかけたいですね。
最高ですね。
おっと!!?
ここで更紗さんが急に足を止めたー!!!
ここはまだ十番隊です。
やっぱり何だかんだ言って、日番谷隊長なんでしょうか!?
更紗さんはそのまま十番隊の隊舎へと近付いて――
って、あれ…?
入る様子はないですね。
窓越しに松本副隊長と会話をしているようです。
会話は聞こえませんが、肩を落としているところを見ると、日番谷隊長を見に来たというところでしょうか?
更紗さんは、松本副隊長に別れを告げ、五番隊方向へと再び歩き始めました。
いやー、冷や冷やしましたねー。
五番隊だと、藍染隊長が上位に入っていますが、私の調べではこの二人に接点は全くないようです。
存在を認知されているかどうかすら危ういとのことでした。
となると、ここから近いのは大本命の八番隊や十三番隊!
やっぱり、あの二人なのでしょうか!!?
先日のキス事件によって、享楽隊長が二位に浮上したことを見ても、濃厚な線だと思います。
でも、こっからでも二番隊に行けるんだけどな!!
「なあなあ、もう分かったのか?」
「いや全く分かんねぇんだよな、コレが」
「俺、藍染隊長に賭けたんだけど…」
「ああ、それはもう通り過ぎたから無い」
「・・・」
すいません。邪魔が入りました。
崩れ落ちる友人は無視して、続行したいと思います。
道行く人々の視線を独占しながら、ずんずんと進んでいく更紗さんは、五番隊を通り過ぎ、なんと八番隊や十三番隊も無視していきました。
もしや、これは、まさか、二番隊に――!!
と期待したのも束の間、急に横道に逸れ始めました。
このままだと再び十番隊に行くことになりますが、どこに行くつもりなんでしょうか。
四番隊にしか分からない抜け道なんでしょうか?
更紗さんは、迷いのない足取りで進んで……
…って、ちょっと待て。
更紗さんって方向音痴なんじゃなかったっけ?
うん。確か、そうだよね?
もしかして、迷っていらっしゃる!!?
え、ちょっと、待って、俺これどうしたらいいの?
道案内すべき!?
待って、声かけるとかハードル高すぎなんですけど!!?
「あら、更紗。こんなとこで何やってんのよ。隊長ならまだ戻ってないわよ?」
俺が動揺している間に、先程立ち止まったところに戻ってきてしまったようです。
窓から再び松本副隊長が顔を出してきました。
今度は会話が聞こえる場所を確保しました!
「迷った」
「相変わらずねぇ・・・。どこに行きたかったの?」
いいですよ松本副隊長!その調子です!
これで目的地が…って、耳打ちかい!!!
周りを憚って肝心の部分は耳打ちで伝えたらしく、こちらまで情報は届きませんでした。
至らない記者で申し訳ない…!!
気になるっ!!すごく気になるっ!!
「ここからだと、ちょっと遠いわねー。案内してあげよっか?」
「マジで!助かる〜」
「いいのいいの〜。ちょっと仕事飽きてきたしさ〜」
…松本副隊長。それでいいんでしょうか。
いえ、今回は助かりましたけど、松本副隊長が仕事サボってすぐどこかに行くから、追跡調査してくれっていう陳述書が結構来てるんですよねー…。
主に、十番隊の平隊員から。
ちなみに享楽隊長についても、八番隊から同じ陳述書が昔は来ていたらしいですけど、あそこはもう諦めたみたいですね。
俺んとこは、隊長も副隊長も真面目で良かった。本当に。
ん?
何やら急に、更紗さんの顔が輝きだしましたが…
「松本…お前、サボらないんじゃなかったのか?」
「とーしろー!!おかえり!!」
「隊長!?」
ここで日番谷隊長が戻ってきたようです!
松本副隊長の横から、同じように日番谷隊長が顔を出してきました。
分かり易い。分かり易すぎるよ更紗さん!
「えっと…てへ?」
「てへ?じゃねえよ。ほら、さっさと仕事に戻れ」
「でも更紗がぁー」
「俺が案内してやるから。お前もそれで文句ないな?」
「全くない!!問題ない!!」
「はーい…」
窓からそのまま外へ出てきた日番谷隊長に抱きつく更紗さん。
早くカメラの準備しないと!!
この二人の写真は本当によく売れるんですよ!!
これで砕蜂隊長じゃなくても、俺の財布安泰だわ!
「行くぞ」
「はーい」
更紗さんの手を取って、日番谷隊長は五番隊方面へ歩き出しました。
……え、手を取り?
え、普通に手繋いでるんですけど、あの二人。
ここから見ても分かるくらい、更紗さんは嬉しそうな表情を浮かべています。
そして、周りの女性隊員の目がやばいです。
色々と。ええ、色々と。
「野乃ー!!後でそれ3枚ね!!」
「私、5枚!!」
「まいどあり!!」
写真を撮る俺の腕も止まりませんが、引き続き追跡していきます。
五番隊を通り過ぎてからは、先程更紗さんが通った道とは違う道を進んでおります。
結構序盤に道間違えてたんだなー。
このまま行くと、一番隊や七番隊や三番隊があるのですが…
まさかまさかまさか?
俺たちの行方を見守っている周りの隊員も、思いがけない出没に目を見開いております。
ですよね。私も同じ顔してると思います。
そして、遂に、日番谷隊長が、足を、止め……
たー!!!!!!
なんと、なんと、なんと…っ!!!
二人が入り込んだのは、七番隊です…っ!!!!!!!
何と言う大番狂わせ!!
いえ、まだ決まったわけではありません!
お茶会の現場を押さえるまで、私は追跡調査したいと思います!!
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