十番隊にて@    [ 53/64 ]

あの藤城更紗に好きな人がいるらしいという噂は超特急で回った。
あるものは好奇心を抱き、あるものは笑い、あるものは悲しんだ。
そして多くの者が誰なのか当てようと躍起になっていた。

憧れ発言から、実力者であろうということになり、各隊の隊長・副隊長に予想が集中する結果となった。

1番人気は、浮竹。
2番人気は、藍染。
3番人気が、れっちゃん。

その後に、白坊や春水が並んでいるのだとか。
他にも知らない名前が並んでいたが、どうやら各隊の隊長・副隊長の中でも、年上の方が上位に並んでいるらしい。
落ち着いた年上なら、俺がなつくのではないかと考えられているらしい。

これらは全て、ちかが教えてくれた。
俺の反応を見て誰か当てようとしているみたいだが、面白いから放置している。

ていうか、藍染って誰だ。
何故俺が知らない奴の名前がそんな上位に挙がってんだよ。



まあいい。
おかげで、外を歩けば視線が突き刺さり、誰かと話をすれば聞き耳をたてられ、行く先々で質問を受ける。
この前までは、遠巻きに見られることがあったが、今回はあからさまに見てくるやつが多い。
俺は見世物か?
全員叩き潰したくなるほど、うんざりする日々だ。

と言っても、数えるほどしか出歩いてないが。

それでも俺がキレて暴れていないのは、一重に懐に大事にしまっている手紙のおかげだった。

それは俺の大好きな人たちからの、お茶会のお誘いだった。
そのお茶会は不定期に開催されていた。
月に1回だったり、2回だったり、はたまた2月に1回だったり。
忙しいあの人たちが暇を見つけて、四番隊に篭りきりの俺のために開いてくれる会だった。
そう!俺のために!ここ重要!
お茶を好きになったのも、あの人たちの影響が強いと思う。



「おい、手が止まってるぞ」

「ん〜?もう終わったよ〜?」

「なら、次の仕事渡すから取りに来い」


ちなみに俺は今、十番隊にいる。
俺が暴れたせいで仕事が増えたと直訴しに来た件で、俺は3日間お手伝いという形でお詫びをしているところである。
勿論お詫びなんて建前で、一日中とーしろーと一緒にいたいだけだ。
これがとーしろーの隊かあの人達の隊以外だったら、絶対無視している。




だが現実は甘くなかった。





初日は楽しかった。
からかえば反応が返ってきたし、仕事量も少なかった。

二日目は、少し慣れてきたのか、反応は薄くなり、仕事量も増えた。

三日目になると、これだ。
素っ気なさすぎやしないだろうか。


「ねーねー、抱きついていい?」

「……好きにしろ」


素っ気のなさに凹みつつもお許しが出たので、仕事をしているとーしろーの横へ行き抱きついた。
そんな俺を気にすることなく、仕事を進めるとーしろー。

正直に言おう。
結構寂しい。


同じことを思ったのか、乱ちゃんが手を止めてこちらの会話に参加してきた。


「隊長、どういう風の吹き回しですか?」

「俺なりに山田の助言について考えてみた」

「慣れたらいいってやつですかぁ?」


あの夢の共演の時の会話か。
今思い出しただけでも、可愛くて口元が緩む。

とーしろーはもう俺に慣れたということだろうか?


そう思っていると、



「よく考えてみれば、抱きついている間こいつは大人しいし、顔を見なくて済む」

「そ、そんなっ…!」


予想以上に辛辣だった。
衝撃に凍りつく。




「隊長、更紗の顔に弱いですもんねぇー」

「うるせぇ」


乱ちゃんの助け舟にほっと安堵する。

良かった。
顔も見たくないって言われたのかと思った。

そんなこと言われたら、多分一生ひきこもる。



「でも、素っ気なさすぎる!」

「俺の反応見て楽しんでんなら、反応してやる義理はない」


返答は相変わらず素っ気なかった。
素っ気なくてもとーしろーが可愛いことに変わりないが、怒鳴ってくれる方が好きだ。

それならばーー





「ひどい…っ!とーしろーに怒鳴られるっていう俺の楽しみを…っ」

「変なことを楽しみにするな!!」



わざとらしく泣き崩れてみれば、案の定とーしろーは釣れた。


よしっ、勝った!



「わーい。怒鳴ってくれたー!!」

「ちっ…」


嬉しくて再び抱きつくと、舌打ちされながら睨まれた。
それに微笑み返すと、顔を赤くして横を向く。

そう!こういう反応がいい!




「隊長が怒鳴らないなんて無理な話だと思いますよー?だって相手は更紗ですもん」

「・・・」



とーしろーを怒鳴らすのは得意です!




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