突然の来訪者    [ 52/64 ]

「藤城更紗はいるか?」









ガラリと扉を開けて入ってきたのは――









「とーしろーじゃん!なになに?俺に会いに来てくれたの!?」

「「ええ!?」」

「んな訳あるか、この馬鹿」

「ちなみに私もいまーす」

「あ、乱ちゃん久しぶりー」

「「ええぇ!?」」


俺の第二の癒やしとーしろーと、そんなとーしろーといつも一緒で羨ましい、ノリがよくて巨乳の乱ちゃんの2人だった。
十番隊隊長と副隊長のいきなりの訪問に、四番隊のみならず、絶賛下僕中の十一番隊の面々までもが驚いていた。

俺が気にする必要はないので、突然の再会を喜ぶべく、とーしろーに抱きつこうと駆け寄る。



が、



「なんで、避けるの!?」

「やめろ。抱きつくな。普通に話しを聞け」


躱されてしまった。
無理矢理抱きつくことも可能だが、それだととーしろーに嫌われる可能性もあるので、ぐっと我慢する。

我慢出来る、俺、偉い。

仕方がないので、とーしろーの話を聞くことにした。



「俺に何の用事なの?」

「お前が暴れまくったあの場所は、十番隊の管轄だ」

「へーそうだったんだー」


そうだったのか。
あんまり他の隊の業務とか知らないもん。興味もないし。
あ、でも確かにこないだ手伝った書類の中に、どこかの地区の修繕費用とかのがあった気もする。

あれって、あそこらへんのことだったのか。



「へー、じゃねぇよ!!てっめぇ人の仕事増やしやがって…!!」

「えー、ごめんね?」

「ごめんねで済むなら、わざわざ乗り込んでこねぇよ」

「えー」

「いいじゃないですかぁ、もうっ。こうやって会いに来る口実が出来たんですからぁ」



ということは、つまり、とーしろーが俺に会いたがってくれていたってこと!?



「とーしろー、そんなに俺のことを…っ」

「松本テメェ、適当なこと言ってんじゃねぇよ。こいつが調子にのるだろうが!」

「とーしろー!ねぇ抱きついていい!?まだ駄目なの!?」

「お前も調子にのんな!!」


もう一度抱きつこうとしたが、今度も躱されてしまった。
それでも反応が面白いので何度か挑戦する。

そんな風に乱ちゃんと盛り上がりながら、とーしろーで遊んでいると、視界の隅でちかが花太に近寄ったのが見えた。

え?
ええ勿論、どんな時でも花太は視界に入れてますとも。




「え、君いいの!?アレ許してて!」

「えぇ!?そう言われましても、僕は何も…」

「浮気だよ!?浮気!!」

「えっと…」

「更紗さんのお気に入りの座が奪われちゃうよ!!?僕がなりたいのに…っ!!」

「いえ、あの…」


ちか、心の声が漏れている。

というか、これは浮気ではない。



両方とも本命だ!!




「ん?」


ちかに詰め寄られている花太を見て、とーしろーは花太に近付いていった。
そして花太ととーしろーが対面する。


「お前が今回の騒動の原因か?」

「あ、は、はいっ!!すみません!すみません!」

「あ、あぁ。別にお前に謝って欲しい訳じゃないんだが…」

「すみません!すみません!」

「だから謝るなって言ってんだろ」

「すいません…」


目の前で繰り広げられているのは天国か?
なんてことだ、こんなにも早く俺の癒やし達が夢の共演を果たすだなんて…っ!!!
今なら死んでもいいっ!ああでも、この光景を目に焼き付けないといけないから、まだ死ねないっ!!

ああああっ!
こんなことになるんだったら、技術研究所から映像記録装置盗んでくるんだった…っ!!





「そもそも悪いのはここにいるこの馬鹿だ」


あれ?俺のせいなの?


身悶えていると、いきなりとーしろーに指を刺された。

俺のせいでここに来たとーしろー。
俺のせいでとーしろーに話しかけられている花太。

俺のせいで、この2人が対面している。



ということは――






「やめてっ、俺のために争わないで…っ!!」



こんな幸せな状況は楽しむしかない。
とりあえず俺は、この台詞を言う千載一遇のチャンスだと思った。

案の定、とーしろーは花太に向けていた顔をこちらに向けて、怒りを顕わにした



「だ、れ、が、てめぇのために争ってるって?えぇ?」

「え?と・う・し・ろ・う」


小首を傾げて、可愛らしく返答すると、狙い通りとーしろーの顔は真っ赤になっていった。

ああもう本当に可愛いっ!!



「〜〜っ!!いい加減にしろっ!?」

「隊長、抑えて抑えて」


いろんな意味で顔を真っ赤にして怒るとーしろーを傍にいた乱ちゃんが宥めた。

声だけを聞くと落ち着いたものだったが、その表情は明らかににやついていた。
俺の他にこの状況を楽しんでいる人がいるとしたら、乱ちゃんしかいないだろう。

だから乱ちゃんも結構好きなんだよな、俺。



「もう〜更紗が悪いんじゃな〜い」

「俺?」


そしてそんな表情のまま、こちらを責めるような発言をしてくる。
何のことだろうかと、首を傾げた。



「隊長かその子か、どっちが好きなのかハッキリしないから〜。ね、隊長?」

「おい松本。お前何勝手なこと言ってんだ?」

「とーしろーっ、そんなに俺のことを…っ!!」

「お前も変な勘違いをするな!!」

「でも、ごめんな。俺は花太もとーしろーも、どちらも同じだけ愛しているから、どっちかを比べるだなんて、そんな…っ」


そんな罪深いことは出来ない…っ!!

それぞれにそれぞれの魅力があるんだ!!

花太は、おっとりしていて気配り上手でお茶も美味しいし、何より可愛くて可愛くて可愛いし、
とーしろーは、しっかり者で優しくて振り回されやすくてツンデレで、何より反応が可愛いし可愛いし可愛い!


ああもうっ、やっぱどっちも本当に可愛いっ!!!!




「大好きっ!!」

「あ、おい、離せっ!!」

「僕も大好きですよー」


もう我慢出来なくなったので、両手で2人にぎゅっと抱きついた。
左手にとーしろー右手に花太!
両手に花っ!!幸せっ!!

俺は存分に幸せを味わった。






「…お前良くこんな状況でそんなこと言えるな」

「え?慣れ、ですかね…?」

「俺に慣れろと…」

「えっと、はい。多分その方が良いかと…。多分更紗さん慌てる日番谷隊長の姿が見たいのだと思いますし…」

「……分かった。助言感謝する」


例え腕の中でそんな会話がなされていたとしても俺は気にしない!
2人が仲良くなってくれれば、それだけで俺は幸せだ!!










「はいはーい!!」

「はい、乱ちゃん」


手を挙げて注目を集める乱ちゃんに、機嫌が良い俺も乗ってあげる。




「じゃあ、更紗の一番好きな人って誰なの〜?」


そして発せられたその質問に、一瞬にして場が静まり返った。
仕事をしながらも、こちらの会話に聞き耳を立てていた四番隊ならび十一番隊隊員たちの手が止まったのが分かった。
明らかに俺の答えを待っているのも分かった。


でも、そんなことはどうでも良くて、俺はその質問を考えるので精一杯だった。


俺の、一番、好きな、人…?




「(やっぱここは、山田と日番谷隊長どっちもなんじゃねえの?)」

「(もしかしたら、卯ノ花隊長ってことも…)」

「(僕って言ってくれないかなぁー)」

「「(いや、それはないと思います)」」

「(そんな声を揃えて否定しなくっても…)」



一番好きな人。

そう言われて思い浮かぶのは、あの二人だった。

この俺が素直に尊敬という気持ちを抱ける二人。

うん。それ以外に考えられない。



「一番っていうか、二人いるっていうか…」


あのお二人のうちのどちらかを選ぶなんてことは、俺には出来ない…!!
そう、それは、花太ととーしろーのどちらかを選べないのと同様に!




「「「「(やっぱり山田と日番谷隊長か)」」」」

「好きっていうか、憧れというか…」



考えただけで、顔に熱がこもっていくのが分かる。

ああもうっ恥ずかしいっ。

耐え切れず、俺は顔を両手で覆った。




「(ええええ何その反応!!?)」





第漆話 噂のあの子の好きな人
(敬慕の念はあの人へ)




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