触れてはいけない    [ 48/64 ]

四番隊で用事を済ませた俺は、花太の気配を追って、瀞霊廷の中心から外へと向かって、全速力で駆けていた。
だがしかし、隊舎内でも迷う俺が隊舎外の道を知っているはずもなく、辿り着けないことに苛立っていた。


あぁ、やっぱりあいつら殺したい。


苛々しながらも方向を確かめるために、近くにあった建物の上に登る。



その時だった。


花太の気配に揺らぎが生じた。
確かに俺を呼ぶ気配がする。


躊躇う必要はなかった。

花太の気配がする方へ両手を構える。




「君臨者よ…」


詠唱を破棄しようとも思ったが、あいつらに手加減してやる義理もないと思い直す。



「血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ。蒼火の壁に双蓮を刻む、大火の淵を遠天にて待つ。

破道の七十三番、双蓮蒼火墜」



閃光と共に、見晴らしの良くなった景色を見渡す。

視線を感じて、目を向けるとそこに花太がいた。
どれだけ遠くても、俺が花太をみ間違えるはずがない。

瞬歩で花太のもとへ駆ける。









「花太、無事?」



呆然としていて返事をしてくれなかったので、目視で怪我の有無を調べる。
見たところ、外傷は無いようだ。
そのことに少し溜飲を下げる。




「うん。怪我はしてないみたいだな」

「…え、あ、はい」

「良かったー。花太が怪我してたら、どうしてやろうかと思ってた」

「はははは…」



壁際に座り込んでいた花太を起こしてあげようと、手を差し出したが――





「お、俺らのこと無視してんじゃねぇそ、コラァ!!?」

「そそそそ、そうだっ!人質がどうなってもいいのかっ!」

「うわあ!?」




花太のすぐ隣にいたらしい、誘拐犯が花太を拘束して首筋に刀を当てた。





もう一度言おう。





(俺の)花太のすぐ隣にいたらしい(存在感のないどこぞの能無しの単純馬鹿な)誘拐犯が(俺の可愛い)花太を(むさ苦しい腕で)拘束して(愚直にも)首筋に刀を当て(やがっ)た。




「ふふふ…」

「な、なんだよ」

「ふふふふ…」

「何笑ってやがんだよ!!?」

「あははははははっ!」

「て、テメェ、人質が見えねぇのかっ!?」

「あははは…ははっ。










 てめぇら、今すぐ死ね」








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