四番隊で用事を済ませた俺は、花太の気配を追って、瀞霊廷の中心から外へと向かって、全速力で駆けていた。
だがしかし、隊舎内でも迷う俺が隊舎外の道を知っているはずもなく、辿り着けないことに苛立っていた。
あぁ、やっぱりあいつら殺したい。
苛々しながらも方向を確かめるために、近くにあった建物の上に登る。
その時だった。
花太の気配に揺らぎが生じた。
確かに俺を呼ぶ気配がする。
躊躇う必要はなかった。
花太の気配がする方へ両手を構える。
「君臨者よ…」
詠唱を破棄しようとも思ったが、あいつらに手加減してやる義理もないと思い直す。
「血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ。蒼火の壁に双蓮を刻む、大火の淵を遠天にて待つ。
破道の七十三番、双蓮蒼火墜」
閃光と共に、見晴らしの良くなった景色を見渡す。
視線を感じて、目を向けるとそこに花太がいた。
どれだけ遠くても、俺が花太をみ間違えるはずがない。
瞬歩で花太のもとへ駆ける。
「花太、無事?」
呆然としていて返事をしてくれなかったので、目視で怪我の有無を調べる。
見たところ、外傷は無いようだ。
そのことに少し溜飲を下げる。
「うん。怪我はしてないみたいだな」
「…え、あ、はい」
「良かったー。花太が怪我してたら、どうしてやろうかと思ってた」
「はははは…」
壁際に座り込んでいた花太を起こしてあげようと、手を差し出したが――
「お、俺らのこと無視してんじゃねぇそ、コラァ!!?」
「そそそそ、そうだっ!人質がどうなってもいいのかっ!」
「うわあ!?」
花太のすぐ隣にいたらしい、誘拐犯が花太を拘束して首筋に刀を当てた。
もう一度言おう。
(俺の)花太のすぐ隣にいたらしい(存在感のないどこぞの能無しの単純馬鹿な)誘拐犯が(俺の可愛い)花太を(むさ苦しい腕で)拘束して(愚直にも)首筋に刀を当て(やがっ)た。
「ふふふ…」
「な、なんだよ」
「ふふふふ…」
「何笑ってやがんだよ!!?」
「あははははははっ!」
「て、テメェ、人質が見えねぇのかっ!?」
「あははは…ははっ。
てめぇら、今すぐ死ね」
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