四番隊にて    [ 45/64 ]

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 



詰所の扉を開け放って、まず最初に俺がしたことといえば、
もちろん視界に入った十一番隊の奴らを全員床に沈めることだった。


よし。少し落ち着いたわ、これで。



「おかえりなさい、更紗。直接向かうかと思っていましたよ」

「ただいま、れっちゃん。色々とやることがあるのと、俺の斬魄刀ここに置きっぱなしだったからね」

「珍しいですわね。あんな相手に貴方が刀を抜くなんて」



まぁ、基本的に斬魄刀使わないでも強いからなー俺。
下手に刀抜くと、力加減忘れて甚振れなくなるし。
だから、任務の時ですら帯刀することは滅多にない。

でも、今回は甚振るとかの段階を超えて、




「殺したいからね。ところで、俺が聞きたいのはそんな言葉じゃないって分かってるよな?」

「勿論ですとも。そのことについては、そこにいるお二人が説明してくださるでしょう。ね?」



れっちゃんが脅した先を見れば、ちかと角之助の二人。

あぁなるほど。




「んで、何でお前ら俺の攻撃避けてんの?」

「いや、そりゃお前が攻撃してくっからだろうが!」

「あぁ?お前らがさっさと説明しないからだろ?」

「(そんな間無かった癖に…っ!)」

「おーい更紗ちゃーん。そんなことしてる方が時間のムダだと思うよー」

「ちっ。何だ春水いたのか」

「いたのかって、ここまで連れて来てあげたの誰だと思ってんのさ!?」

「あぁもう、うっせえなあ」

「…卯ノ花さん、どうにかしてくださいよ」



春水の野郎。れっちゃんに協力求めるたぁ、せこい事してくれんじゃねぇかよ。
ただでさえ、怒り気味で恐ぇつーのに。




「更紗」



静かに名前を呼ばれてしまえば、それで終わりだった。




「…おら、お前らさっさと説明しろ。早くしねぇとテメェらも床に沈めっぞ」

「上等じゃねぇか!受けて立つ!」

「斑目三席。この四番隊で暴れるとおっしゃるなら、私もそれなりの処置を考えないといけなくなるのですが」

「……スイマセンデシタ」



無敵の微笑みを向けられてしまえば、さすがの角之助も黙らざるを得なかったようだ。

やーい。怒られてやんの。






二人の説明をまとめるとこうだ。

まず、治療中だった十一番隊の奴らが目覚める。
んで、それをやった俺を憎む。
普段の俺の行動から、花太が俺のお気に入りだと知り、安直にも(むしろ愚直にも)花太を人質に取れば俺は何も出来なくなり、言うことを聞くだろうと考える。
そして、他隊へお使いに出ていた花太と四番隊隊員を襲撃し、またもや愚直にも隊員には軽傷を負わせ、花太は攫った、と。


しかも、わざわざ俺が出かけてるのを見計らって。


正々堂々と向かって来られない屑共が。





「ふーん」

「ふーん。…って、せっかく説明してやったんだから、もっとリアクションよこせよ」

「うっせぇ、ハゲ」

「は、はは、ハゲって、おまっ」

「黙ってろ」



じゃないと、うっかり角之助まで殺してしまいそうだ。
殺気を込めて、睨みつけると角之助はおとなしくなった。




「なぁ、烈ちゃん。殺してきてもいい?」

「駄目です。残念ながら、人数分のベッドの空きがありますので」



それは、入院する程度は許すってことだよな?
というか、それくらいは許して貰わないと俺も我慢出来ないんだけれど。

でも、やっぱ息の根止めてきたいなー。




「…駄目?」

「あの子も望みませんよ」

「分かった。九分九厘殺しで我慢しとく」




本当は、息の根を止めて、塵すら残らないように分解して消してやりたかったのだが…
花太を出されてしまったら、引き下がるしかなかった。



「…いや、それほぼ死んでんじゃねえかよ」

「いい加減黙らねぇと、口ん中に布詰めっぞ」

「んんんんーっ!!」

「いや、もう半分以上詰めてるよね、それ」



面倒なので、もうこいつらに構わないことにした。

ぎゃーぎゃー騒ぐ奴らを無視して、一度自室変わりにしている部屋へと戻る。
出ていったまま片付いていない部屋を見て、花太がいないことを改めて実感する。

一箇所だけ綺麗に整えられた場所から斬魄刀を掴み、それ以外にも目当ての物を棚から取り出して懐へと仕舞う。

準備は完了だ。








「さてと、潰しに行きますか」




俺の大切な癒やしを怯えさせた罪は重いことを臓腑に擦り込んでやらないとね。




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