「じゃあちょっと行ってくるわ」
「待って待ってっ!!」
進もうとしたが、腰に強い力を感じて引き戻された。見れば春水が腕を回す形で俺を止めようとしていた。
うざい。
「離せ」
「いや、さすがにちょっとまずいかなって」
「はなせ」
「このままこのまま行かせたら俺たちまで始末書を書かせられそうだし」
「・・・」
そう言われるとそうかもしれないとも思ったが、こいつらが迷惑被ろうが俺は気にしない。
というか、さっき存分に俺は迷惑をかけられたしそのお返しと思えばむしろ良い。
そう思っているのが分かったのか、更に強い力で引き止められた。
果てしなくうざい。
「嫌だからね。瀞霊挺半壊とかの責任取るの」
「あぁ?無視しろ」
「まず半壊を否定しようよ」
「分かった。全壊でいく」
「うん。それ、全然分かってないから」
「うっせえな。とにかく離せよ」
もう一度離せと言うのも面倒なので、睨みつけると、勢い良く春水が離れていった。
四番隊隊員、藤城#NAME2##。癒やしが絡むと、ついつい本気で殺気を放ってしまうおちゃめさんです。
よし。これで口煩い奴も黙らせたし、さっさと殺りに行くか。
「じゃあな」
「更紗」
「何?十四郎も俺を止めようっての?」
「いや、どうせ道に迷うのだから、享楽を連れて行った方が良いと言おうと思っただけだ」
今度こそと、外へ駆け出そうとしたら、今度は十四郎から声をかけられた。
止めるのかと思いきや、思わぬ提案に少し考える。
自慢じゃないけれど、何処にいたって花太の霊圧は探知できる。
だけれど冷静に考えて、まずは事件が起こった四番隊に向かった方が良いだろう。
色々と。
そう、色々と。
結論が出た俺は、春水の襟を掴んで引き摺る。
「…あぁ、それもそうだな。行くぞ春水」
「え、ちょっと、浮竹はっ?」
「俺は――」
「十四郎は、さっき薬投与したからしばらく安静。動いたら殺す」
「――だそうだ」
「ずるいねぇ。自分だけ安全なとこにいちゃってまあ…」
ただでさえ今日は稽古をつけやがって、俺の計画を台無しにしやがったんだから、ここは言うことを聞いて貰わないと困る。
それに道案内は春水一人で十分だし。
「ほら、ぐだぐだ言ってねぇでとっとと行くぞ。ついて来なかったら、本気で全壊すっぞ」
「それだけは止めて!」
「じゃあ、十四郎はしっかり寝とけよ」
「少しは手加減してやれよ」
「出来る自信ないな」
「享楽…生きて帰って来いよ」
「縁起でもないことさらっと言わないでくれる…?」
ようやく着いてくる気になったのか、ただ単に諦めたのか、春水は俺の手から抜け出して前を歩きだした。
俺もしっかりと十四郎が布団に入るのを見届けてから、四番隊へ急いだ。
第陸話 噂のあの子の逆鱗
(愚者に制裁を)
「ちょっと待って。ここは春水の後をついていったとかそういう表現になる所じゃないの!?」
「はぁ?俺が何でお前に付き従うみたいな表現にならないといけないんだよ」
「道案内してあげてるんだけど…」
「うっせえな。とっとと進めよ」
「(本当に我儘なんだから…)」
「何か言ったか」
「なんでも無いよ。そして、更紗ちゃんそっちじゃないからね」
「・・・」
ムカついたから、とりあえず蹴っておいた。
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