「隊長が…」
「美しい…」
「…弓親。いい加減帰ってこい」
「うるさいよ一角。はぁ…美しい…」
「弓親テメッうるさいって何だ!うるさいって!?横ではぁはぁはぁはぁ、お前のため息の方がうるせえっつーの!!」
「ちょっと!人を変態みたいに言わないでくれる?うるさいからうるさいって言ってるんでしょ。静かにしてよ。僕今幸せに浸ってるんだから」
「なっ、テメェ…」
うん。
「「お前ら二人ともうっせぇんだよ。ちょっと黙ってろ」」
「「…はい」」
さっきからずーっと思ってたけど(敢えて無視してたけど)、
なんだこの外野は。
外野のくせに個性が濃いーなオイ。
いい加減イライラしてきてそれにキレたら、更木とやらと声が重なってしまった。
(面白いことに口の悪さまで被った)
え、というかちょっと待て。
この外野…
「すっげぇー!マジでつるつるだー!!何これ何これ!」
「ただのハゲだよ。更紗さん」
「そっか。ハゲか〜」
「ハゲじゃねぇっ!!」
目の前にハゲがいたら撫でるしかない。
ハゲじゃない方も言った通り、これはハゲだ。
間違いなくハゲだ。
うわ〜マジこの触り心地おもしれ〜。
つるつる。
滅多にできない経験を堪能していた俺は、もう1人の方が名前で呼んでいたことに気付かなかった。
気づいていたらまだちょっとは身構え出来ていたはずだ。
…たぶん。
「それより一角なんて放っておいて、」
「ん?」
満足がいっていい加減手を離した瞬間、がしっと両手を握りしめられた。
目の前にハゲじゃない方がいる。
え、何かお前顔近くないか?
ていうか何顔赤らめてんだよ。
「更紗さんっ!」
「!」
「噂には聞いていたけれど、こんなに美しいなんてっ!」
「え、あ、」
「是非十一番隊に来てください!」
「は?」
「貴方みたいな人こそ十一番隊にふさわしいっ!あんな美しさも何もない、むさくるしい隊には貴方のような人が―――」
「いやいやいや、ちょっと待て。仮にも同じ対の仲間がいるってのに」
暴走する目の前のまつげに思わず、この俺が真面目に常識を説いてしまった。
恐るべし暴走まつげ。
とりあえず、一呼吸する。
落ち着けば大丈夫だ。
だんだんとこいつのペースにも慣れきたし。
「…とりあえず、どっちかお前の副官か?」
「違う」
一緒についてきたのだし、と思って更木とやらに聞いてみたのだが、答えは否だった。
この2人の上に立つ奴で、そんでもってこの眼帯の下につく奴?
なんか個性強そう…。
「草鹿副隊長は今日は非番なので、お休みです!」
「あ、そう」
男かな?女かな?
十一番隊だから男の確立の方が高いよな…。
会いたくないな。うん。
「僕は十一番隊第五席、綾瀬川弓親です!」
「…五席?」
「どうかしました?」
本人の申告に引っかかって、思わず疑問の声をあげてしまった。
どうみたって五席って感じじゃないのにな〜。
まぁ偽ってるって感じじゃないし、仮に偽ってたとしても俺には関係ないか。
「いや、別に」
「で、そっちのハゲは?」
「誰がハゲ―――」
「こっちは三席の斑目一角です!」
青筋を立てるハゲを押しつぶして、きらきらとした目で紹介してくるまつげ。
あぁ〜なんというか、
「犬っぽいなお前」
「へ?」
うん。
犬っぽいと思えば可愛いと思えないこともない。
「弓親…ゆみちか…。じゃあ、ちかで決定」
「そっちのハゲは一角だし、角之助でいいだろ?」
「一角だしっていう意味が分かんねぇよ!」
「あぁ…。細かいとこ気にしてるからハゲるんだよ」
「なんだよそのかわいそうなものを見るような目つきはっ!!これはスキンヘッドだ!」
「ハゲの人はみんなそう言うよね」
「ちか、いいこと言うね〜」
そのまま3人でギャーギャー騒いでいたら、とうとう奴が痺れを切らしたらしい。
「おい。いい加減にしろよテメェら」
「あぁ?わざとに決まってんだろ。わざとに」
「いい度胸だな。俺と戦え」
「強引に話戻したなぁ〜…」
「戦え」
これ以上話を延ばしても無駄なようだ。
ざっと見たところ四番隊の面々は、烈ちゃんたちを残してほとんどが避難している。
そして、隙間から伺うような視線がちらほらと。
…俺は人身御供ってわけか?
ったくマジで面倒くせぇーっ!
分かってはいたが、面倒臭さが上がった。
「戦うのか?どうなんだ?」
「はぁ…ものすご〜く面倒臭いけど、仕様がないし受けてやるよ」
たまに外に出ると面倒なことがおきる。
これだから外に出たくないんだよ。
ひきこもり生活に戻ろうかなー…。
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