叫び過ぎやしないか    [ 24/64 ]

「改めて、藤城更紗でっす。適当によろしく」

「あ、阿散井恋次です」


皆腰を落ち着けたところで改めて、上司の前でその友人を怒鳴ってしまい顔面蒼白になっていた阿散井恋次と名乗り合った。

阿散井は、名前だけは分かったといえ今だに良く分からない存在である俺に、戸惑いを隠せないようだ。



「それで、えっと…」


名乗った後、阿散井は、聞きたいがどう聞いていいのか、というように言葉を詰まらせていた。

その姿はかなり挙動不振である。

多分この様子じゃあ、当分話は切り出せないだろうと思ったので、こちらから話題を振ってやった。



「ん、白坊との仲?」

「白坊って、まさか…!」


まず根本的なところに食い付かれた。
阿散井は有り得ないものを見るかのように俺を見つめ、その上さりげなく白坊を横目で見ていた。

元教え子の不機嫌指数が上がる。

残念ながら、それに阿散井は気付いていなかった。
ただ、俺はそれを教える気はない。

なんせ2人の反応を確信しての愉快犯だからだ。

にやにやと笑いながら、白坊の頭をぽんぽんと撫でる。



「そう、白坊。白哉坊やだから白坊。かっわいいだろ?」

「い、いや、あの、それは…」


同意を求めれば、楽しそうな俺と今にも斬り掛かりそうな殺気を滲ませる上司との板挟みで、顔面蒼白を通り越して死にそうな顔になった。
そんな姿に堪えきれなくて噴き出した。


「あっはっはっはっ。おっかしい〜!」

「…更紗」

「はいはい。本当に白坊は矜恃が高くあられますからねぇ。ここらへんでやめといてあげますよ」

「・・・」



後ろから手を回し、宥めるように頭を撫でてやると、複雑そうな顔をされた。

その顔にはありありと、私はもう子どもじゃないのだが…、と書いてあった。

そんな姿に噴き出しそうになるのを堪えながら、やっぱりかわいいなと思ったり。


「ああぁ〜!!」



白坊をからかって遊んでいたせいで、存在を忘れてしまっていた阿散井が、いきなり叫び声をあげた。

――しかも俺を指差して。


ったく、人を指差すなって教わらなかったのかよ。
その指へし折ってやろうか。



「何?どうしたんだよ?」

「いや、あ、あんたってあの藤城更紗なんすか?!」

「…またそれか」


叫ぶぐらいだから、何か重要なことでもあるのかと思えば、また噂の話らしい。

今度はどんなやつなのかねぇ。

阿散井が聞いた噂が驚くほどの内容だったのか、はたまたただ単に、その噂の人物が自分の隊長と親しいからの驚きか。

どちらにせよ、面倒臭いことには違いない。

面倒臭いから噂されるのも放っておいたが、それで騒がれるのも面倒臭いと思い始めていた。

自分の噂を聞くだけなら別に面白くていいのだが…。




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