新しい玩具    [ 23/64 ]

驚いて手を振り上げたそのままの状態で固まっていたら、叫び声の主が酷く慌てた様子で駆け寄ってきて俺の手を掴んだ。
それを勢い良く下げさせられ、直立の姿勢を取らされた。





「すんませんでしたっ!!ほらお前も朽木隊長に謝っとけ!!」

「すみません?でした…?」


いまいち状況が飲み込めず、そのまま手を降ろされて、頭を押さえられて無理矢理下げられさせられた。

思わず成り行きで、訳も分からぬまま謝罪が口を突いて出てきた。



…ん?



そこでふとまともな疑問が頭をよぎった。


何で俺が謝らなきゃなんねぇんだ?



頭を下げた状態で悶々と悩む俺。
そんな俺より先に立ち直ったのは白坊だった。





「…恋次。私は別に気にしておらぬ」

「はぁ?」

「更紗は私の…、友人だ」

「……え?」

「いや、ちょっと待て。その友人の前にある間は何だ」



白坊の言葉に思わずつっこんでしまった。
そのおかげでまともな思考回路も目覚めてきて――







「白坊。誰だ、これ?」




さっきとは立場が入れ替わって固まっている横の人物を指差して、今更な質問をした。





「阿散井恋次。副隊長だ」


白坊の返答にほうと一つ返事して、じろじろと相手を観察する。

髪はなかなか珍しく紅色。
束ねているけど、降ろしたら結構な長さがありそうだな。
見た目だけで言えば…十六、七歳と言った所かな。
(こいつも身長でかいけど)
霊圧の感じは悪くない。
卍解には至ってないけど、磨けば光るってやつか。

ふうん。

白坊の下にはこんな奴がいるのか。
安心。安心。
やっぱり可愛い我が子の周りは気になるからなぁ。

次に顔を見ようと前に回り下から覗き込むと、目が合った。
だんだんと相手の顔に赤みが増していくのがはっきりと見て取れた。
阿散井恋次とやらは、魚のように意味もなく口をぱくぱくと開閉させている。


こいつもかよ…。


思わずなげやりな気持ちが湧いてくる。

こいつが慣れるまでは気にしないことにしよう、となげやりながら考えたそんな時、とある1点に目が止まった。

おそらく初めて彼に出会った人は必ず聞きたくなるであろうことを、俺も御多分に洩れず口に出した。










「なぁ、その眉毛って進化した姿なのか?」

と。




数瞬の沈黙がその場におちる。


2人の反応は分かりやすかった。
それの人柄を如実に表しているといった感じだ。

白坊は、こいつは絶対そのことを聞くと思ったと暗に語る溜息をつき、言われた本人は――




「んな訳あるかっ!良く見やがれ!入れ墨だ!入れ墨!!い、れ、ず、み!!!」



――当然、思いっきし怒鳴ってきた。

よほど今までその話題でからかわれたのか、かなりの念の押しようだ。
あの眉毛――改め入れ墨が気に入っているのか、すごい剣幕だった。
おそらく上司の目の前であることも忘れているに違いない。


ふむと一つ頷いた俺は、赤髪少年をきれいに無視して白坊に向き直った。



「面白いな、これ」

「否定は出来んな」

「てことは、いつもこんな感じか」

「そういうことだ」



白坊が言うくらいなのだから、かなりのものだろう。

冷静とは程遠い性格で、しかも思ってることが顔に出やすいときている。



これはまた白坊とは対照的な副官だこと。


くつくつと喉の奥で笑い声を上げれば、新しいおもちゃを見つけたような表情をしていたなだろうか。
白坊は呆れたように溜息をついた。




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