「はあ…。やはり知らなかったのか…」
その言葉で白坊が冗談を会得したのではなく、本当のことを言っているんだと確信して―――
「すごいじゃねえかっ!!何だよ〜隊長になったらなったで連絡くれりゃあ良かったのに!お前出来良かったしいつかはなると思ってたけど、予想より早いじゃん!」
喜びそして白坊に抱きついた。
今日は良いことがいっぱいあった(主にとーしろー)おかげか、いつもより上機嫌な俺。
飛び付いた状態で、昔よくやったように、自分の興奮の赴くままに白坊の髪をぐりぐりとかき乱した。(もちろん邪魔な髪留めは外した)
何気に手触りは昔のまんまでさらさらだった。
「…更紗は約束を覚えているか?」
俺の行動に慣れている白坊は好き勝手されるがままといった状態で、唐突にそう切り出した。
約束?
約束って………
ああ!アレのことか!
『もし隊長になれたら名前で呼んでやる』ってやつな。
白坊ったら、白坊っていう呼び方が嫌で嫌で仕方がなかったみたいだからねぇ。(俺は気に入ってんのに)
でも確かあれには交換条件を出した気がするんだけどなぁ〜。
「俺が覚えてるんだから、当然白坊も覚えてるよなぁ?俺が出した交換条件」
「・・・」
気まずそうに顔を反らす白坊。
その苦々しい表情を浮かべた顔には、『…そっちの約束も覚えていたのか』と、ありありと書いてある。
そりゃそうだろうなぁ。
なんせ、約束破ってんだから。
「白坊。ちょいと立ちな」
「それは…」
「いいから立て。もうバレてんだ」
渋る白坊も笑顔で凄めば、立ってくれた。
眉間に皺を寄せて佇む白坊を見上げる。
、 、 、 、
そう。見上げる。
「白坊。俺言ったよなぁ?“名前呼んでやってもいいけど条件がある”って」
「………あれは理不尽だ」
「理不尽でも何でも約束は約束だっつーの」
つかつかと歩いて、愚痴を零している白坊との距離を縮めた。
「俺より身長デカくなんなって言ったじゃねぇか!なのにすくすくすくすく育ちやがって、嫌味かこのヤローっ!!」
叫ぶだけ叫んで、渾身のチョップをお見舞いしてやった。
避けられるのは面倒だから少し本気で。(マジでやったら脳天割りになるから、そこんとこを気を付けて)
打たれた白坊は一見無表情だが、痛みを表に出すまいといった顔だ、これは。
そんな表情で、打たれた額に手をやっていた。
バレた時の俺の反応を大方予測していたのか、あまり驚いてはいなかった。
まあ昔良くやったし、そんな白坊は置いておいて、
白坊の身長はだいぶ伸びていた。
多分、百八十はある。
俺よりも結構高い。
まったく!自分よりちみっこかった奴に身長抜かされるのが、一番腹立つ!
人を見下すのは好きだけど、見下ろされるのは大嫌いなんだよ!
そんな訳で(理不尽で何が悪い)、もう一発お見舞いしてやろうと手を振りかざしたとき――
「何やってんだアンタはーーっ!!!?」
怒鳴り慣れている感じがする驚愕に染まった叫び声と、ばらばらと書類やら何やらが落ちていった音が、静まり返っている部屋に響いた。
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