「何って、しいて言えば餌付け?」
「テメェそこになおれ」
「なおってるよ〜?十分に」
餌付けって何だ。餌付けって。
俺は野生動物か何かか!?
青筋をたてながら殺気を放って言ってみたが、全く気にした様子はなかった。
普通の死神なら冷や汗ぐらい出るものだが…、やっぱコイツは普通には当てはまらないか。
「ほら、俺のことはどうでもいいから、あ〜ん」
「だから止めろ!」
「何だよ。とーしろーは俺のこと嫌いなのか?」
「〜っ」
藤城は俺より身長が高いくせに、わざわざ下から覗き見るかのように聞いてきた。
…コイツ絶対計算してやってるだろ!?
そんなことはわかっているんだが、むかつくことに、反応してしまう。
何で無駄に顔だけは良いんだよ、こいつ!
少し、その良さを性格に回せ!
「とーしろー顔真っ赤ぁ」
「うるせぇ!ほらさっさと寄越せ!自分で食べる!」
「えぇ〜!俺の楽しみ奪う気かよ!!」
「勝手に人で楽しむな」
「ヤダ。俺の手から食べるか口移しどっちがいい?」
何だその選択肢はっ!?
どっちみち俺が恥ずかしいんじゃねぇか!
「どっ、どっちも嫌に決まってんだろっ!!」
「選ばなかった場合、問答無用で口移しに「わかった食べればいいんだろ!?」」
藤城の台詞を遮ってやけくそ気味に叫べば、嬉しそうな笑顔が返ってきた。
…くそっ……松本の言った通り、笑ったら5割増じゃねぇか…。
調子が狂う…。
「うん!はいっあ〜ん」
「あ、あぁ」
腹を括って、口に放り込まれた菓子を食べる。
「おいしい?」
「…まあまあだな」
照れくさくてわざと冷静に返したというのに、目の前の男は嬉しそうに笑った。
俺に菓子を食べさせることがそんなに楽しいかと聞きたくなるような、無邪気な笑顔だった。
その顔は好きだと思ったところで、そんな自分を誤魔化すために口の中の菓子に集中する。
……意外にコレうまいな。
顔には出さず心の中でひっそりとそう思った。
(美味いが、顔が熱い。)
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