山のような    [ 15/64 ]

「で、更紗さんはどうするんですか?何なら六番隊まで案内しましょうか?私と隊長で」

「俺もかよ」



乱ちゃんのノリに律儀にツッコミを入れる、とーしろー。
そんな親しそうなやり取りにいいなーと思ったが、それは一先ず置いといて(癒されるんだけども)


さてどうしようか。
六番隊に書類は届けに行かなくちゃいけないんだけど、とーしろーともっといたいし。
でも早く届けて帰らなきゃれっちゃん恐いし。
迷子になってるのは予想されてると思うけど、そろそろ移動しないとれっちゃんの予想時間でいったら時間切れになっちゃうんだよな。




「松本。お前、自分がどれだけ書類を溜め込んでるのかわかってんだろうな?」

「えぇ〜まだアレ減ってなかったんですかぁ?」

「勝手に減るわけねぇだろ!」

「この間は勝手に減りましたよ?」

「あれは他の奴使っただろーが」






それだ!!







「助けてもらったお礼に俺が乱ちゃんに使われてやるよ」


いい案を思いついたと言わんばかりの笑顔で、横で繰り広げられていた会話に入り込んだ。

『迷子になってた所を助けてもらったお礼に、十番隊の書類を手伝ってました!』
よし!これでれっちゃんの言い訳もばっちりだし、とーしろーともっといられるなっ!!

普段は、書類仕事なんて面倒臭いことは御免だが、とーしろーと一緒にいるためならなんのその!



「えっ?ほんと?ラッキー♪ありがとー」

「…勝手にしろ」



乱ちゃんは予想通り諸手を挙げて抱きついてきた。

そして意外なことに、とーしろーには書類をさっさと届けろとか言われると思っていたのだけど、どうやら結構切迫した状態らしく止められはしなかった。

ただ――






「だがお前、そういうことは量を見てから言った方がよかったな」




忠告というかなんというか、呆れられた。
とーしろーが呆れた顔で指し示した先を見てみると、副隊長が使うはずの机の上…ではなく、その隣の机の上に(きっと自分の机が汚かったら許せないタイプなんだろう)でっかい山――本来の目的が山を作るためだと言われても信じれるような書類の山が、四つほど堆く積み上げられていた。


これは……かなり溜め込んだな…
面倒臭いのはわかるけど。



これくらいだと三時間ちょいはかかるな…。






「別にさっきの言葉なかったことにしてやってもいいぞ」


俺が書類の山を見て黙りこくったので、勘違いをしたのか、とーしろーは少しぶっきらぼうにそう言った。

思わずその可愛らしい優しさに笑みが零れた。

そしたら、



「〜っ///」

「……藤城って笑うと綺麗五割増って感じよね」

「・・・」



とーしろーは俺の笑顔を初めて見たせいか、顔を真っ赤にして固まってしまった。
乱ちゃんは一瞬固まったが少し余裕があるようで、しみじみと呟いた。

はぁ…慣れてもらうしかないか。

阿近に言わせりゃ、俺の笑顔は免疫がない奴にとっては猛毒並らしい。
耐性が付けば、直視出来るとかなんとか。

一切合切認めたくはないのだけれど。




「はぁ…」


後、他に言いたいことは、俺がとーしろーに飛び付いた時、簡単に言えば俺という不法侵入者登場時から、ちらちらとこちらを伺っているその他の死神が、俺を見て顔を真っ赤に染めて固まってようが、そのせいで書類整理が滞ってようが、俺のせいじゃない!ということだ。



「とーしろー」

「だ、抱きつくなっ。やるならさっさと書類やれっ」



いや、でも、とーしろーの反応可愛いし、慣れなくてもそれはそれで良しっ。


真っ赤になってそっぽを向くとーしろーに俺は悶えそうになった。(というか悶えた)




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