「……おい」
不機嫌な声がぽつり。
発信源は言わずもがな少年である。
「そんな噂はどうでもいい。俺が知りたいのは、何で、その噂の奴がここにいるか、だ」
「俺が知りたいのは少年の名前なんだけど?」
結局怒られちゃった。
なんて思いながらも、負けずに少年の真似をして質問した。
「はあ………説明したら教えてやる」
「ん〜と、書類届けてって言われて六番隊に向かったはずが『ここは何処?私は誰?』状態に。どうしよっかな〜って悩んでる時に少年が現われて、精神的に疲れていた俺は神の思し召しと思い、癒しを求めて少年に抱きついたわけ。以上説明終了!
で、少年の名前は?」
俺は、少年の名前が知れるならめんどくさい説明もなんのその、さっきまで渋っていたのが嘘のようにちゃんと説明した。
俺の変わり身の早さにさすがの少年も怒る気力を失ったのか、ため息をつかれた。
「四番隊から六番隊行くのにどこをどう間違えたらここにつくんだ…」
「更紗って方向音痴なのねぇ」
「ちなみにここどこ?」
「・・・十番隊だ」
少年の言葉からすると、どうやら六番隊は見当違いの所にあるらしい。
というか、十番隊の隊長が知らぬ間に変わってた事実。
まあ今はそんなことより――
「ちゃんと説明したんだから、早く少年の名前教えてよ!」
今は六番隊なんかよりそっちの方が大事なんだぞと、少年に詰め寄れば、また溜息をつかれてしまった。
幸せ逃げるぞ。
「十番隊隊長、日番谷冬師郎だ。俺が言うのも何だが各隊長の名前と顔くらいは覚えとけ」
「えぇ〜、めんどくさい。六人ぐらいはちゃんと知ってたもん」
「お前なぁ…」
「いいのいいの。こうやって気に入った人だけ名前知っていればいいんだから」
「あっ隊長照れてる」
「…うるせえ」
俺の遠回しな告白もどきに照れて、乱ちゃんにからかわれた少年。
かわいいかわいいかわいい…っ!
花太とはまた違った可愛さがあるっ!
花太は天然だから、こういうこと言っても素直にお礼返されちゃうんだよなー。
いや、それも可愛いんだけどさ。
花太ならなんだって可愛いんだけどさ!
日番谷冬師郎っていうのかぁ〜
「じゃあ、とーしろー」
「…テメェ呼び捨てとはいい度胸だな」
「呼び捨てじゃない。俺は冬師郎じゃなくて、とーしろーって呼んだもん」
これも列記としたあだ名なんだ!と胸を張って言えば、渋々了承してくれた。
(というか何を言っても無駄だとわかったんだろう)
第二の癒しはとーしろーで決定!
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