『よかったじゃねェか』
(うん…。でも、俺だけなんかずるい気がする…)
見えないのは不便なことこの上ないのだけれど、見えたら見えたで、ずるしている気になってくるから、素直に喜べない自分がいた。
俺はイレギュラーな存在のくせして、恵まれてるよな…。
まず1つ目は、こっちに来てすぐに黒の教団に行けたこと。
あそこでユウに出会っていなければ、路頭に迷っていたかもしれないし。
2つ目は、黒燿が俺のイノセンスなこと。
頭はいいし、話相手にはなってくれるし、優しいし、なにより強いし。
こういうのは俺みたいにイレギュラーな奴じゃなくて、主人公が持つのにふさわしい気がする。
3つ目は、イノセンスを2つ持てたこと。
そして4つ目が今発覚した“コレ”だ。
アレンはアクマになった育て親――マナに付けられた呪いというリスクと苦しみを対価にしているから、アクマが見える目を持っているのだ。
だが、俺はどうだろう。
全く苦しみもリスクもなしで手に入れてしまった。
世の中は、某錬金術師の『等価交換』や、某不思議なお店の美人店長の『物事には必ず代価が必要なの』とか言ってる通りだと思う。
つくづく何もかもがアンフェア。
・・・
とかなんとか言っても、もう既に与えられてしまったものは返すことは出来ないから、どうしようもないことなんだけどさ。
さすがに目玉をくりぬく勇気はないし…
『そんなに気になるんなら、見合うだけのことをすればいいだろ』
「う、ん……そうだよね」
いつも思うけど黒燿は欲しい言葉をくれる。
人生経験の差なのかな?
まあそんなことは置いといて、とりあえず
「頑張ろ!」
漫画通り行けば、もうすぐ忙しくなるし出来るだけのことはしよ!
俺は気合いを入れて、そう心に刻み直したのだった。
(※ちなみにこの時、黒燿と会話しながら走りながら、次々と出現するアクマを瞬殺していくという素晴らしく見合った技をなしていることに世羅は気付いていなかった)
「ふう…。あらかた片付いたかな?」
数こそ多かったもののLv.1ばかりだったので、全部片付けるのにそんなに時間はかからなかった。
周りを見渡すと、アクマが破壊した建物の残骸だけが残っていた。
漫画でラビがコムイさんが弁償してくれるって言ってたけど…お金、大丈夫なのかな?
出来るだけ壊さないように注意したけど…向こうは容赦無しだったし…
『別に気にしなくていいだろ。んなこと』
(でも…)
今まで一人で暮らしていたせいか、お金は出来るだけ節約するものだという考えが身に染みているわけで…
…って何だか自分で言ってて悲しくなってきちゃった…
これって貧乏性なのかな…?
「さっ、さ〜てとっ、ラビとアレンと合流しなきゃねっ!」
貧乏性と認めるのが嫌だったから、独り言なのにわざとらしく話題を逸らして、白翼を出しラビとアレンのもとへ向かうべく飛び立った。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
ちなみに世羅が黒燿と会話しながらアクマを倒している時、ラビとアレンの2人はと言うと―――
「アレン!勝負するさ!」
「何をですか?」
「負けた方は今日一日世羅に触らない!」
「…いいでしょう。望むところです!!」
「ちなみに俺、今5体目さっ!」
「僕もですっ!」
――とかいう会話がされていたとかなんとか。
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