通信が切れたら、出てきた時と同じくひらひらと飛んで、紅燐のグリップ部分へと戻った。
『けっ気にくわねぇ奴』
そんな黒燿に苦笑する。
(黒燿は毛嫌いしてるだけじゃないの?)
『うるせ』
そこで黒燿は気持ちを入れ替えるように一呼吸置いて、少し真面目な口調で
『それより、いいのか?アイツの仲間ってことは敵なんだろ?』
そう聞いてきた。
絶対聞かれると思った。
だから別に返答に困ることなく答えられた。
(そうなんだけど今更って感じだし)
本当に今更。
ティキの時にも考えたけど、アレンやラビ達とも仲良くなりたいし、ティキやロードとも仲良くなりたい。
虫が良すぎる話だとは思うけど、これが俺の本音。
多分、傍観者という立場でこの漫画を読んでいたから誰も嫌いになれないんだよなぁ。
この我儘のせいで多分困ることが起きるかもしれないけど、嫌いにはなれないから思いっきり困ることにしよう!
『なんでそこに考えがいきつくんだ…』
(えっ、何かおかしい?)
心底呆れたように(イメージするなら額を抱えている感じ)言う黒燿に首を傾げる。
いたって真剣に考えたことなんだけど?
『いや…なんつーかお前らしいな』
(えっと…誉められてるの?)
『……まあ、お前なら多分大丈夫だろうし』
(え、何か言った?)
くすくす笑いながら言う黒燿にすごく複雑な気分になる。
悪くは言われてないと思うんだけど、誉められてるとはまたちょっと違うような…
というか、最後に言ったの聞き取れなかったんだけど。
『ほら、大通りに出るから気を引き締めとけよ』
巧妙に話を逸らされてしまった。
勝手に誉められたんだと思っておこう。
そう自己完結して、気持ちを入れ替えて黒燿に言われたように気を引き締めた。
『紅燐を使うのか?』
(まだ黒燿本調子じゃないでしょ?それにLv.1ぐらいだったら紅燐で十分!)
『やばくなったら俺を使えよ。少しくらいなら許す』
(OK)
いつでも紅燐が撃てるように身構えながら大通りへと踏み出した。
と同時に目が点になった。
「えっ…?」
えっと…本日2度目の驚き。
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