ハイテク蝶々    [ 72/159 ]

「えっ、ちょっ、どうなって」

《それは企業秘密、ってことで》



さっきよりもパニクりながら聞くと、茶化されてしまった。





「何それ……」

『教えられないってことだろ』



いや、教えられないって意味なことはさすがの俺も分かるから。
俺そこまで馬鹿じゃないから。

会話が途切れたので一つ深呼吸をする。少し頭が冷えてきた。

まあ黒燿の言う通り、教えられないってことはティキの能力に関係してるってことかな?

可笑しなことは全てティキの能力ということにしようと決めて、今更ながらの質問をした。




「で、コレ何?」

《俺と世羅専用通信》





「へ?」


即答されたためよくわからなくて間の抜けた声を上げてしまった。
そんな俺にティキはもう一度言った。



《俺と世羅専用通信》


いや一言一句違わず返されても、とりあえずやっぱ通信機だっ――『よし、世羅。燃やしてしまえ』




……黒燿…


(諦めて…)


黒燿がティキのこと嫌ってるのはわかってるけど、こんな綺麗な蝶々燃やすなんて出来ないし。
蝶々に罪は無いと思う。




『…チッ』




ふてくれる黒燿はこの際置いといて、






「俺、ティキさん側とは敵だと思ってたんデスケド?」



片言なのは戸惑いの表れだとでも思って…!!


まぁそんな俺の心情を知ってか知らずか至極明るく返されてしまった。





《気にしない気にしない》



そこは気にしろよ……


「もういい…」

『おい世羅…!!』


がくりと力が抜けた。

ごめん黒燿。
いやまぁ思えばたかが通信機ぐらい別にいいや。

そんな感じで俺も気にしないことにした。


何だかんだいって、俺ティキも好きなキャラだったからこうやって仲良く話せるのは嬉しい。(出会いは置いといてというかなかったことにしといて)

まだ確認してないけど、盗聴とか盗撮とか居場所がばれるとか、皆に迷惑がかからなければいいとも思う。


「これ通信だけなんでしょ?」


まぁ本当にしてた場合、わざわざ言うわけないか。
なんて、言った後に気付いた。


《盗聴とかは出来ないから安心して。俺もそこまで卑怯じゃないし》



しばらく考えてティキを信じることにした。
うん。そこまでティキが卑怯だとは思わないし。

それに、教団側の俺が言うのもなんだけど、盗聴なんかしなくても強いし。



《あっそれと、他の奴に見つかったらさすがにマズイから、近くに教団側の人間がいたら通信が繋がんないようになってる》


ハイテク…!?


思わずそう思ってしまった。こっちの世界って文明が進んでんだか進んでないんだかいまいちよくわかんないんだよなぁ…



「ならいっか」

『いいのかよ!』


予想通り黒燿に反発された。

うっわぁ〜すごい嫌そう…何もそこまで毛嫌いしなくても…



(だってティキと仲良くなりたかったし)

『あんなことされといてか』


痛い所ついてくるなぁ…

せっかく頭をよぎらなくなったのにまた蘇ってきた思い出に、うっと言葉を詰まらせるけど、







(…過度のスキンシップは止めるように言えばいいじゃん)



多分ティキもわかってくれるって!
それに通信だけだから会わないかもしんないし。


なんて考えていたら黒燿は怒ったような焦ったような声をあげた。


『お前あれは…っ!!』

(はいはい。いいじゃん敵と仲良くするんじゃなくてティキという人と仲良くするんだから)


そんな黒燿を無視して、ティキに向き直る。



「そういえば何か用?」

《ん?》


気の抜けた声で返されて脱力する。


「いや『ん?』じゃなくて、わざわざ通信してきたんだから何かあったの?」


用もないのにかけてこないよね?
ティキ忙しいはずだし。


だから重大な用事があるんじゃないかと、緊張が走る。が、




《あぁ、通信がちゃんと出来るか確かめたかっただけなんだけど、



本当は世羅の声が聞きたかっただけなのかもしれない》




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