「あっ!世羅!」
「アレン!もう大丈夫なのか?」
アレンの病室に入ると、アレンが元気に迎えてくれた。
ラビは入るなり壁にもたれかかって、ふてくされている。
どうしたらいいのかわからないので、ラビのことは置いといて、アレンと会話をすることにした。
「はい!…それにしても遅かったですね」
「ラビから、アレンがコムイさんとミランダさんの話してたって聞いたから、俺ら邪魔になるし、ゆっくり行こっかってことになったの」
「へぇ〜…そうだったんですか。別に気を遣ってもらわなくても良かったのに」
爽やかに笑うアレンは、笑いながらラビをちらりと見た。
「世羅も大丈夫ですか?ずっと自宅療養だったって聞きましたけれど…」
「あぁ、大丈夫大丈夫!ばっちし回復!」
『さっき力使ったせいで全快にはほど遠いけどな』
(そこは気にしないの!)
「そうですか。良かった。僕ずっと世羅のこと心配してたんですよ?」
アレンのその言葉に感動する。
自分が怪我しているのに、何て優しい奴なんだ!
やっぱ友情っていいなぁ〜
「ありがと〜!俺もアレンのことずっと心配してたよ!!」
「あはは。ありがとうございます」
アレンは、少しはにかみながら笑った。
アレンのこの笑みって癒されるよな〜、なんて和んだ気持ちになる。
俺はその時、アレンがラビに勝利の黒微笑みを向けていたことに気付かなかった。
後ろでラビが動く気配がしたので、振り返ると―――
「いいさいいさっ!どうせオレなんか世羅にとって無視してもいいようなどうでもいい存在なんさ!オレのこと嫌いなんさ!!」
うずくまって膝を抱えていた。そして……
……ウサ耳がっ!!
「らっラビ…」
いやだから駄目なんだって!俺、動物大好きなんだって!!
だから…だから……
「ラビごめんね!俺が悪かった。次からは無視しないように気を付けるから!!それに俺ラビのこと嫌ってないし!!」
だから駆け寄って抱き締めちゃいました☆
ウサギ……じゃなかったラビは(この時点で世羅にはラビがウサギにしか見えていない)耳を垂らしながら首を傾げる。
「ほんと?」
「ほんとほんと」
「世羅〜!!!好きさ〜!!!」
ラビが抱き締め返してきた。相変わらずスキンシップ激しいね。
その時、ラビがアレンにお返しと言わんばかりの勝利の黒微笑みを向けていたことにまた気付けなかった。
なぜか部屋に冷たい空気が流れる。
そんな中アレンが爽やかな笑顔で話し掛けてきた。
「世羅。リナリーの様子はどうでしたか?」
「えっうっうん。大丈夫だよ?ブックマンが治療してくれたから」
空気のせいかどもってしまった。それに加えて、冷や汗が流れてくる始末である。
何故…!?
「アレン。主の目を診たいのだが…」
ナイスブックマン!!!
こんな空気の中、普通に喋りだしたブックマンを本気で尊敬した。
冷たい空気が掻き消える。
知らない内に緊張していたのか、思わず溜息が出た。
「そうだ!世羅診てくれませんか?」
いい事を思いついたと手をぽんと叩きながら笑顔で言ってくるアレンに、一瞬顔が凍り付いてしまった。
慌てて困ったような笑顔を浮かべる。
「ごめん、ね?さっきリナリーに力使っちゃったから…これ以上やるとドクターストップかかっちゃいそうでさ」
「そうですか…」
「また、回復したら治療するから、ごめん」
「え、いや、そんなに気にしないでくださいよっ!療養明けですもんね」
アレンは落胆の色を顔に滲ませたが、気を取り直してブックマンの治療を受けることにしたらしい。
何だか居たたまれなくなって、俺は外に出ることにした。
「あっ俺、外に出てるね!雪ってあんまし見たことなかったから見たいんだ!じゃあ」
「じゃあ、オレも一緒に「ラビは少し残ってくれますか?話し付けたいことがあるんですけど」」
ラビがついてこようと立ち上がったとき、アレンがラビを引き止めた。
同時にまた冷たい空気が流れる。が、今は逆にありがたかった。
しばらく一人でいたい。
「あはは。じゃあ俺ちょっと行ってくるね〜」
そう笑いながら部屋を出ていった。
ちゃんと笑えてたかな…?
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