手を出さないという選択    [ 67/159 ]

「そういえば、世羅はアレンみたいにアクマかどうか、わかったりする?」

「ん〜?わかんないと思う…?」

「何故に疑問系?」

「いや…今思えば、俺まだ人を被ったアクマ見てない気がスル?」



だってこっちに来た時に会ったのはアクマの姿だったし、マテールでもアクマの姿のしか会ってない。
アレンの姿やトマの姿をしていた時、いなかったし…。
んで、さっきの任務で倒したやつも最初からアクマの姿だったな…。



(黒燿。俺ってアレンみたいに見えたりするの?)

『………知らねぇ』




・・・




いつまで不機嫌なの!?


黒燿に話し掛けてみれば、不機嫌な声でぼそりと呟くように返された。



(えっと…ということは、見えないってことだよな?)

『……俺の能力にはねぇ。…見えるとしたらお前の力だろ』


あくまで不機嫌を貫く黒燿。



そりゃあ、ずっとラビはくっついて歩いてるけど…。



だから何でそれで不機嫌になるかがわかんないって!!



「…じゃあこれから大変だぜ?」

「ラビはどうやって……いや、やっぱいいや」

「何なんさ」


途中で言うのを止めたので、ラビに呆れたられた。



俺は『ラビはどうやって見分けてるの?』って言おうとした。けど止めた。
会話の流れ的にはここで聞くのは何も不思議じゃないし、逆に聞かないとおかしいとも思うんだけれども…聞かなかった。



だって漫画で、アレンがラビにそのことを聞いたとき、ラビ辛そうだったもん。
自分が疑われないようにするためにわざわざ、ラビにあんな悲しそうな顔させるのは嫌だ!


「世羅〜、途中で止められると気になるさ!!」

「あっ、えっ、ええっと…そう!何を言おうと思ったか思い出した!そうそう、ラビはどうやってあの時飛んだの?」

「…あの時?」

「最初に会った時」

「あぁ。あれは―――」




ふう…なんとか誤魔化せた…。

確かその話ってこの後だったよな?
アクマが大量にいる街を左目が使えない状態のアレンが…――



そこではたと歩みを止める。ラビが不思議そうに俺を見ていたが、気付かなかった。
俺は黒燿に話し掛ける。




(ねえ黒燿…)

『……なんだ』

(アレンの目を治さずにおこうと思った俺は、やっぱ最低…?)

『・・・』


黒燿は何も答えない。
ただ、ここで最低だと言われても俺は治さないかもしれない。


黒燿が口を開いた。



『……甘やかすだけなら誰にでも出来る。手を差し伸べるだけが全てではない。だから、お前はお前のやりたいようにすればいい』


黒燿の言葉は、胸に染み渡っていく。心が軽くなった。


(ありがとう………ほ〜んと、黒燿って男前だね)


しんみりとした感じを打ち消すように最後は冗談めかしで言ってみたら、






『当たり前だ。俺より男前なやつなんているわけがないだろ?』




超自信満々に返されちゃいました。なんというか…さすが黒燿。



くすくす笑って、歩きだそうとした時、耳元で大きな声がした。


「世羅!!これ以上無視したらさすがのオレも怒るさ!!」



意識を現実に戻すと、目の前にラビの顔があった。
そういえば、途中から背中が軽くなっていたような気がする。



「あっごめん、ラビ。忘れてた」


正直にそう答えると、ラビの額に青筋が浮かんだ。
ラビにほっぺたをつままれる。痛くて涙目になった。



「いひゃいっいひゃい」

「さっきオレ何喋ってたか覚えてる?」


どうやらかなりご立腹の様子。言葉につまる。


「ええっと…」

「どうせ黒燿と楽しくお喋りしてたんだろ?」

「ごっごへんなはい…」

「・・・」



とりあえず素直に謝ると、手を離してもらえた。
そのままラビはぷいっと顔を反らした。
無言の圧力がかかる。
この空気をどうにかしないと…と思って、逃げることにした。



「あっほらラビ、アレンの病室に着いたよ!!さすがにもう話も終わってると思うし、中入ろ?」

「・・・」


すごすごとアレンの病室に入っていくラビ。



怖いよ〜……


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